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1年記念日

9月16日でエルが夫の盲導犬として我が家に来て1年が過ぎた。当日ケーキでお祝いをした。日々エルから、たくさんの癒しと微笑ましい気持ちをもらっている。心がささくれ立っているとき、フワフワの頭、大きな背中、長くて立派な尻尾を撫でながらエルに話しかけている。背中に顔をくっつけると、毎日夫がブラッシングで使っているミスとの臭いにエルのにおいが混ざっていて、優しい気持ちになる。

「アロマのにおいやなぁ」

と言いつつ、エルを撫でていると気持ちが落ち着いていく。

先日こんなことがあった。出かける私を駅まで夫とエルが送ってくれたときのことだ。エルに支持を出している夫と話しながら歩いていると、小さい女の子とお母さんの会話が聞こえてきた。

「わんちゃんおっきいねぇ」

女の子が言うと

「わんちゃん賢いね。お仕事してるんだよ」

とお母さんが答えてくれた。

「すごいね!」

と言いながら近くを通り過ぎた親子のいる方向に頭を下げた。白杖で歩いているときは感じることのできない温かい気持ちになる。駅に到着したところで、夫にお礼を言って

「エル、ありがとうね。ママ助かったわ」

頭を撫でると、大喜びで尻尾を振るかと思いきや

「いやいやそんな。大した事ないっすよ。仕事ですから」

とすましていたのが面白い。

家にいてリラックスしているときのエルは、夫に

「遊んでよ」

とすり寄って、ボールやおもちゃで遊んでもらっている。たまに窓の外をぼんやり見ながら緩く尻尾を振っていることがあって、何を考えているのかなぁと微笑ましくなる。初めて一緒に過ごした夏は、娘とベランダから花火を見ていたエル。いい写真がたくさん撮れて、夏の思い出ができた。

あっという間に1年が過ぎ、考えるのはエルが我が家にいられる残りの時間だ。エルが引退した後も

「こんなことがあったね」
「懐かしいね」

と振り返ることができるように、これからも盲導犬ユーザーの家族の視点で綴っていきたい。

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