若き日に旅をせずば、老いての日になにを語る
地中海に浮かぶバレアレス諸島
豊かな自然と歴史の深い、マヨルカ島の海を歩いている。
旅をしながら、旅を思い出す
青春18切符で福岡から北海道まで日本を縦断した20歳の夏。鎌倉から江ノ島まで同じように、裸足で海沿いを歩いた。人生はじめての旅。
山岳部時代に使っていた60リットルのザックに衣食住を詰め込んで歩いた。すごく重かった。
福岡にひとりで出て数ヶ月。
友達なんてほとんどいなくて、何かから逃げるように旅に出た。旅を通してたくさんの人に助けてもらい、旅の素晴らしさを知った。
あの時、なぜ海を歩こうとしたのかはわからない。先に江ノ島があることも知らなかった。それでも、歩いたあの蒸し暑い夏は、多分一生忘れない。
その20歳の旅を、5年後の25歳のいま、マヨルカ島で思い出した。
歩いた先には、大きな大きな教会があった。
あの時の旅がこうして繋がっていく
人は体験して、きっと少しずつ分厚くなっていく。
あの時のあの場所のあの味、あの匂い、あの音楽。
その体験をひとつずつ増やしていくことが、旅なのかもしれない。昔に旅した点が今の旅の点に繋がる瞬間が、途方もなく嬉しい。
若き日に旅をせずば、老いての日になにを語る
小説家の開高健は、ゲーテの言葉を引用しこう述べた。
若い間にたくさん旅をして、たくさんの体験を繋いでいく。体力のあるうちに、分厚くなって、それをつまみに仲間と懐かしく語り合う。
この言葉は、大好きな言葉のひとつだ。
海沿いのテラスで、ビールを飲んだ。ここのイカスミパエリアが、世界一美味かった。
どれだけ旅をしても、世界なんて全然知らない。きっと旅を続けても、世界は途方もなく大きい。世界一なんて恥ずかしい。
それでも自分の世界の中では、ここが一番美味いのだ。そしてその自分の世界は今日も、少しずつ広がっている。
きっといつか、この日の旅の点が繋がる日が来るんだろうな。
パッキングが得意というかスキです。