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【分析】仙台89ERS

※  本記事は誌面のスペースの関係上、敬称略といたします。
 あらかじめ御容赦ください。

どんなクラブチームか?

2005年創設。
ホームアリーナ:ゼビオアリーナ仙台
2017-18シーズンでB1からB2に降格しましたが、
2022-23シーズンからB1に復帰し、
12月6日現在、7勝9敗の東地区4位の成績です。

この89という数字は、
仙台市に関する西暦年に由来します。
1889年(明治22年) 仙台区が市制施行
1989年(平成元年) 仙台市が政令指定都市に以降


ヘッドコーチは誰か?

2021-22シーズンより
前季まで琉球を指揮していた藤田弘輝が就任しました。

藤田HCは1986年生まれの37歳で、
2008年のbjリーグ時代に
浜松・東三河フェニックス(現・三遠ネオフェニックス)に入団しました。
3年間の選手人生を経て、2011年に引退し、
コーチとしてのセカンドキャリアを歩んでいます。

これまでに、
群馬クレインサンダーズ、
福島ファイアーボンズ、
三遠ネオフェニックスで指導者を経験した後に、
琉球ゴールデンキングス、仙台89ERSのヘッドコーチになりました。

参考)


どんな特徴のチームか?

2023年12月6日現在、
7勝9敗の東地区4位の成績です。

平均得点 81.4点 (8位)
平均失点 80.5点 (15位)
フィールドゴール成功率 44.4% (11位)
3ポイント成功率 31.8% (15位)
平均リバウンド数 40.6本 (5位)★
平均アシスト数 20.8本 (2位)★
平均ブロック数 3.19本 (5位)★
平均スティール数 8本 (3位)★

ここから読み取れるチームの特徴は以下の通りです。
・ボール争いにおける球際に強い(リバウンド、スティール)
・その結果として、攻撃回数が多くなる
・アシストによる得点の割合が多い(パス回しが効果的)
・インサイド陣のディフェンスが強力(リバウンド・ブロック)

ガード陣も
# 0 小林 # 13 阿部 # 14 青木 # 91 片岡らが
気を吐いてハッスルプレイを継続できるので、
その結果が、スティールの数にも繋がっているのでしょう。


キープレイヤーは誰か?

まず、プレイタイムを比較します。
(ラショーン・トーマスは怪我で離脱中)

1) # 45 ネイサン・ブース 29:42
2) # 52 ヴォーディミル・ゲルン 28:48
3) # 13 阿部 諒 27:26
4) # 25 ラショーン・トーマス 24:09 (※離脱中)
5) # 14 青木 保憲 22:10
6) # 15 渡辺 翔太 19:39
7) # 9   ヤン・ジェミン 17:47
8) # 91 片岡 大晴 14:48
9) # 0   小林 遥太 14:09

外国籍は、ほぼフル出場であり、
常にオンザコート2の状態に
ヤンジェミン(201cm)が15分以上出場します。

つまり、2mオーバーの選手が2-3名、
常にコート上にいるということなのです。

この中から、プレイタイムの多い3名を
注目選手として取り上げようと思います。
# 45 ネイサン・ブース
# 52 ヴォーディミル・ゲルン
# 13 阿部 諒

前述のように、
仙台89ERSはインサイド陣のディフェンスが強力です。

# 45 ネイサン・ブース
平均得点 16.6 
3ポイント成功率 39.7%(31/78)★
平均リバウンド数 7.8
平均ブロック数 0.8 
平均貢献度 21.1★

ノーチャージエリア付近の2ポイント成功率が
72.7%(24/33)であり
ゴール下まで持ち込まれると
ほぼ確実に得点を決めてきます。

フリースロー成功率も82.9%であり、
インサイド・アウトサイドどちらにおいても
攻守ともにチームに貢献しています。

# 52 ヴォーディミル・ゲルン
平均得点 13.2 フィールドゴール成功率 61.5%
平均リバウンド数 11.9(1位)★
平均ブロック数 1.4★ 
平均貢献度 24.1★

3ポイントシュートは試投数が4、成功数が1であり
ペイントエリア外の2ポイントシュートも
4本(ペイント内は88/140)とインサイド特化型の選手です。

フリースロー確率は46.7%(90/144)なので、
ネイサン・ブースに比べると
ミドル〜ロングレンジは苦手なのかもしれません。
リバウンド数はB1トップの成績を誇っています。

ビッグマン外国籍2名だけを見ても、
合計の平均リバウンド数が約20本になり、
B1 5位のリバウンド数も納得がいきます。

外国籍選手が占める得点の割合は5割前後であり、
他方、日本人選手・アジア枠選手の平均得点は
以下のようになっています。

# 13 阿部 13.0
# 91 片岡 6.1
# 9   ヤン 6.1
# 15 渡辺 6.0
# 14 青木 5.6

プレイタイムにも比例している結果となっていますが、
この5名だけで40点近く取っているのです。
阿部以外は満遍なくポイントが散らせているので
ディフェンスする側としては的を絞りにくいチームです。

したがって、
特に目立った活躍をコンスタントにしているのは
外国籍2名と# 13 阿部 諒がキーになりますが、
チーム全体で得点を取るという特徴があります。

# 13 阿部 諒
28歳 184cm/82kg
ポジション:ガード
平均得点数 13.0点★
フィールドゴール成功率 43.3%
3ポイント成功率 34.4%(21/61) 1試合平均 3.8試投
平均リバウンド数 3.4本
平均アシスト数 4.0本★
平均スティール数 2.1本
平均貢献度 14.1★

長らく島根で活躍した選手です。
(2018-19から2022-23シーズンまで)
CS出場の経験も2度あります。

今季仙台に移籍してからプレイタイムを大きく伸ばし、
シュート、アシスト、スティールと攻守にわたり
仙台89ERSの勝利に大きく貢献しています。

平均得点13、平均アシスト4ということは、
全得点のうち20点以上、
#13 阿部が何らかの形で得点に絡んでいることを示し
彼が攻撃の起点となっていることを意味します。
ペイントアタック、ミドルレンジ、3ポイント、
どのレンジも高確率で決められるシュート力があり、
ディフェンスを引き付けてからのアシストも上手です。
平均プレイタイム27分は
コーチ陣・チームからの期待の表れなのでしょう。

この阿部をどのように抑えるかが
レバンガ北海道の勝敗の鍵を握りそうです。


試合展望は?

◯リバウンドとエース対策
レバンガ北海道の1試合平均リバウンド数は
12月6日現在で1試合あたり35.9本です。(19位)
仙台89ERSは40.6本(5位)であり、
リバウンドの主導権が勝敗の鍵の一つです。

今季はこれまで相手日本人エースに対して、
# 81 関野、# 66 松下を好んで起用する傾向がありますが、
サイズダウンが不可避となり、リバウンドで不利になります。
参考) # 81 関野(183cm) # 66 松下(180cm)

また、平均得点という観点からも、
# 81関野 2.4点 # 66 松下 1.7点というように
スタッツ(統計)上は、コートメンバーの得点力が下がることが
データから示されています。
(もちろん数字として現れない貢献が二人の強みでもありますが)

一方、身長面では # 11 桜井(194cm)が理想的ではありますが、
平均プレイタイム 3:41 平均得点数 0.4点に留まっています。
#13 阿部に対して、どのようにディフェンスをして
仕事をしにくくさせるかが見どころの一つです。

止める価値のある選手ですので、
前述の不利点を代償として払ったとしても
# 81 関野・# 66 松下のハッスルで守り切ってほしいです。

また、ポイントガード2名起用での時間帯が少なくは無く、
これもリバウンド数を下げるリスクになっています。

これまでのレバンガ北海道プレイヤー個人の
平均リバウンド数は、
1) # 40 トーマス・ウェルシュ 11.1
2) # 21 ダラル・ウィルス Jr. 5.7
3) # 24 デモン・ブルックス 4.4
4) # 2   ドワイト・ラモス 3.8

日本人選手は島谷がトップで2.0、松下 1.5、寺園 1.5と続き、
他の選手も1試合あたり1,2本が精々といったところです。
リバウンドはハッスルプレイを測る指標と言われることもあり、
今後の数値改善を期待したいところです。

◯ 注目は # 45 ネイサン・ブース
仙台89ERS戦を観戦する上で、見どころを一つ挙げるとしたら、
# 45 ネイサン・ブースのオフェンス時の
「立ち位置」を選びたいです。

ファストブレイクではビッグマンとして中央を駆け上がる走力もあり、
ハーフコートオフェンスでは多彩な役割が期待されています。
今回のスカウティングでは、
後者のセットオフェンスにのみ注目します。

(1) ハイピックのパターン
3ポイントラインの外側でボールハンドラーに対し
# 45 ネイサン・ブースがスクリーンをかけた場合、
ネイサン・ブース本人は3ポイント確率が高く、試投数も多いので
ピックアンドポップで3ポイントを狙うことができます。…①

このとき、ディフェンスのビッグマンが外側に引き付けられるので
ペイントエリアにスペースが生じるので、
ガードのカットインやもう一人のビッグマンへのハイ-ロー連携で
ペイントでの得点をアシストすることが出来ます。…②

ポップせずに、自らリングに向かってダイブする場合には
得意のペイントエリアでの得点を狙ってくるのも脅威です。…③

(2) ポストプレイのパターン
ビッグマンの古典的な役割であるペイントエリア付近でのポストアップも
仙台89ersの攻め筋の一つです。

もし、ペイントエリアの深い部分にまでボールを押し込めれば
ゴール下でのイージー2ポイント、
ファウルを貰ってのバスケットカウント、
もしくは、フリースローでの得点が期待できます。…④

また、ネイサン・ブースを止められないからといって
ダブルチームを乱用して守ってしまうと、
ディフェンスがペイントエリア方向に収縮してしまい
3ポイントシューターへのパス供給で
効率の良い3ポイントを容易なものにします。…⑤

このように、ネイサンブースが
3ポイントの外に立つか(1)、ペイントエリア付近でシールするか(2)で
得点のパターンがある程度限られて見えるので、
インサイド-アウトサイドの連携を見て学ぶには
非常に良い手本になりそうです。

◯ ソルジャーの異名を持つ男の献身
以前、2013-15シーズンでレバンガ北海道に在籍していた、
# 91 片岡 大晴(まさはる)にも注目が集まります。

2022-23シーズンは、対レバンガ北海道で
4戦全敗を喫した仙台89ERSでしたが、
# 91 片岡は敗北が濃厚になった場面でも
ディフェンスの強度を落とさず、3ポイントを沈める
といった、ハッスルで健闘した姿が印象的です。

その姿勢と気迫に心を動かされたレバンガブースターも
きっと多いのではないでしょうか。

かつての戦友、桜井良太への思いを綴ったポストも
本人の素敵な人柄を端的に表していると思います。

37歳というベテランの域に達していますが、
体を張ってチームを引っ張る姿は
スポーツ選手の鑑と言っても過言では無いでしょう。

2022-23シーズンの3ポイント確率は、驚異の47.6%であり、
今季は今のところ26.0%に留まっていますが、
コーナースリーは50%の確率で高確率に決めています。
(右コーナー 42.8% 3/7 左コーナー 60% 3/5)

仙台89ERSは、#91 片岡を筆頭に
ハッスルプレイでチームに牽引する選手が多いので
それに負けないよう
「レバンガのガンバリ」をサポートしたいですね。

喉から手が出るほど欲しい久々の勝利のために
ブースター一丸となり、全緑応援しましょう。
ガンバレ・レバンガ!

文) アズマ・リュウセイ
写真) 民谷 健太郎

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