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無所属新人

「部活何に決めた?」家についたなりの私にすでに大学を卒業し、隣町の学校で教員となっていた兄が問う。私は咄嗟に「サッカー部」と答えた。家族が総出で「えっ?」ってなった。意外な反響に驚いて「ウソウソ、野球部」って本当のことを答えた。家族も私の部活選びは気になっていたようだった。
野球部に入ったものの、最初は全員横一線だった。キャッチボールもさせてもらえず、ただ先輩の練習をベンチ前で見ているだけだった。監督ともロクに話すことはしない。練習試合になればスコアボード係などの裏方にまわり、試合の流れを覚えていった。
1年生は全部で12人。学童あがりがマナブを入れて2人。ソフトボールあがりが5人。私のような“無所属新人”は意外と5人もいた。監督がマナブら経験者に期待しているのは肌で感じだが、まずは横一線でスタートしたことで、入部直後から経験者とそうでないものの格差に悩まされるのではないかという私の不安は軽減された。
それもそのばず、3年生、特に主力の選手達は1年の私たちからみると、大人というよりももはやオッサンだった。体格もパワーもスピードも違う。こういう人たちが高校生になって甲子園に行くんだろうか、と思ったりした。それでも地域ではそんなに強いチームではなく、春の大会も夏の大会もひとつ勝ったかどうかくらいの戦績で、あっさり3年生は引退していった。
そしてここから本格的に私の野球人生が始まるのである。

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