「先輩、ここって蓄音機がないんですね？」
ふとテオがつぶやくようにダニエルに聞いた。
「当然でしょう？人の言葉プラス音楽なんて集中できませんよ、俺が」
テオは腰かけていた椅子から落ちそうになった。
「客への配慮はないのかよ！？」
「俺と貴方の喫茶店なんですよ？俺がダメならダメなんです。
だから喫茶店の名前も変えたいのです」
「先輩とオレのって…。
まあそれはともかくタシトコ……。え、あれを変えるんですか？そんな簡単に変えちゃっていいんですか？」
「もちろんです。しかしまあ一回きりでしょうね。何故変えたいか聞きたいですか？もちろんテオなら！聞きたいですよね？」
「まあ一応聞いてはおきたいですね。どうせくだらない理由でしょうけど」
呆れたテオに対してダニエルは頷いてからこう言った。
「単に変だなって思ったからですよ」
「……そっちかよ！」
テオはまた椅子から落ちそうになった。
「なので変えます。でも手続きが面倒でしてね…。しかも代わりにテオに行ってもらうことができないので、７日間、休業しようかと」
「そんなたかが変えるだけで７日間も…！？」
「良いでしょう？その代わり、そのあとはしばらく夜中まで働いてくださいね」
「うわあ…。夜中までは疲れるな…」
「そして俺とテオで愛の巣をここで作って数日間、アツアツな日々を過ごすんですよ！覚悟はよろしいですか？？」
「誰がやるかぁ！！」
弟子兼後輩のテオはカウンターを叩いてから掃除を始めたのであった。

2023.09.28のテオ誕記念。