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日本はなぜ買い負けるのか?

「買い負ける日本」坂口孝則著・幻冬舎新書2023年7月発行

著者は1978年生まれ、メーカーの原価企画、調達、購買部門に従事。現在、製造業の調達・購買コンサルティングを行う。「調達・購買の教科書」などの著書がある。

2023年、日本はGDPでドイツに抜かれ、世界第3位となることが決定した。2010年中国に抜かれ、2026年にはインドに抜かれると予想されている。日本経済低迷が20年以上続いた結果である。

本書は、コロナ危機以後、世界中で起きたサプライチェーンの混乱、木材不足、半導体不足で、日本企業は海外から材料、部品購入が困難になった。かつて中国による魚介類買い占めで、水産物の値上がりが発生した。

今回はLNGエネルギーから穀物、半導体、牛肉、人材まで広範囲である。日本の購買力低下、即ち買い負けの原因はどこにあるのか?その原因は日本産業の没落にある。結果、日本は海外から「売ってもらえない国」に成り下がった。

著者は買い負けの理由を指摘する。一つは上部構造として日本産業の没落、二つ目は下部構造として日本型システムの限界である。日本型システムとは、日本企業のピラミッド型多層構造、過度な品質追求、横並び意識による全員参加・全員納得主義の三つを挙げる。

著者は、背景的原因として日本型雇用システムを挙げる。終身雇用、年功序列、企業内組合である。それ故に処方箋として、トップダウン交渉・決断や権限と責任の明確化、人材流動化を主張する。

日本型雇用自体、すでに崩れつつある。終身雇用、年功序列を主張する経営者はほとんどいない。組合組織率は20%を切り、非組合員が主流である。原因は保守化した経営者と労働者にある。リスクを取れない企業環境、制度こそ真の原因である。

ジャパンアズナンバーワン言われた経済成長期は「明日は今日より良い日が来る」と全員が信じていた。

現在は未来が見通せない時代である。政治、経済にも、明確な戦略がない。「新しい資本主義」のスローガンも戦略なくば、絵空事に過ぎない。

過去の成功体験を捨て、根源的なビジネスモデルの構築、政治体制も含めて、出直す必要がある。一度、日本全体のガラガラポンが必要だろう。

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