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組織開発×プロセスワークVol.8〜リーダーシップを開発する〜

組織変革に取り組む中で、チームや関係性の問題だけでなく、一人ひとりの成長や変化の必要性も出てきます。今回は組織開発の文脈の中で「個人」の課題にどのように向き合うか、プロセスワークの知恵も交え「リーダーシップ開発」についてお伝えします。


「個人」のリーダーシップ

「リーダーシップ」について考える前提として、「役割」と「個人」という二つの要素について説明します。そもそも組織システムには、役員・部長・課長・プロジェクトリーダーなど多様な役割が存在します。その多くの「役割」は「個人」が埋めているし、「役割」に付随したリーダーシップが存在するのも事実です。首相だからリーダーシップを期待される、社長はリーダーシップを発揮する存在だ、といったようなものです。

一方、「上にいるからリーダーシップを発揮すべき」という考えにはリスクがあります。下にいる人たちは何らか不満を持ち始めると「上のリーダーシップが悪いからだ」と他責的になる傾向があるからです。それが行き過ぎるとシステム上の役割とリーダーシップへの依存傾向が強まり、組織内に不満や失望、怒りが溢れることもよく起こっているのではないでしょうか。

同時に、同じ「役割」でも誰がやるかによってリーダーシップの発揮のされ方が変わるように、そこにカラーをつけるものがあります。それこそが「個人」のリーダーシップです。

つまり年次や役職に関わらず発揮される「個人」のリーダーシップが存在します。組織変革が成功に導かれるときには、役職に関係なくリーダーシップを発揮している人が多いものです。

特に、外部環境が大きく変化し、「誰も正解が分からない」時代においては上位層こそ正解を知っているべきである、リーダーシップを発揮すべきである、という考え方には危険が伴います。経営層のみならず、現場のミドルや若手社員まで全員がリーダーシップを発揮することが組織変革には不可欠であり、これまで以上に「個人」のリーダーシップに着目する必要があります。

成人発達理論とLCP(Leadership Circle Profile)

改めて「個人のリーダーシップ」とは何か。
私たちは「重要な成果を生み出すために環境に対応しながら自己を展開していくこと」と捉えています。そこで役に立つのが「成人発達理論」の考え方であり、ハーバード大学大学院の教育心理学者ロバート・キーガンの提唱する3段階のモデルを参考にリーダーシップ開発を紐解いていきます。

人間が持つ「意識の発達レベル」は成人の中でもバラつきがあると言われ、環境変化に対して個人や組織の変化が追いつかなくなると、ギャップが生じ、組織や個人の内側と外側で不釣り合いが生じます。組織開発に取り組むのは、まさにこの状態になったときであり、一人ひとりの「意識の発達レベル」を高めることが、ギャップを埋めるために必要になります。

「世界が複雑になりすぎている」と思う時、人は世界の複雑性に直面しているだけでなく、世界の複雑性と現時点での自分の能力の複雑性(=能力のレベル)の不釣合いにも直面している。

ロバート・キーガン、リサ・ラスコウ・レイヒー「なぜ人と組織は変われないのか」

そしてキーガンは、この「意識のレベル」を以下の3フェーズに分けています。
・環境順応型知性:周囲からの期待で自己を形成し、外側の基準で自己表現する
・自己主導型知性:内的な判断基準を確立し、自ら判断し選択できる
・自己変容型知性:矛盾を受け入れ、自らを再構築し続けられる

成人の70%は、環境順応型知性にあると言われ、自己主導型知性・自己変容型知性へと発達させていけるかが組織開発を加速させる「リーダーシップ」の鍵を握ります。

役割という外側から与えられたものではなく、自分自身の内的な判断基準から行動し周囲に影響力を発揮すること、同時に様々な葛藤や対立の中で自らを変化させ続けられるかが重要です。

自己変容型知性は、プロセスワークにおける「エルダーシップ」に近い概念と捉えています。「エルダーシップ」とは、場や全ての立場に開かれた心を持ち、対立する双方に理解を示し、集団を一つにできる在り方であり、プロセスワークの視点からもリーダーシップ開発で目指す姿が自己変容型知性であるといえます。

リーダーシップ開発を支援する一つの手段が「Leadership Cicle Profile(以下LCP)」を活用したアセスメントとコーチングです。

LCPは成人発達理論など複数の理論背景をまとめたリーダーシップアセスメントで、これまでグローバルのエグゼクティブを対象に1万人以上が実施し、マッキンゼーやForbesで世界最高の360度サーベイと言われる非常に優れたものです。

下記が結果サンプルですが、左右に「関係性(人間関係)」「任務(タスク)」、上下に「クリエイティブ領域」「リアクティブ領域」と分けられたシンプルなモデルになります。

クリエイティブ領域はリーダーの効果性に貢献するコンピテンシーであり、リアクティブ領域は自己制限的なリーダーシップ行動を示しています。先ほどのキーガンのモデルと重ねると、リアクティブが環境順応型知性に留まる行動であり、クリエイティブが自己主導型知性・自己変容型知性が発揮されるコンピテシーです。

クリエイティブ領域は「目標達成」「全体認識」「本質」「自己認識」「他者との関わり」の5つの大きな要素から構成され、リアクティブ領域は、「操作」「自己防衛」「他者依存」の3つの大きな要素で成り立っています。さらに、それぞれの要素の中に2~5つの項目が紐づく形でコンピテンシーが構成され、リーダーシップの発揮度合いや阻害要因を測っていきます。

このリーダーシップモデルにもとづき、一人ひとりのリーダーシップの発揮度合いを見立て、その開発を支援していくことは非常にパワフルな打ち手となります。

▼リーダーシップ・サークル・プロファイル(LCP)の詳細はこちら
http://bit.ly/3vAv7e7
※サーベイ実施、サーベイ結果をもとにしたフィードバック・コーチングセッションには認定プラクティショナーによるサポートが必須となります
※360度フィードバックの形でアセスメントを実施し、その結果をもとにコーチングセッションを行うことをお勧めしますが、無料版のセルフアセスメントも実施できます

弊社の組織開発、プロセスワークアプローチとLCPは非常に相性が良いと考えています。組織の変革を考えるとき、特にリーダー職のリーダーシップ開発は避けて通れないテーマになっています。しかし、個人としては我々誰もが限界を抱えており、リアクティブなパターンを持っています。これは普段周囲に共有されることは稀で、誰もが克服しようと悩んだりしているものです。LCPはこの「変われない」エッジを見える化して、ある意味リーダーに直面させる機能を持ちます。変わることだけ強いられることは辛いものですが、LCPの素晴らしさはリアクティブにも「才能(ギフト)」が隠れていると考える視点です。

自身の持つ「パターン」を変える

リアクティブなスタイルが身についた理由は過去の経験とも紐づくはずです。弊社の多くのエグゼクティブ・コーチング実績からは、ほとんどのリーダーはリアクティブな傾向を望んでいるわけではありません。目的を深掘り、または再認識し新たなパターンを身につけることは不可能でありません。リーダー職の変化は、チームへ、組織へ波及していきますので組織変革の鍵を握る、一つの重要な要素になっています。

リアクティブとは、問題に対して、恐れから、反応的行動(リアクト)をすることで、一次的に問題を回避するが、それは不安を抑えるための行動であり、結局長期的にな成果には繋がらないパターンと考えます。まさにプロセスワークの「個人と組織の変容モデル」において、ディスターバーやエッジに対して対処療法的な行動をとることで、成果に繋がらず、何度もサイクリングを繰り返している状態とも言えます。

一方、クリエイティブパターンは、自分の内側からの目的・ビジョンがあり、その情熱を持って行動することで長期的な結果を創造(クリエイト)していきます。プロセスワーク視点では、アトラクターをしっかりと描き、内発的動機にもとづくアクションをとり、エッジを超えて成果を生み出している状態と捉えられます。

当然、クリエイティブなパターンを生み出していくことが望ましいのですが、実際には多くの人がリアクティブの行動パターンを繰り返すことが多いのではないでしょうか。

つまりリーダーシップ開発においては、リアクティブ領域をいかにクリエイティブ領域に展開していくかが大事になりますが、その出発点はリアクティブな行動に気づくことです。そのためにもサーベイを活用して客観的に自分自身の傾向を知ることは助けになります。

またリアクティブな行動パターンが起きる時こそ、自分のギフト(才能)を上手く活用するように働きかけます。リアクティブ傾向も、ある意味でその人の強みであり、それが状況とあいまってどのように表出されるかということなのです。操作・自己防衛・他者依存という行動の裏側には大切なギフトがあり、一人ひとりのアイデンティティを形成するもので、安心感を与えるという価値があります。これが自分を「守る」ために使われるとリアクティブに表出されるが、そこにあるギフトや知恵を活かし、クリエイティブな領域に発揮できるかがリーダーとしての変容の道筋になります。

今回は組織開発を加速させるために必要な「個人のリーダーシップ」という観点で、土台となる考え方、成人発達理論とLCPにもとづく具体的なアプローチについて解説してきました。

「リーダーシップ開発」はそれだけ非常に幅広く、深い領域です。様々な捉え方とアプローチがありますので、ぜひご自身でも学びを深めながら、組織変革の支援と実行に活かしていきましょう。

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