兵藤恵昭

山登り・温泉・博徒の墓巡りが趣味。博徒史に興味を持つ団塊世代。Noteブログは読書記録…

兵藤恵昭

山登り・温泉・博徒の墓巡りが趣味。博徒史に興味を持つ団塊世代。Noteブログは読書記録ブログです。 特定社会保険労務士・兵藤社会保険労務士事務所。 「博徒ブログ」も開設。下記URLクリックして下さい。https://blog.goo.ne.jp/shigeaki0303

最近の記事

生成AIは日本をどう変えるか?「デジタル社会の罠」

「デジタル社会の罠・生成AIは日本をどう変えるか?」西垣通著・毎日新聞出版2023年11月発行 著者は1948年生まれ、日立製作所を経て、東大大学院教授。「超デジタル世界」岩波新書等の著書がある。情報学の第一人者である。 生成AIの賛否が問われ、社会にどのような影響を与えるか話題となっている。本書はAIが日本にどう影響するかを予想する本ではない。生成AIは「汎用知」つまり知性を持つ機械になるのか?を問う科学論である。 本書は、「科学技術と人間」「読書日記」など、2021

    • 「賃金の日本史」

      「賃金の日本史・仕事と暮らしの1500年」高島正憲著・吉川弘文館2023年9月発行 著者は1974年生まれ、日本銀行金融研究所を経て、関西学院大学教授。専門は経済学、「経済成長の日本史」などの著書がある。 19世紀前半頃、江戸の大工の生活の記述が「文政年間漫録」に載っている。 1年で60日休み294日働く大工。日当は銀4匁2分、飯米料(一種の手当)1匁2分、現在価値で合計10,800円である。年収は銀1貫587匁6分(310万円)夫婦子供の3人で、支出は飯米代銀354匁

      • 円の実力とはなにか?為替の通貨戦略

        「円の実力・為替変動と日本企業の通貨戦略」佐藤清隆著・慶應義塾大学出版会2023年12月発行 著者は1968年生まれ、横浜国立大学教授、国際社会科学研究院長である。 本書は円の実力とは何か?円の国際化は進んだのか?日本企業の円建て決済はなぜ進まないのか?を問う。そこには日本経済の実力の低下、日本企業の競争力の低下が根底にある。それを証明するのが実質実効為替レートの減価である。 実質実効為替レートは通貨の購買力の強さを示す。この減価は物価水準の国内海外の差を表し、経済成長率

        • 東アジア反日武装戦線の直接行動

          「直接行動の想像力・社会運動史研究」松井隆著・新曜社2023年10月発行 著者は1970年生まれ、武蔵大学社会学部教員である。 先日、東アジア反日武装戦線さそり所属の桐島聡が死亡した。40年以上逃亡生活の末、がんによる死去である。本書の特集「直接行動の隘路・東アジア反日武装戦線をめぐって」は、彼らの行動に対する歴史的、思想的分析である。 著者は三菱重工爆破事件が起きた1974年8月の3年前に生まれた。事件は著者にとって歴史的事実に過ぎない。ゆえに客観的かもしれない。著者

        生成AIは日本をどう変えるか?「デジタル社会の罠」

          西郷を支えた言葉「西郷隆盛手抄言志録」

          超訳言志録・西郷隆盛を支えた101の言葉」・濱田浩一郎著・すばる舎2017年発行 著者は1983年生まれ、歴史学者、作家、評論家。大阪観光学研究所客員研究員。 本書は西郷隆盛が生涯愛読した佐藤一斎「言志四録」から101条を選び、書き留め手元に置き、西南戦争の戦いの中でも持ち歩いた。自決後、その行方は不明だった。 宮崎日向の旧高鍋藩主・秋月種樹が、西郷の叔父・椎原国幹の家で発見した。明治21年「西郷隆盛手抄言志録」として世に出し、明治天皇にも献上された。 西郷は最後まで

          西郷を支えた言葉「西郷隆盛手抄言志録」

          「訂正する力」東浩紀

          「訂正する力」東浩紀著・朝日新書2023年10月発行 著者は1971年生まれ、出版社「ゲンロン」創業者、現在は評論家、専門は哲学。 自民党派閥の裏金問題が騒がしい。政治とカネは今に始まった話ではない。長年なんとなく変化もなく、自民党政治は続いてきた。政治、社会を「訂正する力」が日本国民にないのだろうか? 日本人に「訂正する力」がないわけではない。しかし「訂正する力」は上から与えられるものと日本人は勘違いしている。そこには日本人特有の思想風土が影響している。 丸山眞男は

          「訂正する力」東浩紀

          グローバルインフレは財政インフレか?「グローバルインフレの深層」

          「グローバルインフレーションの深層」河野龍太郎著・慶応義塾大学出版会2023年12月発行 著者は1964年生まれ、BNPパリバ証券チーフエコノミスト。 コロナ危機後に急激なインフレが世界を襲った。そのインフレの原因の一つは先進国の大規模な財政政策、もう一つはインフレを供給ショックによる一時的なものと誤認し、中央銀行が利上げに立ち遅れたことによると著者は主張する。このインフレを「グローバルインフレーション」と呼ぶ。 その中で日本は長年デフレが続いたが、超円安の輸入価格上昇

          グローバルインフレは財政インフレか?「グローバルインフレの深層」

          トヨタはEV戦争に勝てるか?「トヨタのEV戦争」

          「トヨタのEV戦争・EVを制した国が世界の経済を支配する」中西孝樹著・講談社2023年7月発行 著者は1962年生まれ、山一証券、メルリンチ証券、モルガン証券調査部長を経て、自動車産業調査部門トップのアナリストである。 2023年豊田章男氏は社長を佐藤恒治氏に交代、新体制に移行した。トヨタは円安で好業績を維持するも、多くの課題を抱えている。 ディーラー不正車検、ダイハツ、豊田織機認可不正のガバナンス問題、EV化の遅れ、トヨタの強みだったトップ決断ワンチーム体制など、順調

          トヨタはEV戦争に勝てるか?「トヨタのEV戦争」

          「ガザとは何か・パレスチナを知るための緊急講義」

          「ガザとは何か・パレスチナを知るための緊急講義」岡真理著・大和書房2023年12月発行 著者は1960年生まれ、早稲田大学文学学院教授、京都大学名誉教授。専門は現代アラブ文学、パレスチナ問題。「ガザに地下鉄が走る日」等の著書がある。 イスラエルのガザ攻撃のニュースが話題である。新聞、メディアはテロリスト・ハマス奇襲とイスラエル軍空爆、地上戦を二項対立で語る。「暴力の連鎖、憎しみの連鎖から何も生まれないと・・」ハマスはテロリストか? ハマスはイスラーム抵抗運動を行う軍事部

          「ガザとは何か・パレスチナを知るための緊急講義」

          佐藤一斎「言志四録」を読む

          「最強の人生指南書・佐藤一斎言志四録を読む」斎藤孝・著祥伝社新書2010年6月発行 著者は1960年生まれ、明治大学教授。専門は教育学、コミュニケーション論で多くの著書を持つ。 「言志四録」は佐藤一斎が42歳~82歳までの40年間の語録をまとめたもの。言志録・言志後録・言志晩録・言志耋録の四書からなり、全体で1133条となる書籍。本書はここから100条を選び、解説する。 佐藤一斎は60歳で昌平坂学問所のトップとなる。儒学、朱子学、陽明学から荘老思想の流れの道教も修めた儒

          佐藤一斎「言志四録」を読む

          日本の財政政策は正しい?「21世紀の財政政策」

          「21世紀の財政政策・低金利、高債務下の正しい経済戦略」オリヴィエ・ブランシャール著・日経新聞出版2023年3月発行 著者はマサチューセッツ工科大学名誉教授。専門はマクロ経済学。著書に「格差と闘え」がある。本書は2023年度ベスト経済書に選ばれた。 本書は1995年以降、先進国は低金利、高債務の状態にあるという。とりわけ日本は失われた30年と言われ、インフレ目標の未達、巨大な財政赤字、GDP比250%の巨額債務に苦しむ。では日本の財政政策は失敗だったのか? 著者は、日本

          日本の財政政策は正しい?「21世紀の財政政策」

          イスラエル問題とは何か?「世界史の中のイスラエル問題」

          「世界史の中のイスラエル問題」臼杵陽著・講談社現代新書2013年1月発行 著者は1956年生まれ、日本女子大学教授。専門は現代中東政治、パレスチナ問題。 本書は、現在のイスラエル・パレスチナ紛争を世界史的視点から述べたもの。本質はヨーロッパ・キリスト教社会の歴史的差別の潮流とユダヤ民族による国民国家建設にある。対立の根拠を古代聖書学まで動員され、人為的構図が根底に存在する。 中東問題の本質は第一次大戦後のオスマン帝国戦後処理から始まる。欧州帝国主義国家の植民地政策の結果

          イスラエル問題とは何か?「世界史の中のイスラエル問題」

          ヒモ生活をするバンドマン「入門山頭火」

          「入門山頭火」町田康著・春陽堂書店2023年12月発行 著者は1962年大阪府生まれの作家。2000年「きれぎれ」で芥川賞、詩集「土間の四十八滝」で萩原朔太郎賞、「告白」で谷崎潤一郎賞を受賞。 本書は「山頭火・行乞記」「山頭火全句集」を参考に、ユニークな町田康節的「山頭火論」である。山口県実家で幼い頃の母の自殺、家業酒造業の破産、弟・二郎の自殺、妻・サキノとの離婚など、生への苦悩で放浪する。戻る場もなく、別れた妻を頼る山頭火。 泥酔で熊本市電を急停車させた後、熊本・報恩

          ヒモ生活をするバンドマン「入門山頭火」

          歴史は街道と共に「15の街道からよむ日本史」

          「15の街道からよむ日本史」安藤優一郎著・日経ビジネス人文庫2023年12月発行 著者は1965年生まれ、歴史研究者、近世政治史専門である。 街道は軍事的、政治的に利用されただけでなく、人々の経済、文化活動を支えた道である。その意味で日本の歴史の証言者である。江戸幕府は日本橋を起点として五街道を定めた。 本書は五街道以外に鎌倉街道、北国街道、伊那街道、伊勢参宮街道、熊野古道、西国街道など15街道を取り上げる。それぞれに歴史があり、人々の喜怒哀楽があった。 東海道の箱根

          歴史は街道と共に「15の街道からよむ日本史」

          日銀はお金を創造できるか?

          「中央銀行はお金を創造できるか?信用システムの貨幣史」金井雄一著・名古屋大学出版会2023年6月発行 著者は1949年生まれ、名古屋大学名誉教授。英国貨幣史、金融経済学が専門である。 日銀総裁が黒田氏から植田氏に交代した。10年にわたる安倍政権のリフレ政策、マネタリズムからの転換が問われている。本当に変換ができるだろうか?いささか疑問である。 それは日銀周辺やエコノミストの間に長きにわたり蔓延し、かつ常識化している貨幣論、金融論の基盤となっている「外生的貨幣供給論」から

          日銀はお金を創造できるか?

          「桐島聡と井上伝蔵」

          「伝蔵・困民党会計長・小説秩父事件」八木静子著・まつやま書房2022年4月発行 指名手配から48年逮捕されず、逃亡を続けた桐島聡。末期がんの最後に「桐島聡」と告白した「内田洋」彼の人生は何だったのか?どう人生を振り返っただろうか? 明治17年秩父事件の井上伝蔵を思い出した。彼は秩父事件で会計長を務めた中心人物。欠席裁判で死刑判決を受け、逃亡を続けた。北海道の野付牛町(現・北見市)で65歳、死の直前、北海道で結婚した妻・ミキに「俺は井上伝蔵」と告白した。 変名は伊藤房次郎

          「桐島聡と井上伝蔵」