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ひと皿の中のエストニア

この春4月12日に大阪の中崎で、RUJA+285BLUEというエストニアをテーマとするカフェがグランドオープンした。
RUJAという名前は何か意味があるのか。気になる人もいると思う。
エストニアにはRUJAというロックバンドがあった。このロックバンドのボーカルは不慮の事故で亡くなってしまったのだが、エストニア人にとってRUJAといえばこのバンドの名前だと誰もが連想するほど有名だ。

では+285BLUEは何か? エストニアの国旗は白、黒、青の三色が使われている。この青色のパントーンカラーが285番なのだ。エストニア人ならこのカフェの名前を見ると「エストニアがテーマかもしれないな」とわかってくれる人はいるはずだ。日本人には馴染みはないのだが、実に玄人なネーミングだ。
Relaxed and Usual place in Japan」いつもの場所にリラックスしに来てほしいという気持ちも込められている。なんと素敵な店名だろう。

私はカフェのメニュー制作並びに監修をさせてもらっている。依頼のお話をいただいたのは前年の初夏だったと記憶しているが、日本で店舗を持つということはどれだけ大変なことか、想像できるので当時はびっくりした。

夢と現実が交錯する中で、ランチメニューを作ることとなった。
ブレそうになる時に幾度となく、「メニューを作る意味」を自問自答した。
現実的にはコスト、時間、材料調達の安定性を考慮に入れる必要があるのだが、もっとも優先したことは「なぜこのカフェを作ったのか」確認すると自ずとメニューが構築されていった。

他のどこの国ではない、「エストニア」を感じるお皿にする。

オープンと同時に提供されるランチで大事なのは「ワクワクしてもらえる」こと。エストニアがどんな国か知らないでくる人の方が圧倒的だ。まだ行ったことがない国がどんな場所かを知ってもらうには、プレートがお客様にとっての初めての「エストニア」を表現しようと考えた。

エストニア料理に欠かせないものは「ライ麦パン」だ。我々のご飯と同じように「ライ麦パン」はエストニアの主食である。エストニアの主食の上には、卵とバターをミックスした、その名も「卵バター」。もう一つのパンには燻製したサーモンやニシンのマリネとフレッシュな野菜を品よくパンに乗せた。カナッペのように薄くスライスするのは、ライ麦パンの王道の食べ方だ。

ザワークラウトはドイツの食文化を踏襲しているのか、肉料理となぜか合う。酸味が爽やかで体にも良い健康食品だ。にんじんのラぺは、レモンの酸味とエストニアの蜂蜜を使い、甘酸っぱい。口の中をリフレッシュしてほしいと加えた。エストニアで愛されるクランベリーと胡桃をアクセントにしている。
多めのサラダはシンプルに。ランチには胃もたれしないように野菜をたくさん召し上がってほしいと思う。ドレッシングも手作りで、ここにもエストニアのはちみつが使われている。クセもない味なので、カフェではスイーツも料理にもかなりの割合で使われている。天然で作られた甘味は優しくて、心穏やかになる。

メインは合挽肉で作られた大きめのミートボール。その上には細かく刻んだマッシュルームとタマネギが入ったクリームソース。
ホワイトソースを肉に合わせるのは良質な乳製品が豊富なエストニアでは愛される。クリームソースにコクを感じられるように玉ねぎを深く炒めてから加えるので、ソースに甘さや深みを手伝っている。

塩、胡椒中心の味付けのエストニア料理だが、様々にこだわった味をお客様に感じてもらえるように工夫している。

3種のライ麦パンのオープンサンドは小腹がすいたなという時に頼んでいただけるメニューだ。通常デンマークやスウェーデン、フィンランドなどで食べられるパンは甘味はない。エストニアでは甘いのだ。
デンマーク人に言わせるとエストニアのライ麦パンはケーキだそう。ただこの甘味は酸味の強いライ麦パンとバランスが取れていると感じる。

カフェのライ麦パンは天然酵母で作られる手作りのパンである。ライ麦粉と小麦が半分ずつと甘めのシロップを加えている。ひまわりの種やカボチャの種も時には入り、噛むほどに麦の香りとたねの香ばしさ歯ざわりを感じられる。

一種類ずつ違うトッピングが乗っている。目にも鮮やかで、視覚からも楽しめる一品だ。これにスープをつけても立派なランチとしてお腹を満たしてくれることだろう。

駐日エストニア大使館のマイト大使もオープニングイベントにお越しになり、売り物ではないライ麦パンをどうしてもということで購入されて東京に戻ったほど本格的なパンの味だったことはこれからも語り継がれるであろう。
ぜひ、RUJA+285BLUEに来店された時には、ランチや単品メニューのライ麦パンをぜひ味わっていただきたい。

オープニングイベントについては以下記事をどうぞ。

スイーツへのこだわりはまた次回!

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