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爆損人間観察集 (随時更新?)

こんにちは、日本爆損防止委員会です。

当会は、ここ数年でにわかに盛り上がりを見せる株・暗号資産・FX等の金融取引により、取り返しのつかない爆損をしてしまう人を無くすことを目的とし、発信活動をしています。

どういった人間が、爆損をしてしまうのでしょうか

どうやったら、爆損人間とは無縁の人生を送れるのでしょうか

本稿では、爆損人間が陥りがちな行動・心理パターンを網羅することで、反面教師にすることを目指します


爆損ムーブ集

1. 特定の成功者を盲信する

「トラスト、アフロ!」2021年、FTX崩壊前、そう公衆の面前で憚らなかった人たちは多かった。個別の成功例を見て、彼に自分を委ねてしまう。成功と失敗は紙一重であり、当人の努力と当人が置かれた幸運がどの程度彼の成功に貢献したかは、少なくとも外部からは絶対にわからない。なのに、「この人はすごい!」「この人なら信じられる!」と特定の成功者のシンパになってしまう。アフロと呼ばれ親しまれたFTX創業者、Sam Bankman-Friedは、結局のところ詐欺師だった

2. 「あのかっこいい人たちのグループに入りたい」

アメリカのMusical「ハミルトン」には、"Room where it happens"という名曲がある。登場人物のAaron Burrは合衆国建国の父の1人だが、同様に独立戦争で中心的な役割を果たしたAlexander Hamiltonと、独立戦争後にフランスから帰国したThomas Jefferson、そしてJames Madisonが秘密会談を行う夕食会に招待されなかった。その場面でAaron Burrが歌う"Room where it happens"は、

I wanna be in the room where it happens…

"Room where it happens" (Hamilton)

というフレーズが印象的だ。彼は、これからアメリカの未来を作る、そのクールな仲間に入りたかったのだ。独立戦争で英雄となり、アメリカ初の財務大臣になるHamiltonらと。Aaron BurrとAlexander Hamiltonの確執は、結局Aaron BurrがAlexander Hamiltonを銃殺するまで続いた

世の中にはとんでもないお金持ちがいる。そういった人たちだけが属する「クールな」グループがある。そこに入りたい、世間的には十分すぎるお金持ちが、資産の桁を増やそうと詐欺に走り、全てを失う様子がベストセラー"Psychology of Money"に描かれている。資産比較ゲームはキリがない地獄で人を狂わせる

3. 成功することと、成功し続けることを同一視している

"Psychology of Money"には、株式トレーダーだったリバモアの話も記されている。彼は、世界恐慌の先駆けとなった大暴落にショートで大成功した。しかし、その4年後、自信に満ちた彼は、株式市場で大きな賭けに出て全財産を失ってしまった

成功と失敗は紙一重であり、仮に大成功したとしてもそこに再現性があるかどうかを判定するのは実際のところ非常に難しい。ただし、本人や周りは、そこに再現性を見出し、過信し、熱狂してしまう。そして、結局失ってしまう。これはHot hand Fallacyと呼ばれる認知バイアスの一種だと考えられる。要は少数のサンプルデータから未来を予測しようとする脳のバグである

4. 悲観主義の誘惑に負けている

悲観論は、楽観論より賢く、より起こりそうに感じる。これは、人間の認知バイアスの1つである。人間が地球上でここまでで繁栄きたのは、危機を察知し回避する賢さがあったからである。そのため、人間は楽観論を笑いものにし、悲観論に浸りたがる

よくトレードの世界では「売りは命まで」と言う。映画の"The Big Short"のように売りでエントリーし大爆益を出したいという欲求はしばしば見られる。これは、「より確実な」悲観論を信じている自分カッケー、楽観的な周りの奴らより賢いわぁという自己陶酔感から来ていると思われる。ショートを成功させることで、お金だけでなく自己肯定感も得ようとしているのである。実際は、悲観主義の誘惑に負けているだけで現実が見えていないので、そういうショートポジションは綺麗に狩られていく

5. テールリスクがもたらすインパクトを過小評価している

世の中はテールイベントでできている。大地震は滅多に起きないが、起きたらそれだけで人生めちゃめちゃになる。パンデミックも滅多に起きないが、起きたら世界が壊滅の危機に陥る。そうした出来事を乗り越えて、現在の社会が成り立っている

日常はテールイベントの間の束の間の平穏に過ぎない。トレードでは、例えば指数のオプション売りは勝率が高い。Out-of-moneyのFarのoptionを売れば、95%で勝てるかもしれない。ただ、5%で起こる暴騰・暴落で全てを失う。「計算上はまぁ大丈夫」とロシアンルーレットに参加してはいけない。起きてしまったときに取り返しがつかないからで、しかもテールイベントはいつか必ず起こるからだ

6. WealthとRichの違いがわかっていない

お金持ちになれば、自分でも誰かに認められる。そのために、自分がお金持ちであることを誰にでもわかる形で見せつけなければならない。高級車を買い、豪邸に住み、ブランド品を身につけよう…

これはRich(物質的に豊かであるさま)ではあるかもしれないが、Wealth(富)ではない。Richな人からわかることは、それだけの金が財布から流出しているということだ。それがどれだけ持続可能なのか、判断するのは他人ではできない。大金持ちの破産の例を見るにつけ、本人にもできていないことが実に多いようだ。お金と一生付き合っていく以上、Wealthを蓄えなければならない。

米国の人気歌手、リアーナは、買い物をし過ぎて破産しそうになり、自分のファイナンシャルプランナーを訴えたという。高額宝くじに当たった人もそうだが、特に急に資産が増えたとき、脳はバグりやすいようだ

7. 自分が参加しているゲームを理解していない

バブルになると、自分がどういうゲームをしているかよくわかっていない市場参加者が増える。

???「とりあえずXRPってのを買えばええの?」

彼らは養分と呼ばれ、ゲームを理解している市場参加者に徹底的に搾取される運命にある。

株の世界でも、仮に有名なトレーダーが「この銘柄がオススメ!」と言っていたとしても、彼はデイトレーダーでボラティリティしか見ていないかもしれない。彼の意見は、例えば新NISAで長期積立をしている投資家にとってはなんの役にも立たない。参加しているゲームが違うからだ

8. 「起こってほしいこと」と「客観的な事実」をごっちゃにしている

「このチャートはダブルトップなので、ここでエントリーした。この位置までは落ちるはずだ」というのは、「起こってほしいこと」であって、「客観的な事実」ではない。客観的な事実というのは、市場参加者であれば「自分は市場をコントロールできない」ということだ

市場で仮説通り「起こってほしいこと」が起きなかったとき、その事実を受け入れて自分がコントロールできることに集中しよう。つまり、自分のポジションを整理することだ

9. 過去の自分の囚人になっている

生物学を専攻したからといって、生物学者になったり医薬品業界で働かないといけないわけではない。どれだけ勉強したとしても、それがサンクコストになってしまったら、刻々と変わっていく世の中でチャンスを掴むことができず、時代遅れの仕事しかできない人生を送るしかない

また、「自分は不幸な生い立ちだから…」と、宝くじを多めに買ったり、レバレッジをかけてちょっと無理なポジションを持ったりする。自分は平均よりも今まで不幸だったのだから、今回のこの勝負は幸運の女神様が微笑んでくれるはず、そうでないと人生不公平すぎる

…こういう考え方をする人は存外にいる。まず、貴方が今までどういう不幸な人生を送っていても、貴方は今日まだ生きていて、つまり、今日という日を生きたくても生きれなかった人の未来を生きている。貴方にはまだ自分の人生でコントロールできることがある。これは素晴らしい幸運である。そして、仮に今まで真に貴方の人生が平均より不幸であったとしても、これから平均に回帰するはずというのは残念ながら幻想 (Gambler's Fallacyという認知バイアス)で、ましてそれが今この勝負で起こるはずというのは、根拠のない楽観に過ぎない。

人生は確かに運によって左右されるが、自分の人生を運に委ねるのは全く違う話だ

出典


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