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グラディウス【ビデオゲーム新世紀の旗手】

1985年にコナミから発売されたビデオゲームです。

この作品もゲームの歴史を語る際に外す事の出来ない名作です。

私が初めてグラディウスを見た時の感想は、何がなんだか分からないゲームだと云うものでした。

先ずボタンが3個もある事に戸惑いました。当時のゲームは多くても2個、大概は1個で全てを賄っていたのです。米国のアタリゲームには無闇にボタン数が多いものもありましたが、海外製品なので例外として受け取っていました。

ボタンの配置は左からショット、ミサイル、パワーアップとなっているのですが、ゲームスタート時にはショットのみが使用可能となっています。インストカードにはパワーアップと書いてあるけれど何回押しても自機が強くなって行く気配がありません。ミサイルボタンも同様で何回押しても反応がないのです。

暫く遊んでいる内に、敵を倒した際に現れるカプセルを拾うと画面下にあるゲージが動いて行くと云うシステムを理解出来ましたが、自機を操作しているのにゲージを見る余裕などないのではないかと憤慨しました。それでも美しいグラフィックと透明感のある音楽に誘われて遊んで行くと、徐々にグラディウスの持つ独特な世界観に魅了されてゲーム内容も判然として来ました。

当時斬新であったグラディウスの特徴を箇条書きして見ます。

●それまでになかった複雑なパワーアップシステム。

●自機と全く同じ性能を持つオプションを4個まで付けられる。そのオプションは自機が移動した際の軌道に沿って動き、自機の停止とともにその場で固定される。しかも当たり判定を持たないので無敵。

●自機から斜め下に向けて発射されるミサイルの攻撃力が異様に高い。その威力はショットのみでは十発近く当てなければ倒せない基地でも一発で破壊可能なほど。そして地形に沿って上下にも移動可能。

●ベクタースキャンのようなグラフィックのレーザーが表現として新しかった。レーザーは自機の動きに合わせて発射された後も移動するので独特な感覚も提供していた。当たり判定も見た目以上に広く触れていない敵まで倒せる。

●バリアの耐久力が異様に高い。壊せない障害物に触れる事で急激に減少するが、耐久力のない敵、及び敵弾に対しては無敵に近い強さを誇る。しかし前方からのみ。

●全7面。それぞれが全く異なった美術で構成されている。しかも何れもがそれまでにない斬新な物となっている。火山。モアイ。触手。アメーバ。要塞など。流れとしては、道中、イベント、ボスと進みます。

●パワーアップする事で難度が高くなって行く。また時間経過に依っても同様。

●自機がやられてパワーアップがなくなると絶望的にならざるを得ないほどゲームが難しくなる。

いま思い返して見ただけでもこれくらいはあります。自機がパワーアップして行くと云う点にかなりの比重が掛けられているのが分かります。極端なほど強くなって行きますがその分敵も強くなります。主に弾が多く発射されるようになるのですが、制作者が考えたほどの均衡は取れていないと云えます。

以後発売される続編のグラディウスⅡでは、ミサイルも弱くなり、バリアも絶対的な強さを持ちません。難易度としても死亡即ゲームオーバーとなるほど辛くもありません。しかし、グラディウスの持つ不思議な魅力が隠されているのはこのアンバランスさの中だと思われます。

私の独断なのですが、初代グラディウスのゲーム性とは意図して作られた物ではないのではないでしょうか。

企画者は新しいバブルシステムと云うハード上で実現出来そうなアイディアを紙の上で羅列して行き、実際にプログラム化された事によって、初めてグラディウスと云う名作が偶然完成したように思えるのです。

云うなれば企画自体はかなり取り止めのない物だったけれどもプログラマーが上手く纏めたに過ぎない…。

このように考えた理由は幾つかあるのですが、この当時(現在もですが)ゲームシステムから生ずるゲーム性と云う物を理解して作り出せる企画者が殆どいなかったと思えるからです。

これが出来ていたのはナムコにいた一部のゲームデザイナーだけだと云えるでしょう。そのナムコも時代の複雑さに押し流されて本来を見失って行くのですが…。

コナミはタイトーとよく似ているメーカーで粗製濫造の中から原石が生まれたら幸運だみたいな方針を持っていますよね。狙ってヒット作品を作れない理由もここにあると思われます。

グラディウスとはまさしくハードの切り替わる時期に偶然現れた珠玉の名作だったのではないでしょうか。だからと云ってグラディウスの価値が下がるものでもありません。脈々と受け継がれた遺伝子は20年近く経た現在にもそこかしこに見出だす事が出来るほどです。

しかしグラディウスのような不思議な魅力を不均衡で以て表現するゲームは未だ現れていないのも本当でしょう。制作者の予期し得ない物だからこその掴み切れない斬新がそこにはあったのです。

2004.10.26

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