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ヤン・シュヴァンクマイエル引退記念イベント

チェコアニメの巨匠、ヤン・シュヴァンクマイエル、昨年2018年に引退していたようで、(引退から一年後となる?)引退記念イベントに行ってきました。

作品は暗くて陰鬱な作風。実写、アニメ両方とも、ストップモーション・アニメーションを多用する手法で、特に「食べる」シーンが印象的。
一目見れば彼の作品とわかる、独特の世界観を構築してたと思う。(ヤン・シュヴァンクマイエルは食べることにコンプレックスがある、とのことで表現にこだわりがあるらしい)

チェコ🇨🇿自体、共産主義で国内での制作活動はかなり制限されていたみたい。性格的にチームワークなどは全く向いていなく、協調性は無いとのこと。まぁ、共産主義時代に親しい人たちに裏切られ続けたら誰かと一緒に制作しようとは考え無くなるか、、、切ない。この陰鬱さは、共産時代のチェコで迫害され続けた自身の経験が影響してるのかな?
後継者はいないのかなと思ったらどうも息子さん(ヴァーツラフ・シュヴァンクマイエル)がそうみたい、溺愛してる。才能があるけど一人でやるタイプで思い浮かぶ宮崎駿さんの所とは大分違うんですね。

裏話は面白いと言えば面白いし、まぁゴシップ的な視点にもなるので微妙なところ。聞く分には楽しい。
過去の自分の作品に興味がなく、聞かれても「そんな作品をつくった覚えは無い」と答えることも。面倒だからか作品に対する姿勢かはわからないけど、、、。

〈上映作品〉

1.シュヴァルツェヴァルト氏とエドガル氏の最後のトリック(1964年/11分)
シュヴァンクマイエルのデビュー作品、この作品はコマ撮りじゃないんだね。やっぱり印象は暗い。仮面を被った二人がライトのあたるステージの上で互いに芸?を繰り広げ合う。魚や楽器や昆虫など色々寓意を読み取れるのかもしれないが、、、シュールすぎてよくわからない。

2.庭園(1968年/16分)
モノクロの普通の映画。共産主義に対する批判的な表現がわかりやすい。体制下なのに大丈夫なのかと思うくらいわかりやすい。制作された1968年はチェコにソ連軍が攻めてきた年、プラハの春。
この作品のせいで?ヤン・シュヴァンクマイエルは70年代に創作活動が国によって制限されることになる。

3.オトラントの城(1973~79年/17分)
小説の中だけに出てくると思われた架空のお城と巨人が実在するのでは、という都市伝説を追いかけるTV番組という体裁で始まる作品。TVレポーターが、その城を調査したという考古学者にインタビューした後、元になる小説のストーリーをアニメーションでみせるという、実写とアニメーション表現が交互に展開する。
メインになるのは小説の内容を挿絵アニメーションによって表現するシーン。ペンで書かれた背景や人物が生き生きと動き、戦い、血を流す、、、というのは見ていて引きつけられる。
とは言え他の作品と比べると、テーマも表現もあまり工夫されてないように見えて全体的に弱くない?って感じ。

4.アッシャー家の崩壊(1980年/15分)
主人公の目線からみた映像しか基本的に映らない+モノローグのみで構成。個人的にシュヴァンクマイエル的だなぁって印象の強い(粘土の)コマ撮りアニメーションが初めて?使われる。
当時国からの指導により古典を題材に、と言われ江戸川乱歩のアッシャー家の崩壊を元に作成している。
粘土が有機的に動く様は面白い。タイミング的には国から活動を制限されていた直後の復帰第一作。

5.陥し穴と振り子(1983年/14分)
これも江戸川乱歩の作品をモチーフにしたもの。地下の牢獄から脱出する男性の目線で描かれる、上のアッシャー家の崩壊と似ている。セリフは無い。表現とか内容はあんまり。

この辺りに作品は「ジャバウォッキー」その他の短編 [DVD]に収録されているっぽいので、興味あれば。グロテスクな表現もあり、好みはわかれそうではありますが、、、

学生の時は、チェコアニメの中でも一番好きな作家でDVDを集めたり映画館に見に行ったりしてたような、してなかったような記憶がある。今改めてみると、表現や印象は色あせないな、と思う部分があったり、ここは記憶よりもあんまりだなぁと思ったり、、、僕の見方や好みが変わったんでしょうね。

初期の作品は初見のものも多かったけどヤン・シュヴァンクマイエルらしさみたいなもの(動きと動きの間に差し込まれてる寄りすぎくらいのアップとか)は、最初から変わってないんだなと、感慨深かったです。

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