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生活の建築知識.54

おはようございます。

誰に建築を造ってもらうかは非常に大切です。
実用的なAIが登場して、さまざまな場面で利用可能な社会に変容しようとしていますが、まだ建築を造る現場では本格的な実用は難しいかもしれません。
AIを活用した設計案やイメージ生成、図面作製の効率を上げるためのコード生成はすでに一部実現可能になりました。
しかし、実際の建築は非常に詳細な内容を決定することや、人によって好みや許容の幅が大きく異なるため、それらを調整していくのに最も適して安いツールは現段階では人です。
私はAIが登場する前から常々思っていたことがあり、それは私の仕事は極論いらない仕事だということです。
クライアントと職人がいれば本来的には建築を構成出来るはずです。
職人であっても、将来的には機械のみで実現出来る技術開発がすでに進んでいますので、不要になるのかもしれません。
しかし、現実はまだ必要とされています。
10年後には様変わりする可能性があり、むしろ期待しているのですが、あと5年は法整備なども考えれば一般に普及することはないでしょう。
そうなると、どこまで行っても人と人のやり取りが大切になります。
人同士であれば馬が合わないということも少なからず起こり得るでしょう。
また、人は必ずエラーを起こします。
はっきり言ってしまえば、私たちプロの立場であってもそうだし、クライアントも然りです。
それをしょうがないと言うつもりはありませんが、そういうものだとわかっていることが大切だと思います。

独立する前に勤めていた会社の社長の言葉ですが、建築は文化と科学の融合だから発展し過ぎることがないんだ、と言っておりましたがなかなか名言だなと感じ入りました。
最新の科学を取り入れることは予算を考えなければ可能ですが、そうはいっても木の温もりを求めてしまうのが人です。
さらに人それぞれの背景まで考慮すると、これまでの環境・年齢・宗教・地域などいくつもの要素を変数として、要望を理解するのは簡単なことではありません。
ニーズを過去の履歴からアルゴリズムを利用してリコメンドを出せる社会ですが、トライアンドエラーで何度も試せる情報とは異なり、建築は一発勝負です。
進化し続ける社会とは感覚的にかけ離れているようですが、これが今の現状であることをご理解ください。

ご自身の要望にどれほど理解を示してくれるのか、その感性をどれほど共有してくれるのか、数値や学歴だけでは計りきれないその感覚を大切にしてもらい、信頼出来る関係だと判断されたら、一緒に苦労をする覚悟で望んで頂ければと思います。
強調したいので改めてお伝えしますが、建築は文化と科学の融合です。
科学はプロにお任せ出来ても、文化はそれぞれ異なります。
これを融合して形・構造・工学に昇華することが建築の醍醐味でもありますので、一緒にそれを体験することを前向きに捉えて頂ければ幸いです。

では、また。

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