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「マイナ保険証の罠」なぜ代用保険証をいくつも作るのか?

「マイナ保険証の罠」萩原博子著・文春新書2023年8月発行

著者は1954年生まれの経済ジャーナリスト。家計経済のパイオニアである。

2024年秋から現行の健康保険証は廃止される。マイナ保険証への強制的な移行の問題点はメリットよりデメリットの方が多い。結果は高齢者弱者、情報弱者の切り捨てである。

日本のデジタル化、IT政策の失敗は、利用者目線、利用者便益を無視した行政管理目線の「普及ありきの机上計画主義」の結果である。台湾、韓国は国民目線と利便性を最重視したIT化ゆえに好結果を生んでいる。

ナイナンバーそれ自体とナンバーカードの情報流出リスクは別物である。カードのICチップに情報は含まれていない。

カードを使って情報の塊であるマイナポータルに入ることによって情報流失のリスクが生まれる。情報の鍵はICチップの4桁暗証番号だけで入ることができ、なりすましが可能である。

マイナバーカードは5年ごとに自治体に出かけ、更新をしないと無効となる。つまりマイナ保険証も使えなくなる。カード紛失すれば再発行に2ケ月近く要する。現状保険証の再発行は1週間程度で可能。カードの不便さは言うまでもない。

問題は高齢者対応である。介護施設では現在、施設で保険証を預かり、職員が代理できる。今後はカードと暗証番号の保管が必要となる。暗証番号という個人情報の取り扱いは難しい。施設の94%が管理困難と回答する。在宅介護場合はカード紛失のリスクも高い。

政府は暗証番号無しのマイナカード発行を計画する。これでは紙の保険証と差はない。保険証継続する方が手間がかからない。そこにあるのは保険証廃止ありきの思考である。行政のメンツである。行政が臨機応変に併用すれば済む話である。

どう考えても、マイナ保健証の導入メリットよりデメリットの方が多い。早期に希望者のみにマイナ保険証導入に変更して、従来の保険証継続を決定すべきだろう。

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