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生活の建築知識.77

おはようございます。

今では多くの浴室がユニット形式となり、それらを現地で組み立てるだけで完成します。
ご存知かもしれませんが、ユニットバスと呼ばれるものです。
必要な配管や電気配線を設置箇所に用意しておき、そこでユニットバスを組み立てるわけですが、概ね1日で完成してしまいます。
カタログやショールームを見れば、多くの仕上げパターンもあり好みに応じて部材を選定出来ることからも非常に優秀な建材だと言えるでしょう。
ユニットバスが誕生する前は、浴室を造ることは非常に工程が多く、時間のかかる作業が必要でした。
今でもその方法は実施されており、在来工法という名前で実施される浴室のことを指します。
今回は在来工法とユニットバスの浴室についての違いについて説明していき、どんなメリット・デメリットがあるのか考えていきます。

まずユニットバスに関して簡単に歴史を説明します。
ユニットバスは1950年代にアメリカでプレファブリケーション(工場での部品製造)が可能となったことでユニットバスの製造が可能になったとされています。
当時はまだ、シャワーユニットとして製造していたことから日本人の文化には馴染むものではなかったと考えられます。
しかし、戦後の住宅供給のために合わせて多くの浴室を造る必要もありました。
先ほどの話で、在来工法では時間が非常にかかることからユニット形式の浴室を採用していくことになります。
国内において本格的なユニットバスはINAX(現LIXIL)が1967年に初めて商品化したとされます。
ちなみにTOTOは1973年とされております。
2社の歴史については過去の記事を載っけておきます。

とりわけ日本は衛生環境が高水準なのはご存知の通りですが、ユニットバスの発展により清潔で快適な、さらに機能的で容易な設置を実現して今日の住環境を提供出来ることとなりました。

一方、在来工法での浴室は機能面でも施工性でもユニットバスには劣っていると言えるでしょう。
しかしユニットバスが誕生する前の1950年〜1960年においては重要な技術でした。
戦後以前は共用浴場が多く、各家庭に浴室があるのはまだまだ一般的ではありませんでした。
各家庭で浴室を設置することは戦後の日本、特に都市部の人口集中に伴い、集合住宅の必要性からそれらに専用の浴室を設置する流れが多くなります。

今でも利用される在来工法ですが、手間の多さや、リスクの面からも近年では敬遠されがちです。
1番リスクとなることは、更新のしにくさです。
在来工法を実施するには、まず防水層を造らなければいけません。
左官工事で排水勾配を確保した土間を作り、その後防水膜(アスファルトやFRP)を設けたあと、さらに防水保護のための左官工事となります。
もちろん防水性能に問題がないか試験などを行い、問題がなければ先の作業に進みます。
その後はタイルを貼ったり、浴槽を設置したり、場合によってはガラス扉などを各業者が入れ替わりながら進めていきます。
おそらくここまでやると実働でも10日以上、通常2週間以上はかかることとなります。
試験後なので、基本的には防水性能には問題がありませんが、この場合の防水保証は10年度なります。
10年を越えたら防水が切れてしまっても保証の対象とはならず、この段階でリスクが高まると言えるでしょう。
在来工法の場合、やりかえをするために更新するのは非常に難しく、全て壊してからやり直しとなります。
一方、ユニットバスは更新するのも数日あれば完了します。

それでも在来工法が全くなくならない理由としては、やはりこだわりの浴室にするためには在来工法で造るしかないからです。
一面タイルの浴室や、十和田石や檜風呂といった贅沢な材質を利用した浴室は在来工法でしか実現できません。
また、あまりにも大きい浴室についても在来工法しか対応できないこともあるでしょう。
嗜好品とも言えなくはありませんが、それでも在来工法でしか実現出来ない空間には上質な雰囲気が出てきます。

私自身もマンションに住んでいるため、ユニットバスでなければ安心出来ない気持ちです。
性能も明らかにユニットバスの方が高いので、今後もユニットバスを採用することになるとは思います。
しかし、在来工法での浴室に憧れるのは否定出来ず、戸建住宅であればこだわることも宜しいのではないかと考えています。

リスクとメリット・デメリットを把握した上で、ご自身には何が向いているかご検討してみてください。

では、また。

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