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果ての海峡、プンタアレナスを旅する

チリの最南端、プンタアレナスに着いた。
首都サンティアゴからおよそ3時間。この空港に、Wi-Fiはない。タクシーの客寄せなんて久々な感覚だったが、どこのタクシーも値段は一律、値引きはしなさそうだったので、熊のような青年に頼むことにした。
グレーの水平線に、マゼラン海峡が見えてきた。 

熊の青年は、車内で明るくよく話しかけてくる。コパアメリカが6月にあり、チリと日本が同グループなことを教えてくれた。互いに顔を思い出しながら応援することになると思うと面白い。 

少し、街を歩いてみた。

サラ・ブラウン宮殿

街の中心、マゼランの像があるムニョス・ガメロ広場に面した宮殿(というか豪華な邸宅)。新古典主義の美しい建築からは、当時の上流階級の暮らしを伺えた。

ここの主人であるサラ・ブラウンは、南極横断探検隊のアーネスト・シャクルトンの救出を支援したことでも知られている。この人がいなかったらシャクルトンは助からなかったかもしれないと思うと、たまらないロマンを感じた。

アーネスト・シャクルトンという人物

『エンデュアランス号漂流記』という本を読んだことがある。南極大陸初横断を目指したが、途中氷塊により船が壊れ、漂流にあう。それでも22人の乗組員全員が、22ヶ月もの期間、南極圏を生き抜き、ただのひとりも死者を出さなかったという伝説的な実話を記したものである。
その際のリーダーで船長が、アーネスト・シャクルトンだ。

その彼の様子の絵や写真が、サラ・ブラウン宮殿に隣接したカフェ「シャクルトンバー」に展示されていた。 

この本も、映画も見たことがあったので、感無量の空間だった。

全ての旅人にオススメしたい場所であるし、冒険家の聖地でもあるとも感じた。100年以上前の大冒険、イギリスから南極へ、木造の船で旅に出て、大英帝国の威厳の中、世界初の南極横断という偉業よりも全員の命を救ったシャクルトン。

冒険のロマンが、彼の人生が、この場所から伝わった。

激安の殿堂ソナ・フランカ

街中からは少し離れているが、様々なショップが複合されているモール(免税店街)のソナ・フランカ(Zonfranka)にぜひ行って欲しい。ここではたくさんのアウトドアブランドが、他では買えない安さで買うことができる。

自分はここのモールでpatagoniaのフリースを日本円の定価の半額ほどで購入した。超あったかいし、パタゴニアで買ったPatagoniaということで気持ちも倍増。ノースフェイスやアークテリクス、日本では見ないブランドもたくさんあった。もちろん全て新品。ぜひプンタアレナスに訪れたらアウトドア用品の買い足しも考えて欲しい。タクシーで街中から3000チリペソ(=500円程度)

ホテル モンテカルロ

椎名誠の著書でも有名なホテルが、このホテルモンテカルロである。設備はお世辞にも新しくはないが、ギシギシと軋む床や外れる扉や弱いシャワーには、100年以上続く老舗ホテルの趣を感じる。 

webサイトもなく予約は電話でスペイン語のみ。Wi-Fiやバスタブ、朝食などもあった。

せっかくここまで来たからには、ここに宿泊するのを目的にしてもいいと思う。椎名誠の『パタゴニア』を読んでから訪れてほしい。

ラム肉とカニカニカニ

シーフードたっぷりのスープ、カニ(セントージャ)も美味いけど日本でも食べれる。「プンタアレナス ごはん」とかでググれば多分出てくる。でも、これはあまりないと思う。
カニたっぷりのアメリケーヌソース(カニの殻とかいろいろのソース)をたっぷりかけ、パスタのようなもので、大量のカニを巻いて食らう。ああ…また食べたい。

あとこっちのラム肉はまったく癖がない。美味い。

旅への物語と、ロマン

ネットを見てみると、プンタアレナスは特に見所はない。というものをよく見る。マゼラン像がいて、ペンギン見れる、くらいのものだと。 

しかし自分にとっては、「シャクルトンが命を救われた場所」であり、「尊敬する椎名誠が世界一好きだという街」である。彼らの冒険の物語の続きに自分を重ねて旅ができている場所が、このプンタアレナスなのだ。

世界は一冊の本で、旅をしないということは、物語の中の1ページ目を読んだにすぎないという言葉を聞いたことがある。

ただ旅をするだけではなく、そこにどんな物事をひも付けられるか。そこに行きたい理由の原体験はなにか。旅をすることに、どんなロマンと物語を見つけられるかどうか。ガイドブックじゃ見つからない、誰かの人生に重ねた自分だけの大切な旅を見つけられるかどうか。 

マゼラン像の見る、世界史を変えたビーグル海峡を見ながらそんなことを考えていた。この場所には、ロマンが詰まっている。僕の目には、見たことのない海鳥がうつっていた。

桟橋から海岸に戻り高台に登ると、野良犬が静かに寝息をたてていた。さて、トレッキングの準備をしなければ。


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パッキングが得意というかスキです。