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仕事に疲れた男には中華粥とラタトゥイユ


夫が、私との結婚を強く意識した決め手は、お弁当だったらしい。

その話を聞いたとき、ちょろいなぁと思った。手料理にやられるなんてよくある話過ぎて、つまらなかった。

10年も前の話。
当時夫は、休職中でお金がなかった。そんな病人と高いレストランでデートができるわけもないし、会いに行ったところで部屋には食べる物もないし、でもコンビニ食も嫌だし、と思って私は、仕方なく弁当を作っていた。

玉子焼き、焼き鮭、ほうれん草の煮びたし、ごはん。白ごま。

品数もそんなに多くない、同じ内容の弁当を毎回持って行っていた。ちょっとの不安と愛情を抱えながら。

★★

先日、友人のひろこ氏が我が家に泊まりに来た。ひろ子氏もプライベートと仕事で悩んでいた頃で、お互い弱音を吐きあった。
翌朝。胃炎で固形物が食べれない私は、中華粥を作って、ひろ子氏にもそれを提供した。

「これはやばい。沁みる。やばい。好きになる。」とひろ子氏はぶつぶつ言っていた。

嬉しくてつい
「炊いただけで、料理なんて言えるものではない。」と謙遜したら、
「そうそれ。私も男にさっとおかゆ作って、そのセリフを言います。」と言われて、なんか自分が格好つけたみたいで恥ずかしくなった。

★★★

古い男友達とカフェに入った日のこと。彼は経営している会社がピンチで疲れていた。どうやらもうコーヒーも受け付けないらしく、ホットミルクを注文していた。珍しくシャツの襟がよれよれで、疲れているのは十分伝わってきた。
「そういや、この前彼女がラタトゥイユというものを作ってタッパーに入れて届けてくれた。彼女が帰った後に温めて食べたら、涙が出てきた。結婚したい。」

おお。それ私じゃなくて彼女に言えや。

いやぁ。つくづく皆ちょろいというか、現代人、みな胃疲れすぎでは、と思う。
大抵の人間関係は、五臓六腑に染み渡るやさしい手作り料理で解決するんじゃないか。

中華粥、おすすめ。単純においしいし。
冷たいコーラ、冷たいアイスコーヒー、冷たいそうめん、スイカバー、ガリガリ君ソーダ。本当はキンキンに冷えたものを何も気にせず流し込みたいのだけれど。夏こそ温かいものを食べなければ、とものすごく気を付けている。

朝粥のおかげか今のところ夏バテはしていない。お粥すごい。鶏肉を入れればタンパク質も摂取できるので、オールオーケイ。大好き。

昆布、干しエビ、貝柱の水煮、干ししいたけ、塩、を入れて炊飯器でおかゆを炊く。炊けたら、鍋で鶏肉とさらに米が崩れるまでコトコト煮る。それだけ。簡単!
そういえばラタトゥイユも胃にやさしくて良い。ナイスチョイス。いい彼女見つけたね。

疲れた胃と心に染み渡る温かい手料理、大事な人に作って差し上げてみては。


おわり

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