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マドリードダービー:シメオネの失策

機能した左サイド

はい、早速ですが開始5分のモドリッチのファーストシュートのシーン。ちょっと目を疑うような人の並びですが、居るべき場所に居ることは居ますね。ヴィニシウスが開き、メンディーが内側を取っています。5バックのアトレティコがサイドに作ったボックスへクロース・メンディー・ヴィニの3枚で侵入を試みます。

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はい。ハーフスペースで数的有利を作り出せました。縦パスを受けようとするメンディーにマーカーがつられるのを見逃さなかったベンゼマの動きだしに、クロースが技術で応えます。ここでベンゼマの空けた中央に飛び込むのが両SBという訳の分からない感じですが、各々が適切なポジショニングを取った結果の5バック攻略法でした。

これはスタメンは発表された段階で予想がつく展開ではありました。何年も前からずっとそうですが、バスケスはWGで出場したときにほぼ張りっぱなしになります。ロドリゴも張る傾向はありますが、アタッキングサードやゴール前ではしっかり内側のポジションを取り、ゴールを狙える位置に飛び込んでいます。セビージャ戦やBMG戦ではそのようにして決定機が生まれていましたが、バスケスは外に立ちっぱなしですので、ベンゼマが明らかに孤立します。張るタイプの両WGとバランスを取るように内側に侵入した結果、両SB・ベンゼマの3トップのような形になってしまいました。

2人はかなり優れた攻撃力を持つSBではありますが、ベンゼマが開けたスペースに飛び込んでの得点力や狭いスペースでの連携などに秀でてる選手ではありません。当たり前ですね。ですから攻撃はベンゼマ一辺倒になります。

そして9分と10分、ベンゼマが立て続けに決定機を迎えます。まずは左サイドの関係です。ポジションを変えながら3角形を回転させて相手を崩そうをいう意図がありそうでした。しかし右サイドは基本的に大外高い位置にバスケスが固定。モドリッチとカルバハルの縦の入れ替わりがあるものの、それだけです。マークが外れる筈がありません。5バックの一角 を引き出し、相手が圧縮してきたと判断したクロースが、IHの位置にいるカルバハルにボールを通すも、完全に待ち構えられて案の定詰まりました。その問題に気付いていたベンゼマは右サイドに関わりに行くシーンが明らかに増えます。

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モドリッチやカルバハルの位置から奥を取りに行き、ベンゼマがそこに関わる、またはベンゼマ自身が奥を取りに行って新たな3角形を創出しようとしました。しかしその影響で全体のバランスは崩れ、中央から人が消えることもありました。ショートカウンターの流れからベンゼマのポストを叩くシュートがありましたが、あれもその象徴です。オブラクのセーブは確かに神がかっていましたが、それ以上にまずあそこで奪われた構造に問題があったように思いました。実際その直後、ボールを取り返す過程でバスケスが内側に入り、モドリッチと内側で縦の関係になった時には上手く三角形が回転し、その直後のベンゼマのチャンスに繋がっているんですね。

5バックの代償

前半35分くらいだったでしょうか。アトレティコはカラスコを明確に一列上げ、4バックに。先制されてしまったので当然と言えば当然ですが、全体を押し上げに行きます。序盤のようにプレスにいっても嵌めさせてもらう気配が皆無で無駄走りに終わり、自陣に押し込まれまくる展開を脱却しようとしましたが、時すでに遅し。先制したホームチームはボールを奪ってから個気味良くワンタッチでつないで密集地帯を回避し、大きな展開も織り交ぜて急がず気持ちよくボールを回しました。ベンゼマは広い範囲を動き回ってポストプレーや機転作りをし、サイドの3角形と絡んでチャンスも演出。

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クロースはブロックの中と外を行き来し、組み立てに専念。サイドをベンゼマ、ヴィニ、メンディーに任せ、三角形の回転で何回かハーフスペース裏の攻略に成功しています。

高い位置を維持するメンディーと対照的にカルバハルは守備に専念。バスケスと挟んでアテレティコ左サイドの攻撃を封じます。速い攻撃で自陣に侵入されるのを防ぎ、エネルギーをセーブしつつもミドルサードでの展開を維持して試合を殺しに行きました。これは結果論になりますが、序盤から5バックを採用したことは相手に押し込まれることに繋がり、失点のリスクを上げました。実際に後ろに人数を担保していたのでゴール前に侵入する機会をあまり与えていませんでしたし、シメオネの意図した効果は出ていたようです。

とはいえ、失点した後から前に出ても今度は気持ちよく回されるだけだと予想はついたはずですので、勝利を目指すならば先制点を取らなければならないのは分かっていたはずです。そこをチェイスして奪ってショートカウンターを仕掛けられるようなストーミングも手札にはありませんし。そう考えるとやはり、5バックを採用するというのは悪手だったように思われます。スコアレスでワンチャン引き分けを狙うのならともかく、そのような力関係でもないでしょう。

総評

あまり語ることの多い試合ではありませんでした。この試合で起こったことは3つです。

①5バックでべた引きアトレティコが押し込まれる

②セットプレーで先制

③あとはボールを回して時間をつぶす

とはいえアトレティコも決定機はありましたし、しっかり決められていたらどうなったかわかりませんでしたね。カルバハルのシュートもあんなの普通決まりませんし、流れの中から崩して決めたゴールはありませんでした。運の良かった試合でした。

年末は日程が厳しくなりますが、バルベルデの帰還は本当に嬉しいニュースですね。この試合でも早速スケールの大きさを発揮してくれました。このままリーガとスーペルコパ、国王杯、リーガを勝ち続けてほしいです。

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