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THE FIRST SLAM DUNKの面白さ分析してみた

先週、井上雄彦原作脚本の表題の映画を観に行ってきた。

個人的には、非常に見応えのある作品であったが、見る人によって感想は低評価に変わるのではないかと思う。

そこで、どの部分が面白くしているか、どの要素が低評価になりうるかを記していきたい。

アニメの問題を克服したリアルなプレー表現

まず、私は普段バスケットを観戦するため、リアルなバスケットの動きが表現されていたことが、高評価の大きな要因になる。

これはおそらく実際の人間がバスケットをプレーして、それをCG加工してアニメのキャラクターに当てこんでいる。昔では実現できなかった映像技術が使用されている。

以前のTVアニメだと動きがカクカクしていて、実際の躍動感が失われていたが、その問題点が払拭されており、バスケのダイナミックさがあった。

したがって、ドラマの方に興味がある人にとっては、バスケットのリアルな表現にこだわった点は、高評価のポイントにはならないのではないかと思う。

特に湘北のプレーヤーがどう山王相手を出し抜くかという戦術面が非常に分かりやすく、リアルに表現されていた点は、当時の静止画の漫画では十分理解できていなかった事実が、目の前で繰り広げられていて感心した。

ただ、バスケット経験があったり、バスケ観戦の経験が無い人にとっては、戦術などの面白さが伝わらない理解ができないと思う。

どこにフォーカスしているか

映画ではガードの宮城リョータにフォーカスを当てていた。特に漫画アニメにはなかった、沖縄にいた頃の宮城がドラマの中心として描かれていた。

Bリーグでは、都道府県別に言うと沖縄県のファンが非常に多い。特に最近は最新の10,000人規模アリーナが設営され、他地域では4000人ほどの観客数に対し、8000人規模の観客動員を記録するなど、人気に拍車がかかっている。

したがってマーケットを意識して、沖縄を舞台にした方がより多くの興行収入が見込めると考えて設定をしたと考える。

それとポイントガードで低身長な宮城リョータ選手にフォーカスを当てた点も意図があると考える。

日本には桜木花道のような、身長190近くあり運動神経に優れている選手は1%もいない。むしろ小さいが素早く動ける選手は、数多く選手層にはいる。

より身近な選手と映画で奮闘する宮城リョータの姿を重ねて感情移入できるように、ドラマの対象を主役の桜木にしなかったのだろう。

2時間という枠ではドラマを表現し切れなかった

少しネタバレにはなるが、宮城リョータのドラマが前半で、後半山王戦でのリアルなプレー表現が、面白さの2つの要因である。

山王戦では、プレーと同時に各々の湘北の選手の過去が回想風に描かれていた。ただ、よく整理してキャラクターが描き分けられていたが、回想部分などはぶつ切りの歯切れの悪さを感じる人はいると思う。

特にスラムダンクのストーリーを知らない人には、あちこち話が飛んで、理解不能に陥ると考える。

プレーのダイナミックさ戦術の面白さに興味のある私にとっては、湘北の各選手の回想ドラマはあくまでアクセントであり、上手くキャラ分けがされていたと思うが、

逆にプレーに重点を置かず、各選手のドラマに感銘を受けていた読者にとっては、各選手のドラマが浅く歯切れが悪いし、宮城リョータのドラマもありきたりな悲劇に思える人も少なからずいると思う。

時代性を意識した表現

もう一つは現代日本バスケを意識した表現があったことも、バスケ経験者からすると評価に挙げたい。

宮城が体の後ろからパスをすることに対し、赤木が「そんなカッコつけたパスでは無く、基本のチェストパスをしろ」と非難したシーン。昔のアニメはこういった「基本に忠実であれ」というような表現を肯定的に多数描かれていたが、

映画では宮城が「片手のバックパスの方が、相手の手をかわせるし、素早くパスできる」と言って反論して、赤木を納得させていた。

一見、カッコ付けに見えるプレーが、合理的なプレーだったりすることは、現代バスケでは当たり前になっている。
したがって、基本に忠実であれより、カッコ付けでもより効果的なプレーを肯定的に描いている点は、現代バスケを上手く汲み取った表現に思えた。

まとめ

今回はCGアニメの可能性を感じられたのはよかった。当時のアニメではバスケットのリアルな躍動感が絵の稚拙さもあってか不満が大きかったが、CGだと動きのダイナミックさを表現したい映画では、打ってつけの技術だと思う。

当然のことではあるが、沖縄のガードという、焦点を誰に当てるかにも、興行収入を意識した工夫があるのも、作者の想いだけで無く観客の立場に立った話の組み立て方があるのも新しい視点だった。

最後のシーンは無音になるが、大きな音をバンバン出すより逆に真に迫る表現だったのも、数ある映画の中では新しいクライマックスのあり方と思う。

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