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【2019年12月4日・未来のBUTAI #6】Before After実例から学ぶ、イノベーションを生み出すための空間づくり

浅草橋のインキュベーション&コワーキングスペース『BUTAI(ぶたい)』では、イノベーター同士が出会える場を提供すべく毎週水曜日の夜にイベントを行っています。第6回目は、「イノベーションを生み出すための空間づくり」がテーマのイベントを開催しました。

今回のゲストであるヒトカラメディア社のお二方が手掛けた事例を元に、イノベーションを生み出す空間とは一体どんな空間なのかという話から、BUTAIオフィスの建築裏話など、色々な話が飛び出しました。

登壇者プロフィール

野田 賀一氏
株式会社ヒトカラメディア

航空自衛隊、生命保険営業、不動産コンサルティング会社を経て2015年11月にヒトカラメディアにジョイン。 これまで、法人営業、貸し会議室事業の店舗開発・SV、レンタルオフィス事業の新規立ち上げ・SV、オフィスビルのビル管理など幅広い業務に携わる。 現在、主にベンチャー・スタートアップ企業のオフィス戦略パートナーとして、オフィス選定から内装構築までのサポートを通じて組織課題の解決や組織作り・事業成長を実現する空間作りのフロント営業をしつつ、新規事業としてオフィスビルデベロッパーやビルオーナーの「新しいオフィス賃貸運営」のオープンイノベーションの企画提案・プロジェクトマネジメント業務を推進する。
大塚 裕樹氏
株式会社ヒトカラメディア


1992年生まれ、東京都葛飾区出身。
埼玉大学教養学部卒業。前職は海上輸入通関をメインに貿易会社に勤務。
2017年よりヒトカラメディアにジョイン。オフィスの内装設計を行うプランニング事業部において事業部運営、外部企業との連携・企画などを担当。
キャンプ/アート/お酒など「遊び」の要素をオフィスに取り入れることで「働く」の新たな一面の発掘に取り組む

オフィス空間は企業の成長に大きく関わっている

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野田氏:ITが発達して「働く」と「暮らす」が密接になってきている現代で、昔よりも選択肢が増えて、自分らしい暮らしを選びやすくなってきました。我々はオフィスなどのハード作りを業務としていますが、その上に乗る「働き方」や「組織の課題解決」や「成長戦略」などのソフト面でのお手伝いもしています。事業としては大きく6つあるのですが、今回は主に「オフィス選定仲介」「オフィス空間プランニング」部分のお話をします。

いつもオフィス作りをする際に話すのが、「いいオフィスを作るには、まずは企画者の方針と社員の認識の乖離を少なくしましょう」ということです。経営者の方々は総じて3~5年の先を見据えていますが、社員は今日明日などの直近のことを目線がいっているので、立場の違いによって見ているものが違うんですね。

それを空間に置き換えると、経営者は数年後を見据えて社員が増えた時のデスクスペースがほしいと思っているのに、社員はもっと打ち合わせスペースを増やしてほしいと思っていたりするんです。この認識の乖離が、事業における色々な失敗を起こすことになったりもします。

そのため、20~30人くらいのこれからの成長を大きく掲げている会社では、ワークショップをすることが多いですね。経営者と社員のコミュニケーションがはかれて、相互理解が深まるし、行動指針ができる。ここから出てきた色々な「いいね」を元に空間を作ると、そこから次々にいいアウトプットが出てくる。それが積み重なると、組織の文化になって、次への成長につながっていくんです。

ベンチャー体温計とは?

野田氏:経営者・社員がそれぞれの考えを可視化するために「ベンチャー体温計」というものを作りました。

大塚氏:ワークショップをやるにしても、そこで働く人たちがどういう温度感で会社をとらえているかがわからないと、ワークショップをやる意味が薄れてしまいます。そこで、まずは「ベンチャー体温計をやってみますか?」と促して、認識の下地をならしてからワークショップを行います。

「会社は家族の延長にあると思う」などの4つの軸で現実と理想のマップを作り、そこから、その会社の現状や未来像などを把握して、オフィス作りに活用します。

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弊社の場合は、偶発的にイノベーションを生み出しやすくするため、社員が雑談をしやすい空間にしています。フロアの中心にデスクをまとめて、そのまわりに打ち合わせスペースを配置しているのですが、壁は設けず、すべてがオープンになっています。

すると、誰がどこでどんな打ち合わせをしているのかがすぐにわかりますし、ただの世間話からまじめな仕事の話まで、色々な話をしやすくなります。社員同士のコミュニケーションも深まりますし、結果的に色々な場所で偶発的にビジネスのアイデアが生まれる期待ができるんですね。

空間作りにおける必要な構成要素

野田氏:「空間作りにおける必要な構成要素」には、大切な6つがあるといわれています。私たちが特に大事だなと思うのが、「明確なビジョンと視座」「ネットワーク密度の高さ」、「組織における遊びの存在」です。

オフィス作りの話の中で、やはり会社の組織作りなどのソフト面の話を無視することはできないんですよね。

小林:最近はオープンにする会社が増えていると思うんです。うちも仕切りがないオフィスになっていて、良くも悪くも色々なことを共有できるようになっているんですが、オープンとクローズドの部分のバランスってどれくらいがいい、などの目安はありますか?

野田氏:オフィスの中での情報共有を、どこまでにするのかというのが、ひとつのポイントだと思います。打ち合わせをしている風景を見せることも、その内容を共有することもいいと思います。しかし、その時点で止まってしまい、イノベーションにつながらない場合もあるんです。

最近では、このイベントのように社外の人を招いて、新しい情報を提供してもらうことに注目している会社もあります。社外の人と交わることで、何かイノベーションが生まれるかもしれないということですね。

僕のお客さんにも、移転の際に外部とのコミュニケーションをとれる場所をあえて作ったことで、売り上げアップにつながった会社さんがいますね。社員さんも増えて手狭になったということで、レイアウト変更のご依頼をいただいています。

小林:反対に、オープンにしたけど、やっぱりクローズドにしたいっていうお客さんはいないんですか?

大塚氏:クローズドにしたいっていうご希望よりも、防音とか家具とかを増やしたいっていうお客様は増えていますね。オープンスペースにして、情報共有しやすくなった反面、営業の電話がしにくい、集中できるスペースがほしいなどの新しいニーズが生まれてきたので。

野田氏:オフィス移転といえば、ほとんどが拡張移転です。中には、「クローズドな会議室を作ったけど、全然使っていないんだよね」という声も聞きますね。なので、その会社の文化によって、クローズドの必要性が変わるんだと思います。ちなみに、僕たちの場合は、クローズドな会議室を途中で集中できる部屋に変えるなどのチューニングも承っています。

BUTAIオフィスの制作秘話

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小林:実は、BUTAIもヒトカラメディアさんに設計をお願いしたんです。その時の条件が「安くて、早くオープンができて、天井をいじらなくていい」っていうものだったんです。その結果、この場所が見つかって、床を替えるだけで済んだんですよね。

野田氏:以前も小林さんのオフィス作りのお手伝いをしていて、BUTAIは3回目のお付き合いです。「居抜きでコンクリートむき出しのガレージ風、いわゆる倉庫っぽいオフィスないですか?」って言われたんですけど、ベンチャー企業さんが10社いたら9社が同じことを言うんです。(笑)

実は、天井を抜くと熱効率が悪くなるんです。床をカーペットじゃなくて木とかにすると歩くたびに音がするし、硬いから足が疲れちゃうんですよね。オフィス空間としては、あまりよくないんですけど、ベンチャー企業さんからはけっこう人気なんで、探すのが大変なんですよ。

なので、オフィスとして快適とは言いにくくても、こういったオシャレな空間だと、生産性が高まるのかもしれないっていうのがありますね。

オフィスを地方に持つということ

小林:リモートやテレワークが増えてきていますが、それを踏まえたオフィス戦略とかはあるんですか?

大塚氏:BtoB向けでサービスを展開している会社さんがいるんですが、そこはリモートワークの拠点とオフィスをネットワークでつないで、テレビ会議以外でも常にコミュニケーションがしやすい環境を採用されています。他にも、カスタマー部門だけを切り離して、地方に拠点を持つ企業さんが増えていますね。

野田氏:実際に、機能を地方に移したからということで、縮小移転される会社さんもいます。これからの大きな社会問題に、「教育」「介護」があると思うんです。子どもを育てながら、親を介護して、さらに仕事をするとなると、出社するのはあまり現実的ではないですよね?なので、リモートワークは今度も増えていくと思います。

大塚氏:僕たちとしては、縮小移転でも、地方とのコミュニケーションをしっかり取れるように設計して、事業を伸ばすサポートをしていくだけですね。

事例:NTTコミュニケーションズ

大塚氏:最後に、僕たちが手掛けた事例をひとつご紹介させていただきます。

NTTコミュニケーションズさんのオフィスには、開発拠点として使われている「ソフトウェアエンジニア用の出島」って呼ばれるものがあって、こちらのお手伝いをさせていただいたことがあります。ここでは、「アジャイル式」のように「成功失敗関係なく、次々にプロダクトを生み出していこう」っていうのが目標だったんですね。なので、空間自体も「アジャイル」にして、どんどん自分たちで作り上げていくのはどうかという提案をさせていただきました。

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図面を見ていただけるとわかるように、あえてデスクがエリアを分けているラインからはみ出ています。これは、常識や規則にとらわれない新しいアイデアを考えやすいように、均一じゃない動きができるような配置を意識しているからなんですね。

野田氏:NTTコミュニケーションズさんは元々持っているアセットの中で事業拡大をしてきたという背景もあり、活発に開発が行われる環境ではなかったようです。しかし最近では、ソフトウェア面を強化していきたいという会社の方針もあり、都内にある複数の拠点において「自分たちで開発をしたい」と思うメンバーが増えてきたそう。そんな様子をみて、ある事業部長の方が「面白いからやってみよう!」と後ろ盾になってくださったんです。

そこから話がどんどん進んでいって、NTTコミュニケーションズはオープンコミュニケーションの場所を持っていることを社内外に向けて発信していこうということで、我々がお手伝いをすることになりました。

最後に

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対談が終わると、野田さんからの差し入れ「フローズンフルーツ『HenoHeno』」が登場し、会場のみなさんと質問コーナーを含めた歓談タイムに突入。それぞれが持ち込んだ疑問や質問、相談に花が咲いている様子を見て、今回のセミナーの中でお話されていた「新しい人が集まり・イノベーションが生まれる会社」に、BUTAIもしっかりと仲間入りしているのだと思いました。

イベントに参加してくださった皆様、ありがとうございました!

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BUTAIでのイベントは12月分まで開催が確定しており、是非多くの方に足を運んでいただきたいと思っています。

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