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Semi Final(第二試合)

恐らく、夜中の2時から3時の間だったと思います。普段は朝まで起きないのですが、トイレに行きたくなって目を覚ましました。階段脇のトイレの照明のスイッチを入れ、ドアを開けた瞬間、目が合ったのです、

G様と。

瞬時に1m後退し、しりもちをつき、大声を上げてしまったのは言うまでもありません。こんな時に限って女帝軍団は実家に帰省中。ということは自分でこの局面を乗り切るしかありません。だいたい、G様を目撃したのなんて数十年振りです。家に殺虫剤などあるわけがないのです。しかしながら、人間窮地に立たされると火事場の馬鹿力の如く、脳味噌はフル回転するものなんですね、思いつきましたよ『カ〇キラー』。この中には塩素が含まれているに違いない、だから大量にG様に噴きかければ、あの小さな体なのでお亡くなりになってくれるはずだ。そもそもナイスなネーミングじゃないか、Killerキラー(殺し屋)だぞ!

思いつくやいなや階下のバスルームまで脱兎のごとくダッシュ。キラーを掴むと同時に反転し階段を一段抜かしで駆け上がりました。幸いG様は急に明るくなったせいか、微動だにしていませんでした。ここからは我を忘れて噴射しまくりです。想像どおり数回では全く効きません。それどころか却って暴れ始めました。トイレを何周かし、廊下まで出てきてしまったのです。想像はしていたものの、いざこちらに向かって来られるともうパニックです。1秒あたり3回くらいにシフトアップです。

我に返った時にはG様は完全に動かなくなっていました。この時の安堵と共に訪れた勝ち誇ったような、ねじ伏せたような感覚は今でも思い出すことができます。しかしながら、まだ問題は残っています。廊下で臨終を迎えたキラーまみれのG様をなんとか処分しなければなりません。もちろん動かないのは分かっているのですが、素手はおろか手袋越しでも掴むのは不可です。古新聞を持ってきて、ちり取りのようにG様の下にスッと差し込んですくいあげました。あとは、庭の隅にポイっと。

そうだよ、トイレしに来たんだった。用を済ませて布団に入りましたがそこで、ようやく思い出しました。昨日丸一日、1階の掃き出し窓を網戸もせずに開けっ放しにしていたことを。

翌日の朝起きてみると、キラーを噴射しまくったおかげで廊下のワックスがその部分だけ剥げて、マダラ状になっていました。慌ててその日のうちに、数時間かけてワックスがけをしたのは言うまでもありません。

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