東京から1240km離れた五島列島でもリモートワークできるが、やらない方がいい。-子連れワーケーションの理想と現実ー

先週、子ども二人を連れて Business Insider Japanが主催した五島列島でのリモートワーク実証実験に参加をしてきた。

正直に書くと、1週間ずっとモヤモヤしていた。
忘れないうちに、きれいごとではうまく行かない子連れワーケーション(ワーク+バケーション)の理想と現実について整理してみる。(まだ整理しきれないので、長文です。個人的な見解です。)

まず、前提として
■5月20日(月)~5月25日(土)までの5日間の参加
■小学2年生の息子と年長の娘を連れて参加。息子は地元の小学校に体験入学(朝8時ー14時半)娘は保育園に一時保育(朝9時ー16時)。働ける時間が通常時間の約半分
■リモートワーク実証実験だったので、普段の仕事を山のように持って行った。(テレビ会議15件、制作案件4件)
■私は会社を経営している。サテライトオフィスを展開し、社員もリモートワークで雇用し、私自身も都内の企業にリモートワーカーとして働いている。仕事が超好きで、自分の仕事のやり方に疑問を感じたことはない。
■リモートワークができることはわかっていたので、今回の参加理由は「仕事と遊びの両立により新しいアイディアを考えたい。」「子ども達と大人の豊かな体験の両立を実現したい。」
■移住を一度も考えたことがない。
■参加前に持っていた子連れワーケーションの理想イメージは「子どもは現地でかけがえのない体験をし、私は仕事がはかどり、新しい閃きもうまれ、時間的に余裕があり、豊かな時間を過ごす。」

東京の仕事をするということはその分、五島でしか得られない「出会い」や「機会」を失っている

1日目、月曜日の15時に五島の福江空港に到着し、参加者たちとご飯を食べ、バンガローに移動し、5日間生活をする準備を整え、子ども達を寝かした。

2日目、学校に挨拶に行き、緊張で固まる息子に「大丈夫だよ。あなたは絶対に好かれるから」と声をかけ、4日間だけの体験入学に送り出した。
その後、保育園で面談をし、「寂しい」という娘にも「大丈夫だよ。あなたは絶対に好かれるから」と声をかけ、一時保育に送り出した。

この時も私の頭の半分は「早く仕事を始めないと14時までに終わらない」という焦りがあった。不安な子ども達の心をすべて受け止める余裕はなかった。いつも子ども達を送り出すのと同じくらいバタバタだった。

そして、バンガローに戻り、パソコンをWI-FIにつなぎ、会議を始めた。その日中に出さなければならない資料もあり、お昼はコンビニで買ってきたパンを片手にほおばりながら、ひたすらパソコンに向かっていた。

会議が終わって、イヤホンを外したら波の音が聞こえた。
その瞬間に「私はアホなんじゃないか」と思い始めたのだ。

目の前に広がるきれいな海を見る余裕もなく、パソコンをずっと見つめている。どこでも買えるパンをほおばっている。戻ればいつでも会える人たちとテレビ会議をし、この機会にしか会えない五島の人たちと話す機会を作れていない。

私にとって「東京の仕事が五島でもできる」ということを証明することに何の価値があるのだろう。
静かな場所とwi-fiがあれば仕事はできる。というか、集中さえしてしまえば、外部を遮断するから正直どこにいても関係ない。
ただ、時間とお金をかけて1240キロ離れた場所まできて東京と同じ時間を過ごしていることへの残念さが押し寄せてきて、生産性は下がった。

地元の人たちが集まる、夕食パーティーに参加しても夜のテレビ会議の時間が気になり、途中で抜けて外で会議をしていた。めっちゃ楽しかったのに。

仕事もプライベートも中途半端な状態で最後までモヤモヤは消えなかった。

環境だけでは、子どもに豊かな体験をさせることができない。

息子は初日から「一瞬で友達ができた!」と元気にかえって来た。娘も「あの保育園はすごく自由なの。何してもいいんだよ!」と笑顔で帰ってきた。

二人の笑顔を見て安心していたら、息子から「楽しかったけど、明日も学校行くの?なぜ五島まできて、僕は学校に行かなければいけないの?」と言われた。

私が「なぜ五島まできて仕事をしているんだろうか」という疑問と同じ疑問を息子も感じていたようだった。確かに授業はどこで受けても変わらない。しかし、私との大きな違いは息子は現地の子ども達と仲良くなっているという点だ。

普通の観光では決して築くことができなかった友情を学校に通うことで得たことは「五島に来たからこそ」できたこと。

とはいえ、せっかく目の前が海なんだから、遊んだりしたいよね。
ということで、学校から帰ってきたら、ひたすら海で釣りをした。
海なので、目を離すわけに行かないし、釣りなので針が危ないし。
1日目は私一人で海に落ちないように見ながら、針を周囲にひかっけないように注意しながら、針を飲み込んだ魚を手でつかみ、取っていたら、糸が絡まり。すごくイライラしてきて、「なんで言うことを聞けないの!」と怒ってしまった。

私はなぜ五島にまできて子どもたちに怒っているんだろう、とまた落ち込んだ。豊かな時間を過ごしたかったはずなのに。子ども達に普段とは違って思いっきり遊ばせたかったはずなのに。

夕方になるまでにお風呂も入れて、ご飯も食べて、宿題もして、寝かさないといけない。結局、言いたくなかった「早くしなさい」を連呼している。むしろ、私も勝手がわからない中で、「五島でしかできない経験をさせないともったいない」という焦りでいつもよりもイライラしていた。

2日目は朝、海辺を散歩していたら釣りをしていたおじいちゃんがいたので「子どもたちが釣りをしたいのですが、どこに言ったら釣れますか?」と聞いた。そしたら「俺の同級生が魚屋しているから」とお店を教えてくれた。
放課後、その魚屋さんに子ども達と一緒に行ったら、魚屋のご主人が子ども達のために竿に糸をつけてくれて、えさをくれて、釣り場を教えてくれて、釣った魚をタダで調理して、その場で刺身にして食べさせてくれた。

3日目も釣りをして、息子が大きめの魚をゲットしたので、魚屋のお店に持っていったらすでにしまっていた。しかし、現地の方々と交流する夕食会に参加したら、そこにマグロ漁師さんがいてくれてさばいてくださった。

4日目は現地の子どものお父さんが釣り場に連れて行ってくれて、バンバン連れた。私は安心して座ってみているだけで良かった。

現地の人とつながり始めて、グッと体験できる幅も深さも広がった。
結局、どんなに環境が良くても、親だけしか関わらないと豊かな体験を満喫できない。


仕事と遊び。ワーケーションを子ども達も私も楽しむために必要だったこと。

結局、参加前に思っていた理想の子連れワーケーション(子どもは現地でかけがえのない体験をし、私は仕事がはかどり、新しい閃きもうまれ、時間的に余裕があり、豊かな時間を過ごす。)はしきれず、現実は仕事時間はあまりとれず、現地との交流が思うようにできず、子ども達もスケジュールに追われ、豊かな時間を実感しきれなかった。

■リモートワークの生産性を高めるのではなく、地元で仕事を創るというスタンス
最終日に寄った移住者が立ち上げたパン屋さんで「これから学童とシェアオフィスをやる予定です」というお話を伺った。
ああ、本当はこういう話をするべきだったのだ。
私は地元で学童をつくりに携わり、オフィスも作ってきた。地域に必要なスペースを作り、小さいながらもビジネスが回るモデルを展開している。同じ思いを持っている方とつながり、情報交換し、一緒にできることがあったら五島と継続的につながる機会になったのに。

普通に仕事をするなら、子育ては家の方が何倍も楽だし、自分のオフィスの方が効率的だ。ワーケーションは仕事の効率を上げるためにいってはいけなかった。
今回の実証実験をキッカケに、新しい仕事を五島の人と一緒に作るというのが一番五島でするべき仕事だったのに、私がそれに気が付いたのは本当に最後の最後だった。

■1週間ではなく、1ヵ月くらいの期間
1週間だとどこに何があるのか?誰がいるのか?を把握したところで終わってしまった。
子ども達も遊ぶ時間が「放課後」と「土曜日」しかなかったからイベントを詰め込んでしまって「蛍見るから、急いで」「釣りしたいなら早くしなさい」と何度も行ってしまった。ようやく現地の学校にも慣れてきて、友達とも仲良くなったところだった。

そもそも5日間という日程で仕事も遊びもというのが無理だった。
最低でも1か月以上は必要だった。
親子ともに土地に慣れ、人とつながり、新しい何かを創造するには時間が足りなかった。

■まず先に自分達のリズムを作るのではなく、現地の人とつながるという順序
子ども達に豊かな経験をさせて、自分も新しい事業を生み出すような時間を取るために、何よりも先にすべきことは「現地の人とつながる」ことだった。
私は先に、自分達のリズムを作ってから外に出ようと考えていたので、現地の人とつながるのが遅れた。

先に人とつながった方が、生活のリズムが現地に合ったものになり、無理が無くなる。情報も入りやすく、子どもと遊んでくれる人ともつながれるから、自然と時間的にも精神的にも余裕も生まれる。

最後に。五島でこの企画に携わってくださった方々に感謝を込めて。

モヤモヤした1週間でしたが、そのモヤモヤも含めて経験できたことは実証実験として成功でした。
息子も娘も親友ができ、手紙のやり取りが始まっています。

今回の振り返りを元に体制を整えて、また行きます。

この企画でなければ、1週間であんなにも五島の方々とつながることはできなかったと思います。
子ども達は「五島の人は本当に優しいね。僕たちも新しく来た不安な人にあんな風に優しくなりたい」と言っていました。
今まで、移住を一度も考えたことはありませんでした。どこでも仕事ができるということは逆を言うと、どこかを選ぶ必要がありません。そんな私にとって住む場所を選ぶポイントは「子ども達の環境」です。エリート教育をするつもりは全くなく、五島のような走り回り遊びまわり思いっきり五感を伸ばすことができる環境があるなら私はその土地を選ぶのだな、と今回初めて思いました。

・Iターンをして、ホテルを運営し、ワークスペースを提供してくださったセレンディップホテルの岡本さん

・今回の企画の手配をすべて行ってくれた五島で旅行業をされているトラベルQの副田さん

・この企画をたちあげ、現地の情報や人を繋げてくださり、手配をしてくださった五島市のみなさん
・暖かく子ども達を受け入れてくださった富江小学校、とみえこども園のみなさん
・五島から千葉の学童への遠隔授業に活用させていただいたロジクールさんのWEBカメラ
・バンガローで活用させていただいたwifi環境(docomoさん)

そして、何もわからない私たちを終始サポートしてくださいったBusiness Insider Japanの運営メンバーのみなさん。

本当に本当にありがとうございました!

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Backcasting LAB編集長「未来メガネ」

未来の「ありたい姿」を起点に、今を振り返る。Backcasting LABの編集長として、少し先の未来をワクワクしながら書いていきたいと思います。
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