見出し画像

コロナは日本経済のパンドラの箱を開けた!それは格差拡大という怪物!

「日本化におびえる世界・ポストコロナの経済の罠」太田康夫著・日本経済新聞出版2021年2月発行

著者は1959年生まれ、東大卒業後、日経新聞社入社、金融部、チューリッヒ支局、経済部を経て、現在日経新聞編集委員。「日本銀行・失敗の本質」などの著書がある。

著者は、コロナ危機の中、欧米など世界経済全体が「日本化」を迎えている。唯一、中国がその流れから外れ、GDPで米国を抜き、覇権構図の転機が近づいていると主張する。

「日本化」とは、経済の活力がなくなり、稚拙な経済政策で財政が悪化し、金融緩和、景気対策も効果が無く、ズルズルとゼロ金利状態が続く。

現在、金利メカニズムによる企業、産業淘汰が起きず、ゾンビ企業が生き延び、新たな成長の芽も見えない。体力消耗、資本劣化、金融危機の亡霊のみが近づいている。

1979年、社会学者エズラ・ヴォーゲル氏「ジャパンアズナンバーワン」の著書が出た。輝いていた時代からバブル崩壊、90年代の「失われた20年」、低成長、デフレ、財政悪化、政府債務と日銀バランスシート膨張が課題となっている。

世界経済は、欧州危機とリーマンショックを乗り越え、経済成長へ復帰かと一時思われた。

しかし実態は、ドイツは成長停滞と金融危機の影が忍び寄る。日本は、アベノミクスに錯覚、成長戦略に失敗し、「日本化」の深化が進む。一方でテイクオフできないアジア・新興国がいる。

著者は「脱日本化」の戦略を提示する。

一つに必要なのは長期戦略。いつまでも淘汰回避は続かない。ゾンビ化する産業、日本から脱皮し、イノベーション、創造性の確保。日本化とはゾンビ化である。

二つに、かつての日本の良さを再確認すべきと。競争心を求め、国益とは何かを問い、コミュニケーション、多様性を重視する。

三つに、価値観の転換。従来の市場原理主義、新自由主義から脱皮し、成長から分配へ、環境重視、持続可能な社会作りへの転換である。

本を読んで感じたのは新聞記者らしいこと。現状分析は最もである。記者らしく現状の危機感を煽る。しかし結論、対策は、当たり前すぎて目新しさはない。全員の意見を足して二で割る論理である。

今後、必要なのはコペルニクス的発想の転換ではないか?中途半端な理屈の並び替えでは問題解決はできない。それほど問題は深化している。

コロナは政治、行政、経済の信頼を失わせた。パンドラの箱を開けた。自己責任でなく、働くすべての人が報わられる社会。貧困の連鎖と格差社会をストップさせること。これが必要である。

必要なのは金融政策、政策手段の優劣でなく、資本主義の本質、人間の存在そのものまで問う本質的転換ではないか?

この記事が参加している募集

スキしてみて

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?