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巨大はんぺんに行く手を塞がれる

台所の片付けも終わり、お風呂に行こうと廊下に出ると
奥の部屋のドアが開いて、しずしずと、白い四角いのが出てきた。
人の背丈ほどの高さがあり、まだ半分ほどが部屋の中にある。
「は?・・・はんぺん?」

いやいや、これは娘の使っているマットレスだ。
(言わんでもわかりますがな)
毎晩、いったん部屋から出して、また戻す、ということをしている。
なんでそんなことしているかというと、近々引っ越すからだ。

部屋の中が引っ越し荷物で狭くなり、マットレスを敷く広さを確保できないから、壁際に立てている。
寝る前になると引っ越し荷物をすこし片寄せてスペースを作り、そこにいったん出したマットレスを引っ張り込んで敷く、ということを、この10日間くらいやっている。

その移動時間が、私がお風呂に行こうとする時間に重なると
目のまえを白い巨大はんぺんが塞ぐ。
うひゃひゃと愉快な気持ちになる。
そして湯舟につかりながら、少し寂しい気持ちがよぎる。

家を出たい出たいと言っていたが、とうとうその日が来るのか。
なんて、近いのに大げさだけど。
アパートは職場の近くなので、この冬の通勤は、雪道の山越えがなくなる。通勤時間も三分の一くらいに減る。

娘は昔から家計をやりくりすることに興味があり、レシートなどはキッチリ記入していた。さいわい、どんぶり勘定の私には似なかったようだ。
というか、反面教師?(笑)
一人暮らしをして、一人でやりくりしたいらしい。
光熱費とか水道代も、どう節約するかが楽しみなようだ。
自分の好きなように毎日を回してみたい、という気持ちはわかる気がする。

あと数日で引っ越してしまう。
巨大はんぺんが廊下を横切らなくなると、寂しくなる。


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