見出し画像

かふぇ あたらくしあの徒然 #5~小物は小物

先日とある音楽イベントに伺った。

主催者兼出演者であるK氏は私が営んでいるカフェの常連さんで、真面目で音楽に対して熱心でよく研究、調査をしている20代半ばの若者だ。
彼が好み、そして研究、調査している音楽ジャンル「NR」(それを書くとK氏が誰であるかがわかる人にはわかってしまうので、今回は敢えてそれをこう表す)で、伺ったイベントは、そのNRの歴史の中でとても重要な作曲家であるH氏の音楽活動を振り返りながら、彼が生んだヒット曲の数々をそのバックグラウンドや世相とも絡めて紹介し、レコードも演奏する、という趣向だった。
K氏はこのイベントのために、100枚近くのパワーポイントを制作し、それをプロジェクターでスクリーンに映し出しながら説明する、という念の入れよう。そこに登場する資料(当時の新聞広告やレコード目録や演奏記録・・・)の効果もあって、それは大変分かり易いプレゼンテーションだった。ちなみに彼の趣味のひとつは国会図書館で当時の新聞のマイクロフィルムや資料を閲覧することだ。

実はちょうど今、その作曲家H氏がモデルとされる人物が登場するドラマが放送されており、今回の企画はそれもあって準備されたものでもある。
お客さんの中にはもちろんNRに精通している方もいらしたようだが、どちらかと言えば娯楽としてNRを楽しみ、おまけに今話題となっているドラマとも関連する内容だったので、来場したという一般のお客さんの方がむしろ多かった。
K氏はそれを見越してか、実際にH氏の下で起こった出来事(史実)と、モデルであったとしてもフィクションであるドラマでの出来事との違い、あるいはその通りであることについても「ドラマでは〇〇〇でしたけど、実際は✖✖✖だったんですね・・・」というように、具体的に説明してくれるので、お客さんもそれを聴いては相槌を打つ、といった感じで、納得し興味深くK氏の解説に耳を傾けているようだった。

惜しむらくは、彼はこういった活動を趣味として行っており、プロの音楽評論家でも時代考証家でもなく、人前でしゃべることに必ずしも慣れていない。よって時に説明がまどろ漉しくなったり、予定していた時間をオーバーするといった手際の悪さが若干あったことか。
だだ、それとて私が拝見してきた過去3回のNRのイベントと比べれば、遥かに改善されていたのも事実だ。これまでの反省点を顧みて、K氏のさらに良いものにしようという意気込みと努力は確実にイベントに反映されていたと思う。

という意味でソ-ルドアウトもした今回のイベントは大成功であった、と言いたいところだが、そんなK氏の努力やお客さんの満足感に水を差す、そしてそれがあったことで私自身は後味の悪さを感じずにはいられない出来事があった。

実は今回のイベントは作曲家H氏を特集する2回連続のイベントの1回目ということで、来月2月にその2回目を今回の視点や時代とは変えて行うことになっている。
そしてそこにはゲストとしてYH氏という人が招かれている。
このYH氏はK氏の専門・得意分野であるNRよりも、少し時代が下がった比較的新しいNRについて見識があり、それに関連するイベントの司会などにも呼ばれるような人だ。弁が立つのとお笑い(落語、漫才関連)の知識や交流もあるので、一定のニーズがある人材なのだろうが、K氏と同じくプロではなく、あくまでも趣味の一環での活動だ。
私はK氏と知り合う以前にYH氏のことなど全く知らなく、K氏や彼の仲間が「頼りになる人」「客が呼べる人」「自分たちの口下手なところを彼のトークが補ってくれる」などと言うので、「そんなものなのか・・・」程度にしか思っていなかった。

話が横道に反れるが、私は今の生業を始める前、35年間FMラジオ局で番組編成や制作、所謂プロデューサー稼業をしていたので、おしゃべりのプロ、話が上手い人、と言われる人が本当にそうなのか?という吟味については、手前味噌ながら「プロ」だ。プロと言い、言われる以上、一般のお客様にはただ面白可笑しく見えたり聞かれたりする人であっても、肝心要なことが全くずれ落ちているしゃべり手を見分け、それを評価することができる。そうでなければ稼業にならない。

実はK氏のイベントにYH氏がゲストとして登場するのは2回目で、昨年行われた1回目のイベント(別テーマ)にも私はお邪魔していた。
そのイベントはK氏とK氏の仲間であるO氏の二人が進行し、そこにYH氏がコメントしたり、歌番組の司会者(例:玉置宏)のように音楽をかける際にそのイントロに乗って曲紹介をする、といった内容で会場を一層盛り上げる、という趣向のようだった。
先にも言ったようにK氏やO氏は自分たちの口下手を少しでも目立たなくし、お客さんに楽しんでもらおうと、エンタメ的要素も加えた内容にするためYH氏を招いたのであろう。

しかしそのイベントで見たYH氏の醜さは、怒りを超えて彼が哀れに見えるほど酷いもの、エンタメの世界にあっては絶対いけないことのオンパレードだった。

まず第一にYH氏は自分がゲストであるという立場を全くわきまえていなかった。
ゲストはMCがイベントを進行する際、求められたら適切なコメントや解説をし、その話芸を活かすのであれば、与えられた時間や場所でお客さんを盛り上げるために面白可笑しく振舞えばいい。
ところが、彼はMC二人を配下に置くかの如く、自分で進行もしようとする。二人が準備している進行案などには目もくれず、自分がしゃべりたいことをテーマから離れてもしゃべり、自分がやりやすいようにイベントを仕切ろうとする。
YH氏は二人より年配で、素人の範囲とは言えイベント慣れし、自分のトークがお客さんに受け入れられてきたという経験や自負があるから、平気でそういう態度に出る。
しかし、それは自らが企画し出演するイベントで思う存分すればいいだけの話で、今回の立場で絶対にやってしまってはいけないことだ。そういう意識がYH氏には完全に欠如している。二人を見下している。
「二人の話が拙いから、私がお呼ばれしたんでしょ」とか言い出す始末。

さらに最悪なのは、自分がステージに登場する前、二人が前説的に進行しているところを捉え、ステージに登場するなり、お客さんを前にして二人に「ダメ出し」をして、笑いを取ろうとする。人を晒しものにしてウケを狙うなど、下衆も下衆だ。
また、手弁当イベントであるK氏のイベントに、自分のギャラの話をチラつかせる。「お金」の話は笑いのネタになることはあるはものの、そこにはそれが下世話にならないように、さりげないユーモアとして受け捉えられるようなセンスが絶対に必要だ。そしてそれはかなりのテクニックを要する。しかしYH氏にはそんな才覚もない。
彼の話に笑う客はもちろんいるが、それは彼贔屓の客であって、仮に笑っている別のお客さんがいてもそれは「爆笑」ではなく「苦笑」だ。
イベントのお開きの時間が迫り、K氏とO氏がトークの最終段階に入ろうとするところにもYH氏は口を挟み、彼が勝手にイベントを締めようとするではないか。
最悪だ。

その前回のイベントのお客さんを見ても、「YH氏が出演するから」という理由で来場したお客さんは、実はさほど多くはなかった、いやむしろ少なかったように見受けられた。K氏は「集客力があるから」という理由でYH氏を招いたはずだが、そこは大きな目測ミスがあったと思われる。というか、K氏やO氏のトークや先に上げたK氏の準備や知識があれば、十分集客でき、興行として成り立つはずでは?というのが私の見立てだ。

さて、そんなYH氏がH氏をテーマにした来月開催の第2弾イベントにゲスト出演するということで、第1弾イベントの最後にその告知をするために、観客の一人として座席にいたYH氏が呼び込まれた。そのイベントをK氏と共に進行するO氏も一緒に登場した(これまでお伝えしてきた理屈で言えば、ここでYH氏を登壇させる必要など全くないはずだが、K氏は立場上、力関係上出たがりの彼を押さえつけることができなかった、のだろう)。
第2弾イベントは昨年私が観た別イベントと全く同じ座組のイベントになる、というわけだ。
そしてまた最悪なことが繰り返された。

YH氏はステージに上がるや否やK氏に対して「声が小っちゃいんだよ、君は!」とまずはダメ出し。
その会場に集っていた人であれば誰でもK氏の頑張りにねぎらいの言葉一つはかけるべきところを、そこには全く触れず、聞かれてもいないのに第2弾での自分の役どころについて、それも「そうしてくれとK氏O氏から言われたので仕方なくやる」ような話の持って行き方でお客さんに披歴する。
彼からすれば、それは笑いを取るための常套手段なのだろうが、K氏がその日のイベントを立派にやり遂げた後では、それに呼応して大笑いするのはYH氏の贔屓筋一人だけのように私には聞こえた。

簡単に言ってしまえば、YH氏のことをこう手短に表(評)することができる。

「小物が大物であるかのように、虚勢を張って、大声を出し自分の存在を誇示しても、結果小物であることがさらに強調されるのみ」


誰かがYH氏にそう言ってあげることができれば、どれほど世のため人のためか。
ただそれができずに、YH氏はそうと多くの人が気付き始めていることも知らず、相変わらず最低最悪のエンターテナー(のつもり)で生き続ける。
ピュアな子供が「王様は服を着ていない」と言うシーンが、YH氏の人生には登場しない。

私が過去関わってきたラジオ・パーソナリティにもこの手の類は常にいた。
共通して言えることだが、彼らのほとんどは「小心者」だ。本当は自分に自信が持てない、他人からどう見られているかが、常に気になってしようがない人たちだ。

ああ、哀れなり。




































































































































































































































































































この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?