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付き合った人と、どんな風に会話していたかもう思い出せない

たまにこれまで付き合ってきた人について思い出す時がある。
それは日が暮れ始めた空を見ている時や、一緒に行ったことがある店に訪れた時。
彼が好きだったアーティストが新譜を出した時や、今デートをしている相手が好きな食べ物が彼の嫌いなものだった時。
どうしているのだろう?と彼らに想いを馳せる。それは、また彼らと恋の物語を始めたいというのとは違って。なんとなく知ってみたい、という好奇心?なのかな。

そして、そういう時に思い出そうとするのが付き合っていた時の二人。
別れた直後は、出会った時の瞬間やこの人と恋に落ちようと決めた時の気持ちばかり浮かぶ。
なのに、どうしてだろう。別れて時間が経つと、二人の恋が終焉に向かう途中のことしか思い出せない。
他人行儀になった瞬間からのコミュニケーションしか思い出せない。
あの人、私と付き合っていた時ってどんな顔してたっけ。
私のこと、どんな声色で、なんて呼んで、朝とかどうやって朝ごはん一緒に食べていたっけ。
思い出せないんだよね、もう。

だから、以前付き合っていた人のことを考えると、私はこの人と付き合っていたのかという歴史にたまに驚く。
偶然街中で再会した時も、そっか、私この人とベッドで激しく愛し合ったんだ、ってびっくりする。
でも、その人のことで恋だとか愛だとかじっくり考えていた時のことは、覚えている。抱いた強い、愛しいという気持ちも。焦がれた時や流した涙のことも。
それは多分私の気持ちだからかな。
残念ながら人は多分、他人からしてもらったことや、されたことは自分で考えて生まれた出来事ではないから、それが良いことでも悪いことでもいずれ忘れてしまう。

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私が節目ごとに観る大好きな映画『エターナル・サンシャイン』では、こんな台詞が出てくる。

“What a loss to spend that much time with someone, only to find out that she's stranger”
(誰かと付き合った時間は、ただその人が結果的に他人だったことを突き止めるためだけの、時間のロスに過ぎない)

その通りだと思う。
でも、それはロスだとは思わない。
もちろん、一体あれはなんだったんだろう?って思う付き合いも無かったと言えば、嘘だ。超失礼なんだけどさ。
けどそれさえも、おそらく私の地肉となっているはずで。

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ただ、やっぱり思い出せない。かつて愛した、愛したと思っていた人たち。

今はどんな人と恋に落ちて、結ばれて、まだつまらない事に腹を立てたり、時間にルーズだったりするのであろうか。
彼らもまた、たまに私のことを考えて、私のことを思い出せなくなっているのだろうか。

ああ、伸びきった爪も切らなきゃ。

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