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「いち早く」

昭和の時代は、とにかく競争社会で、他者との比較の中で、いかにして抜きん出るかが大事にされていたような気がします。今ではおそらくそんなことはしないのでしょうが、定期テストの点数に応じて、教室で座る席が決められるなどということもありました。また、他者に遅れを取ることなく、可能なら先んじて行うことも推奨されました。競争に勝ち抜くこと、他の人より先に動くこと、それが美徳だった時代でした。

「いち早く」という副詞があります。誰よりも早く、先んじて、という意味です。昭和の美徳を象徴する副詞かもしれません。
「いち早く動きを察知して、事前に準備をしておいたから慌てずに済んだ。」
「いち早く流行を取り入れて、秋冬のトレンドファッションを身に纏ったアイドルの◯◯さん」
こんなふうに、「いち早く」は、何かを他より早く実践することで、その結果、プラスのことが起きる場合に使われると思っていました。

ところが、今朝のNHK九州沖縄のニュースで、「いち早く感染が拡大した沖縄県では…」という表現を聞きました。これは新しい使われ方なのか、それとも誤用なのか。少し検索をしてみましたが、このような用法はまだ定着はしていないようです。みなさんの語感はいかがでしょう。

ことばの意味の変化には、それを支える文化的な背景がつきまといます。昭和の競争社会の中での「いち早く」から、令和の社会での「いち早く」…一番先に何かをすることへの評価的な感情の違いが、この副詞の意味用法に変化をもたらしつつあるのかもしれません。