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「データにのまれる経済学」・事実とは何か?

「データにのまれる経済学・薄れゆく理論信仰」前田裕之著・日本評論社2023年6月発行

著者は1963年生まれ、日経新聞経済解説部編集委員を経て、2021年独立、川村学園女子大非常勤講師。「経済学の壁・教科書の前提を問う」の著書がある。

現代の経済学は、ルーカス批判、信頼性革、因果推論の三つの手法によって、実証革命が起こり、経済学が公共政策やビジネスに役立つようになったと言われている。

ルーカス批判は、モデルは説明変数とその変数の変化率の2つで考え、合理的期待を前提として、ケインズの金融、財政政策は効果がないと批判した。

信頼性革命は、ランダム比較試験で意思決定の結果の良否を説明付けられるという一種の実証革命である。因果推論は原因と結果を証明するデータ分析理論である。

著者は、現代経済学が理論と実証とのバランスが崩れ、データ分析、実証のため、ランダム比較試験、因果推論、機械学習の目的にデータ収集に奔走していると批判する。

ランダム比較試験、因果推論、機械学習の三つの手法は、理論を実証するための仮説、方法論の一つに過ぎない。現代経済学はデータとエビデンスが研究の前提となり、データ収集に夢中となる。そしてデータ至上主義の結果、データのコンピュータ分析ですべて解決すると考える。

「客観性の落とし穴」の著者・村上靖彦もデータ、数値を異常に重視し、そこに客観性が存在するとの思考方法に疑問を発している。

アリストテレスは形而上学で、因果関係の究明が学問の根幹をなすと言う。因果関係の究明は理論と実証の双方確認で初めて成立する。データとコンピュータで解決するものではないだろう。

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