吉原公園

春の訪れをみんなは何で感じるのだろうか、暖かさや色鮮やかな花、言語化できない、なんだか鼻の奥まで暖かくなるような春のにおい。はたまた、花粉。様々なもので人は春を感じる。わたしは秋生まれだが、春が好きだ。
買ったばかりのランドセルを背負う小学生、ぶかぶかの制服を着る学生。お花見のためにブルーシートを敷く人。
なれない新生活にあたふたする人もいれば、すっかり慣れ切った生活に、また春が来たのかと心の隅に考える人もいる。
そんな、いろんな感情が交差する春が、私は好きだ。
お正月になると人は「新年」、その年をよくしてやるぞと言わんばかりに意気込む。しかし、私は、春が訪れるたびに、その年の始まりを感じる。
春は美しい、春の木漏れ日、におい、色彩、すべてが、すべてが好きだ。
あたたかい街中を、愛犬と散歩することが好きだった。愛犬は、さまざまな花に体を向け、不思議そうに笑う。笑っているように見える。
きれいな、散った桜を愛犬が拾い食いしようとする、それを止める。そんな時、くりーむ色の愛犬の頭に桜の花びらが落ちる。愛くるしくて、一人で笑う。あなたは、その桜に好かれたんだね。桜に好かれてしまうわが子がいとおしい。
そんな、そんな愛おしい季節だ。
私は今まで、一番春を感じる瞬間は「吉原」だった。吉原公園に咲き乱れる、美しい桜。あの桜は、いつからあそこにいるのだろうか。
出勤するたびに、タクシーを降りると、まず桜を見る、そして 店に入る。
あの街で、あの村で、誇らしく咲き誇る桜は、まるで私たちに「強く生きろ、あなたは今日も美しいのだから」なんて語り掛けてくれるように見えるのだ。
もう今年は、吉原公園の桜を見れないのだろうか。私は一度、酔っぱらって、男性の友人と夜中の吉原公園へ行ったことがある。
二人でブランコを漕いだり、トイレに行ったり。ただ、酒のせいで、座っているだけで楽しくて、なんだか愉快だった。
今年は、もう一度、夜中の吉原公園で花見でもしようか。日中はひやかしだと思われる。
夜桜は、きれいだろうか。私は、大好きな吉原で美しく咲く桜を見ながら、ビールでも飲みたい
その街のすべてに、愛情を注ぎながら。

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