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私のドラマの楽しみ方

数年ぶりに毎週ドラマを見ている。テレビ朝日系で木曜21時から放送されている「緊急取調室」だ。私は音だけでドラマを楽しんでいるので、何かしながら見るというのが難しい。台詞だけでなく、ストーリーを理解するための効果音を聞き逃したくないので、集中して見ているからだ。見ているのは一人だが、見終わった後に二人からドラマの解説をしてもらっている。私の「ドラマの楽しみ方」について書いてみたいと思う。

天海祐希さんがきっかけで出会った友人

一人目は、10年ほど前にネットで知り合った友人だ。一人でドラマを見ていた私は、音だけではストーリーに付いていけず、mixiのドラマコミュニティーに書き込みをした。全盲であること、音だけでドラマを見ていることを添えて、箇条書きで解説してほしいシーンを書いた。最終回だったこともあり、次々と書き込みが更新されていく中、一人の女性が個人的にメッセージをくれた。ドラマの説明をしてくれた後に添えられていた文章には

「私の息子は生まれつきの全盲です。目が見えない人がこんな風にテレビを楽しんでいることを知って涙が出ました。息子もテレビを楽しいと思えるかもしれません」

と書いてくれていた。そこから彼女とのやり取りが始まった。

私が「視覚障害のお子さんを持つお母さんたち」に情報発信しているのは、彼女と出会ったことがきっかけになったからだ。来月彼女のお子さんが通う盲学校の保護者向けにオンライン講演会をさせてもらうことになった。ドラマの解説から始まったご縁がこうして続いていることが嬉しい。

関西出身、子供同士は同じ年、何より天海祐希さんのファンということであっという間に仲良くなった。私が見終わって、疑問に思ったところを箇条書きにしてLINEで送ると、ファンならではのコメントが入った解説が送られてくる。ドラマの話から、天海さん談義がどんどん派生していく楽しい時間になる。こうして一緒に楽しめていることが嬉しく

「いつか一緒に天海さんに会いに行こうね!」

と話している。

映画音声ガイド制作者の松田さん

二人目は去年の6月に一緒にYouTubeライブ配信をした、映画音声ガイド制作者の松田 高加子さん。


Twitterで私が「緊急取調室」のことを書いていたところからやり取りが始まり、松田さんにも毎週解説を送ってもらっている。松田さんは音声ガイドの制作を仕事にしているプロである。私が独り占めにするなんて贅沢すぎやしませんか?松田さんの解説を読むと、バラバラになっているパズルがどんどん組み合わさっていくような感覚になる。

私が箇条書きで送っているのは、ドラマを見てそのとき疑問に思ったことだ。松田さんはその質問に答えるだけでなく、最初から時系列に流れを追って説明してくれている。

解説してほしいなと思うシーン

こんな場面に解説があればいいなと思うところを二つ上げてみる。まず一つは台詞がなく映像だけが差し込まれるシーン。ここが解説で分かるかによって、話の理解度はグッと上がる。

二つ目は指示語だけでのやり取り。これは日常の会話でもあることだが、ドラマの中ではなんのことかわからない。先週のドラマでも

「これも付けるから」

と言って何かを手渡すシーンがあった。
「これってなに?」と思っても、話がどんどん進むので分からないままになってしまう。ちょっとしたやり取りが分かることで、キャラクターの性格や好きなものが分かる、ということを解説してもらって知った。

解説の一部をご紹介

「タイトルバックも説明しておくね」
と言ってこんな説明を書いてくれた。

取調室の無機質なグレーの扉が開く。なかはCGで描かれた取調室。
3~4段の階段をおりたら、無機質な机があって、向かい合った1組の椅子。壁にカメラが設置されている。「シュンシュンシュン」て音がすると思うけど、影が差す音、ていうのかな、整然とした部屋なんだけど、光の加減で色んな影を作り出しててカメラが部屋の中縦横無尽に映しているような感じ。天井の鉄格子から見下ろす映像があったり。
最後には、あらゆる影が去って、真っ白な部屋に銀色の取り調べ用の机と椅子。

机にもカメラが1台、設置されてる。そこに漢字で横書きのタイトル。
緊急取調室。明朝体だね。緊急は赤い文字、取調室は黒です。


私が一人で見ていると、タイトルバックは音楽と効果音が鳴っているだけだ。でも、こうして説明してもらうことで、ドラマの世界がタイトルバックにも含まれていることが分かるし、作品らしいかっこよさも伝わってくる。

お二人に説明してもらっての感想

友人と感想を交えながらワイワイやり取りするのも、松田さんにまとまった言葉で時系列に説明してもらうのもどちらも楽しい。これまで耳でドラマを楽しんできて、分からない部分は頭で補ってきた。
こうしていろんな人と見ると頭で補え切れていなかったなと思う部分がパチッとはまっていく。

映画には「UDCast」というアプリが作られたことで、多くの作品に音声ガイドが付くようになった。映画館で見える人と同じように映画を楽しめるようになった。
ドラマももっと音声ガイドが広がればいいのにと思う。最終回までお二人と一緒に作品の世界を楽しみたい。

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