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椅子取りゲームの世界だ

この世は全て椅子取りゲーム。誰かを引きずり降ろして椅子を奪おうとしている。椅子の数は限られており、椅子を作ろうとする人はまずいない。作れないともいう。椅子に座れない人は、怒りまたは諦めの歯車だ。

座る気満々だった電車で座れなかった。これほど辛いことはない。やろうと思っていたことはたいてい封印され、疲労が重なる。パソコンを開いて資料をサササと確認したかった。

移動時間を有用活用せよ、とビジネス本や実用書にハッパをかけられている現代ビジネスパーソンの一員にも関わらず、移動時間は虚無の時間になりがちである。ほんとは本を読みたい。だけどスマホを開いて、必要のないSNSチェックなどをしてしまう。

周りを見渡しても、みんな大したことをしていない。このゲーム誰がやるねんみたいなゲームをやっている。マンガを無料で一話読むために見る広告のクソゲーみたいなやつをやっている。

戦車で攻めていくやつとか、海外おばあちゃんと土管に入っていくやつとか、王様を救うみたいなやつをやっている。

心から楽しんでいるのか、それとも脳が麻痺しているのか。おそらく後者である。

アンデシュ・ハンセンのスマホ脳を読んで、うなずきまくったにも関わらず、結局この体たらくだ。2021年に一番売れた本らしい。なのに、私たちは引き続きスマホ中毒だ。どうせ変われないと知ったらこちらのもん。ゆえに続編たちは読んでいない。どうせ同じループを繰り返し、私の移動中の生産性は上がらないのだ。

あの謎ゲーは、一体誰が楽しんでいるのだろうか。
誰を楽しませようとして開発されたのだろうか。

私も謎ゲーの企画開発をやってみたい。どういうテーマにしようかな。化粧品を塗って完璧な顔をより速く仕上げるゲームにしようかな。それは福笑いでしょうか。日本古来の福笑い。もうすでに完成形がそこにあった。福笑いゲーム。よりイケている顔を目をつぶりながら作るゲーム。目をつぶることで、スマホを見る時間を少しでも減らせるスマホゲーム。デジタルデトックスをしながらスマホゲーム。これだ。おくまんちょうじゃだ。

スマホ脳。脳が溶けていく気がして、読み進めるたびにドキドキする。あまりにもつらい。瞬間にスマホを叩き割りたくなるのだが、3日後にはまたスマホを見ている。そんな本だ。どうせ作者だって、売れ行き報告をスマホで見て喜んでるはずだ。そうだって絶対。そうだろ。3日間のデジタルデトックスのために読むのがおすすめ。食い入るように読んで、感銘を受けたのになぁ。


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