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メカニズムデザインで勝つ#1

知り合いのスタートアップで実際に利用していたオークション方式が面白いなぁと思っていたら、経済学の先生とのコラボであったということが分かりちょっと勉強してみようと思い読んだ本がこちらとなります。

では、さっそく振り返りつつ、学びをアウトプットしていきたいと思います。

はじめに

今回の本は、オークション・ラボというワークショップの書籍化したものです。オークション・ラボの参加者は、僧侶やITエンジニア、官僚など多様です。多様な人が多様な観点から積極的に発言をして議論を繰り広げながら、お互いに理解深めていく様子が伝わってくる一冊になっています。難しい話をするというわけではなく、初学者でも分かるようにまとまっています。Twitterでメカニズムデザインについて良い本ないか?と尋ねたところ、オークション・ラボの今井さんに勧めていただいた本がこれでした。また、↓↓↓の本もお勧めいただいたので、積読しておきました^^。

メカニズムデザインとは

メカニズムデザインとは経済学の一分野で、人々のインセンティブを入念に考慮に入れたうえで、経済や政治に関する集団的決定の仕組みを作ろうとする学問です。Wikiでは以下のように書かれています。

資源配分や公共的意思決定などの領域で実現したい目標が関数の形で与えられたとき、その目標が自律的/分権的に実現できるようなルール(「メカニズム」とか「ゲームフォーム」とも呼ばれる)を設計することを目指している。言い換えれば、与えられた関数が要求する目標を、各プレイヤーの誘因を損なうことなく実現できるようなゲームを設計することをメカニズムデザインでは目指している。メカニズムデザインは経済学の中でも特に社会選択理論および非協力ゲーム理論、さらには契約理論マーケットデザインと密接な関係を持つ。
(引用:Wikipedia)

本書では、オークンション理論の実用例を交えて解説するところから始めて、独自コインの売り方、学生寮の部屋交換を例としたマッチング方法、さらには、ALISと共同で新しい投票の仕組みを試したものと、様々な例題を出しながら、解説を加えていきます。

オークションとは

そもそも、オークションとは何でしょうか?
基本的な考えとして、「情報の非対称性(売り手には、買い手の頭の中は分からない)がある」という前提があります。だから、オークションで尋ねて、いくらまで払うつもりがあるかを教えてもらい、情報の非対称性を解消します。オークションとは情報収集の方法であるという考え方があります。
また、オークションの特徴の1つとして、欲しい人に集まってもらい、迅速に売買を成立させるというものがあるそうです。不動産屋が広告に物件を乗せて売れなかったら、値下げして…というのはダラダラ値下げを続けるだけです。オークションでは時間コストをカットしてサッと売ってしまうというということができます。そして、学問的には不特定多数の参加者がいたほうが統計的な数値が取れるので良いとなるそうですが、実務的には、その商品に高い関心をもつ参加者を集めることが重要だそうです。これに関して、私は2つの観点があるように感じました。1つ目は、参加者が限定されるということにプレミア感があること、2つ目は主催者側が不特定多数を相手にしなくてよいので主催者コストが減少し、相対的に参加者の支払うコストも減少するということがありそうです。
本書では主なオークションとして以下の4種類が紹介されています。

《競り上げ方式》
一番高い値段を付けた参加者が勝者となる。
開始価格から、参加者が商品の価格を許容できる範囲で上げていく。価格が上がるにつれ、これ以上出せない参加者が降りていき、最後に残った一人が勝者となる。周りの様子を見ながら値付けができるので初心者は入りやすい。
《競り下げ方式》
提示価格に最初に応じた参加者が現れた段階でオークション終了となる。
競り上げ方式の逆。主催者が売りたい価格を提示し、応じる人がいなければ、提示価格を下げていく。最初に応じた参加者が現れて終了となる。生花や、売れ残り不動産などで行われることがある。
《第一価格方式》
封印型
(入札期間に入札額を書いた紙を箱に入れる。入札期間後に箱を開け一番高い入札額の人が勝者)の1つ。勝者が自分の書いた入札額を支払う
この方式は評価額ではなく、他者より1円でも高い金額をつけることを目標とするため、ギャンブル的になる。主催者としても一番高く払ってもいいと思っていても、他者の入札額が低いと予想した場合は、低い金額で入札をしてしまい、結果として上客に売り損ねるということが起きる。売り手にも買い手にもアンハッピーになる可能性があるし、場が荒れやすい。
《第二価格方式》
封印型の1つ。勝者が支払う金額は2番目に高い金額となる。この方式では、勝者の支払額が、自分の入札額では決まらないため、評価額で入札することが得となる。場が荒れくい。他者の入札額を予想する必要がなくなる(耐戦略性がある)

メカニズムデザイン設計の目標として、耐戦略性を満たすことがあります。耐戦略性が満たされると、ギャンブル性がなくなり、売り手と買い手がともにハッピーとなります。
第一価格方式と第二価格方式は、理論上は同じ結果を生みます(収益同値定理(単一財オークションで成り立つ))。しかし、現実世界では理論通りになりません。理由は、標準モデルでは考慮されていなかった別の要素(心理的なヒートアップ、評価値のアップデート、損と分かっていてその行動を選択する人など)が加わるためです。

オークションで結果が出た場合、ブロックチェーン技術を使うと、即座にその結果を実行(スマートコントラクト)することができます。オークションとブロックチェーンは相性が良いです。観点としては、フェイク入札の是非、本人確認、主催者の不正防止があげられています。
私としてはブロックチェーンの利用は推進したいので、オークションはスマートコントラクトで実施できるのが良いと考えています。オークション設計として、耐戦略性だけではなく、運営者のトラストレスという観点にも対応できている(コードを見れば何が行われるか分かるし、改ざん不可)という点も透明性があってよいと思うからです。

積読本の方には、期待する収益がより高くなるようなオークション理論もあると書かれていました。最適オークションという考え方で、第二価格方式において二番目の価格を高くするために、より高い最低落札価格を設定するというものです。しかし、書い手の評価額を予測するために情報収集や分析が必要になってくるためコストがかかってしまいます。実は第二価格方式での期待収益をあげるためにはもう一つ方法があります。それは買い手を増やすことだそうです。最適オークションの考えに則り、最低落札価格を決定するためにコストをかけるくらいなら、買い手を増やしたほうがよさそうです。ヤフオクなどでモノを売る際にも一行の余地がある考え方だと思います。宣伝が大事っと!

複数同質財オークション

いままで単一のモノを売る(単一財オークション)というイメージで説明してきましたが、同一のものが複数個あり、それを売るということがままあります。これは複数同質財オークションといいます。本書では封印型の方式を国債をプライマリー市場で販売する場合を想定して説明しています。

《ビット支払方式》
入札額の上位から売り出し個数分までの入札を勝者として、各入札額をそのまま支払う方式。第一価格方式と同様で、その欠点も引き継いで、オークションのギャンブル性が高くなる。ほとんどの国債で利用されている。
《均一価格方式》
入札額の上位から売り出し個数分までの入札を勝者として、その中での一番低い金額を全員が支払う方式。一部の国債(40年ものなどの長期国債や物価連動型国債)で利用されている。入札者が安心して入札ができる。
《次点価格方式》
入札額の上位から売り出し個数分までの入札を勝者として、負けた入札額の中で一番高い金額を全員が支払う方式。入札者が安心して入札ができる。

次点価格方式は第二価格方式に似ていますが、耐戦略性を満たしていません。正直でない入札で支払額を下げることができるためです。正直な入札ができる場合は、入札額の意思決定コストが劇的に下がるので親切と言えます。次点価格方式の耐戦略性を満たす方式として、ヴィックリー方式というものがあります。分野の創始者が考案した方式です。

《ヴィックリー方式》(二位価格封印入札)
入札額の上位から売り出し個数分までの入札を勝者として、自分以外の負けた入札額の中で一番高い金額を支払う方式。一物一価にならない。ただ、実用されたことはない(主催者として収入が低くなるため)。

個人的にはヴィックリー方式でオークションをする方法を考えてみたいと思いました。ただ、聞きかじりで素人がオークション設計をするのは危険だとも書いてありました。半可通は一番怖い!と。学問を実社会に実践する際は、学者と実務家がともに寄り添いコミュニケーションをとって行くことが重要であるとも本書では言っていました。

複数同質財オークションでの支払額の決定方法は、差別価格(参加者の提示価格をそのまま支払う)、均一価格(勝者の提示価格の中の最低金額を支払う、敗者の提示価格の最大金額を支払うなど)があります。色々なやり方で行うことができますが、複数同質財オークションで一番良いものとして紹介されていたのはイングリッシュ・クロックによる価格決定の方法です。

《イングリッシュ・クロック》
時計の針が一定間隔で動くように、価格が一定間隔で徐々に上がっていく方式。価格が変わるたびに参加者はその価格で何個欲しいかを提示します。参加者が欲しい個数と売り出し個数が一致したところでオークションが終了する。この価格は経済学でいう需給一致価格となる。

このイングリッシュ・クロックを使った例として、フィナンシェのヒーローカードの販売方法が紹介されていました。フィナンシェはクローズドβ版のころからGaudiyで見てきたので、ちょっと思い入れあったりします。
アイドル・起業家・クリエーターなど様々な人が夢を実現するためのプラットフォームです。自身のカードをヒーローカードとして売り出して、資金を得るクラウドファンディングの仕組みがあり、自身のカードを買ってくれた方(ファン)との繋がりを維持する仕組みとしてコミュニティを作ることができます。夢を実現する活動をコミュニティを通してみんなに応援してもらうことができます。

フィナンシェで行ったオークションは、ダッチ・オークションを使ったヒーローカード販売です。
最初に発行枚数と売り出し価格(最大価格)を提示し、時間の経過ともに価格が下がっていきます。価格が変わるたびに参加者は、いくら出すかを提示して、参加者の提示した価格の合計がクロックの価格と一致したときにオークションが終了して、参加者は自身の提示した価格の割合分の枚数を得ることになります。結果としてカード一枚の価格が決定すします。カードの価格がオークションが終わらないとわからないという面白い方式です。

多種類の財を扱うオークション

今までは同一のものをオークションしてきましたが、今度は多種類のモノを同時に競り上げ方式でオークションを行うことを考えてみます。
同時に競り上げるのですが、ポイントは全てのオークションは同時に始まり、全ての競り上げが終わらない限り、どのオークションもオープンに継続することです。つまり、他のオークションの様子を見ながら競り上げができる=裁定を可能とする!ということです。
本書では詳しく説明はなかったですが、複数財の場合はデザインが特に重要だそうです。たぶん、一気に難しくなるんじゃないかなと想像しています。

勝手に引用させていただきますが、安田先生の記事にも詳しく書かれていました。おすすめです😁

まとめ

オークションの方式を、簡単に並べただけでも、これだけあるんだから、本来の学問としてチャレンジするのは、大変そうということは分かりました😅
しかも、まだ、数式出てきてないです。これは専門家と一緒にやるのが良さそうです。

オークション編で感じたことは、耐戦略性という部分です。システムエンジニアとしては、論理で裏付けされた仕組みというものは、安心して使えます。それに、耐戦略性とは、みんなが正直であることが一番お得なんです!これって凄いことだと思いませんか?人の感情を察するのが得意でない私が、みんなと同じように察して忖度してってしなくていいんです!今回、この考え方に触れることができたので、オークションは無理だとしても、耐戦略性のある場作りやシステム設計にチャレンジしたくなったキッカケの本になりました。

続きはこちら↓↓↓


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