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【アフリカンアートミュージアム】国内唯一、アフリカ美術専門の美術館

はじめに

 北杜市長坂町は清春芸術村をはじめ美術系の展示施設が点在する地域です。
 中でも2010年(平成22年)開館のアフリカンアートミュージアムは、国内唯一のアフリカ、オセアニア民族の造形美術に特化した美術館で、有名な施設です。
 この辺りの美術館は冬季は休館になるところが多く、こちらも12月より休館となるため注意が必要です。

ミュージアムへの道

 県道606号台ヶ原長坂線の途中に進入路を示す看板があります。イメージカラーの黄色のおかげで見落としはありませんが、看板がないと通り過ぎしまうような細い進入路です。

看板に従って入ります

 進入路が分かったところで、今度は急な細い坂が現れ道なりに進んで行きます。周囲には民家が数軒あります。登り切ったところが広く平地になっていて駐車場とミュージアムの建物があります。

すごく立派な建物です

 きれいな庭を見ながら建物のエントランスに向かうと早速巨大な鳥と思われる木製の像が迎えてくれます。

巨大な鳥のほかにもアフリカの造形物があります

 また、ドアノブにも驚きました。アフリカンアートの世界が始まっています。

デフォルメされた男性像と女性像

アフリカンアートミュージアム

 アフリカンアートミュージアムはアフリカのほかにオセアニア、アジア、インドネシア、フィリピン、台湾やヒマラヤなどの少数民族の美術(プリミティブアート)に特化した国内唯一の美術館です。内容は仮面や立像、テキスタイル(布)、道具などで1800点を収蔵しています。

リーフレット
リーフレット

 ミュージアムの中はフローリングのため、スリッパに履き替えて中に入ります。目の前には色鮮やかなグッズを取りそろえたミュージアムショップを兼ねた受付カウンターがあります。
 ミュージアムショップには面白そうなものがたくさんあったのですが、撮影はできませんでした。
 展示室の撮影については2カット(2シャッター)まで可能という独特のルールがあります。他のお客さんが映りこまないように配慮も促されます。

 展示は「THE SENSE OF THE PEOPLE 民族の美学」(2022.9.8~11.28)の後期展示(2022.10.20~)をしていました。1階展示室に入るとすぐにパンフに登場する首から上の面があります。

インパクトの強い首からの造形
仮面など驚くような造形がいっぱい

 展示室は1階と2階です。1階は2階の高さまで吹き抜けていて、手前側がアフリカの民族の展示で、その奥がオセアニアの民族の展示になっています。

個性的な造形はずっとみていたい

 2階の展示室はケースに入れられた貴重品があります。ほかにアイヌの衣服もありました。
 また、階段部分にも壁に埋め込まれたライトアップされた展示ケースがあります。

2階展示室から外の林が見えます

 展示品の解説はQRコードに手持ちのスマホをかざして解説文を読むか、クリアブックで本のようになった解説文を貸してもらうかかどちらかです。クリアブック片手に回るお客さんのほうが多数派でした。


アフリカンアートの魅力

 訪ねたのが土曜日で、館長によるギャラリートークがあり、直接解説を聞くことができました。
 教えていただいた内容と筆者の感じたところをかいつまんで書きます。筆者の勉強不足なところはご容赦ください。

 アフリカンアートとは1945年以降のアフリカ民族の造形美術をいうようです。ピカソのキュビズムも、アフリカンアートとの出会いにルーツがあるといいます。
 アフリカンアートには、直線であったり左右対称であったりとそういうものはありません。現代の我々の社会のデザインや工業製品を否定しているかのようです。それは、自然界にはまっすぐなものはないように、アフリカンアートも自然の形を重んじているからです。そのため平気で歪んでいたりします。家に付けた扉に隙間や穴があっても気にしないのです。椅子なども、同じ形はひとつもなくどことなく歪んでいます。また椅子は使う個人にあわせたいわば専用の椅子になっているそうです。
 ここで、筆者が思ったのは石器でした。使う人に合わせて加工して作りだされます。それはいわばその人専用で他の人は使いにくいのです。

 アフリカンアートの造形は、極端なデフォルメがされています。これも現代の美術とは異なります。例えば、胴が異様に長く、腕が小さい像がありました。人の姿ひとつとっても、アフリカの民族は必要なところを強調して大きく作り、不要と思うところははぶいてしましまうのです。表に見えるリアルさよりも内面性を大事にしているのです。
 筆者がすぐに思ったのは、縄文の土偶でした。極端な誇張と省略は土偶に通じるように思います。

 また、アニミズム信仰も特徴です。1つのものに1つの神が宿るという思想です。そのため神の像は1つの木から彫り出すというのです。2つの材料を付けて作ることは2つの神が混在してしまうというのです。

 さらに驚いたのは、祭のために作った品々が祭が終われば用をなさないのだそうです。そうした品々をアフリカの民族たちは、西洋人が持ってきたビールと引き換えに渡してしまうのだそうです。祭りの道具を何百年と大事に保管して代々使っている日本の祭りでは考えられないことです。
 もっとも土偶も、祭で壊され埋められると井戸尻の縄文文化で考えられています。また、実際に各地で土偶はバラバラになり出土していますので、ここにも何か通じるものがありそうです。

おわりに

 アフリカンアートと言いますが、民族の祭りや生活から生み出されたものです。アートというよりも生活の道具ではないかと思いました。土器や土偶も美術品ではなく生活の道具だと考える筆者の私見です。
 ところで、ファンの方が多いようで全体的にじっくり見られていて滞在時間は長めです。撮影は2カットまでのためお互いに譲りあって、スマホに納める姿もありました。館長のギャラリートークなどもあり、見学者同士の会話もあって和やかな雰囲気で楽しめました。


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