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「わたしには理解できません。だからお任せします。だから一緒にやりましょう」を敬意と共に言えるのが多様性だと思う。

先日、埼玉県吉川市の「多様な女性の働き方」というイベントに呼んでいたた。

地元企業の社長、NPO代表、創業者がパネリストとして登壇され、私と中原市長がコメンテーターとして話を聞かせていただいた。


登壇席に座る唯一の男性である山崎 智士 さん(株式会社サティス製薬 代表取締役) が「制度は女性社員たちに作ってもらいます。私にはわからないですから。私も子育てをしていましたが、男性が行う子育てと女性は違うでしょうから」がサラッとおっしゃった。

女性だらけのこの場所で「理解できない」「わからない」と言い切れるってすごいな、と思った。

「わかった気でいる」というのが実は一番の弊害(特に強い立場の人が)

「私の妻が専業主婦だからわかるんですけど。」
「部下が女性ばかりだから、働く女性については理解しているつもりだ」

悪意はなく、相手に共感の意を示すための言葉で使われることも多々あるとは思うし、それによって救われる場面もある。
しかし、本当に「わかる」「理解している」と簡単に言ってはいけない場面も多い。

少し遡ってしまうが。
私は中学生の頃、いじめられていることを先生に伝えたら「お前の気持ちはわかる。俺は先生を何年もしてるから、いじめは理解しているから」と言われた。わかって、理解した上で行った対応が「みんなの前で今のお前の気持ちを言え」なのか。

それ以上話しても無駄だと思った。
「わかっている」という言葉は相手の中で「それについては自分の中で完結しています」ということで、それ以上、何も言えなくなる。

周囲に当事者がいるからと言って、当事者以外が「わかっている」という言葉を使うのは相手からその後何も引き出せなくなるリスクがあることを知ってほしい。

多様性を受け入れる、とは相手を受け入れるんじゃなくて「自分はわからない」を受け入れること。

私は二人の子ども育てながら働いている。
だからと言って「ワーキングマザーの気持ちをわかる」とは言えない。
正社員として働く母親の気持ちはわからないし、地方で働く母親の気持ちはわからない。一度、職場を離れた女性の気持ちはわからないし、子どもが3人いる母親の気持ちはわからない。男の子だらけの母親の気持ちもわからないし、中学生の子供がいる母親の気持ちはわからない。

もちろん推測することはできるし、思いやることもできる。
決して「わからないから」と知ることをあきらめて、切り捨てるのが良いと言っているわけではない。
自分の気持ちや状況以外は「わからない」と思っておいた方が教えてもらえることも多いし、余白があるので受け入れやすいのだ。

私は「学歴は必要ですか?前職が有名な方が良いですか?」と創業したい女性から聞かれた時に「学歴なんて関係ないよ。起業してわかった。社会は覚悟と実力さえあれば上に行ける」と言っていた時期があった。
しかし、私は学歴も職歴も持っている。持っている人間は持っていない人間がぶつかる壁を知らない。知らないからこそ「関係ないよ」と言えたのだ。

「ブランド」は信頼を獲得するために便利なツールなのだ。
ブランドがないばっかりに自分が信頼に足る人間だと説明するのに非常に多くの時間を要することを私は知らない。

結局、自分の人生以外のことは何も言いきれない。
久賀 きよ江さんは(株式会社メガネマーケット 代表取締役)はそのことを十分ご存じで、自分たちが頑張って切り開いてきた「女性の社会進出の道」を 若い世代に押し付けることなく、肯定し、任せているから大きな業界再編の波を乗り越えたと語ってくれた。

多様性を受け入れるって「わからない」ってことを受け入れること。共感や理解の前に「わからない」ことを受け入れることが先。

カオス状態の社会でこそ多様性は育つ

今回の吉川市のイベントは行政が企画してものではなく、市民シンクタンク(個人かチームを組んでそれぞれに興味ある分野で政策提言を行う形式)でNPOよしかわ子育てネットワーク代表の中島さんが実現したものだった。

行政が「女性活躍のために」とわかったつもりで企画したものではなく、子育てを知り尽くした市民とともに立ち上げた企画だからこそ、多様性が実現されれいた。

同一の会場で子ども託児スペースがあり、販売スペースがあり、シンポジウムが開催されていた。

カオスと思われる会場だった。

機能ごとに各会場に分けることもできたかもしれない。
しかし、多様性をテーマにするなら分けない方が面白い。
社会は分かれていないからだ。
しかし、今の社会は分かれてはいけないのに、分けてしまっているから多様性が育たなくなってしまっている。
子どもはあっち、販売はあっち、講演はこっち、と。

本当は商店街で野菜販売を行っている前で子どもたちが縄跳びをし、隣のオフィスから会議が聞こえる。
各々の目的は違うが、同じ場所に存在していても成り立つ。
その姿こそが理想なのではないかと壇上から眺めていた。

女性が生き方や働き方を考えることは自分のためだけではなく、子どもたちのため、大げさではなく日本の未来のため。

妹尾 百合子さん(株式会社comgran 代表取締役)もおっしゃっていたが、
「仕事のことを考えると子育てがおろそかになるのではないか、、」
「自分のことを考えるよりも、子どものことを先に考えるのが母親なのではないか」そんな固定概念に悩まされている方も多い。

大人がチャレンジしていなくて、子どもは誰からチャレンジの仕方を学ぶのだろう。教科書には書いていない。書いていたとしてもできない。
狩りの仕方を親から学ぶサバンナの動物たちのように、人間だって目の前の大人を見て生き残り方を学ぶ。大人が「わからないから、一緒にかんがえよう」と言っていたら「わからないことは恥ずかしいことではない」と学ぶ。わかる人に頼った方が早いことを知り、みんな違っている方がうまくいくことを知る。
そうやってチームで働くことを体得し、社会に出るための準備ができるのだ。

毎日抱きしめて「愛している」と絶対的な安全を確保し、背中で生き方を見せる。それ以上の子育てを私は知らない。覚悟をもって創業を決めた妹尾さんの背中はお子さんに「自分で決めるカッコよさ」をちゃんと伝えてる。

だから、女性のみなさんにはぜひ罪悪感を持たず、自分のために、子どもたちのために、そして未来の社会のために自分がどう生きたいかを考えてほしい。

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