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リトアニアのウジュガべネス(Užgavėnės)の祭りに行ってみた

子供の頃祭りというと近所の盆祭りに連れて行ってもらったりすることが楽しみでしょうがなかった。やがて大人になりお祭りに参加するのが億劫になる性格に変貌をとげた。

「どこで祭りを楽しめない人間になったんだろう。」と、
夏になるとふと考える。

さて、今回はそんな祭り嫌いの私が率先して行くことになった祭りの話だ。なぜならば、この冬何のためにオフシーズンもオフシーズンのバルト三国に来たかというと、むしろこの祭りのためだ。
その祭りの名は・・・

「ウジュガべネス(Užgavėnės)」

なかなか覚えられない名前だが、これは何かというと、これを読んでいる方で北欧文化にご興味のある方はもしかしたら知っている人も多い、スウェーデンではセムラを食べる日である。ちなみにフィンランドはラスキアイスプッラ、エストニアではヴァストラクッケルと呼ばれているバンズの間にジャムと生クリームを入れた食べ物を食べる日だ。
この日についてはこちらで詳しく書いてあるのでどうぞ。

今年は2月13日火曜日に食べるが、毎年違う日に設定される。ただし火曜日なことは確かである。

名前からしてセムラが台頭しているのを、勝手に苦々しく思っているが、バンズに挟まった生クリームの形だけがバルト三国で食べられているものなののか、地味に気になっていた。

早速リトアニアに住む人々に聞いてみると、「パンケーキだよ!」と返事が来た。パンケーキ・・・どんなパンケーキなのかと気になったので、やはりこの時期に行かねばならないと航空チケットを購入した。

ということはあなた、「パンケーキのために極寒のバルト三国に?」
と思われるでしょう?

「はい、その通り」

さてリトアニアの北西部、サモギタンという地域に属するテルシェイ(Telšiai)にはSamogitan Village Museumがある。ここを運営しているALKAというこの地域の博物館を束ねる組織に属しているお友達のIngridaさんとその旦那さんであるAureliusさんの乗る車に便乗させてもらった。

13日当日は平日なのでその前の11日(土曜日)に開催されると伺った。この日の祭りに参加するために9日の朝からエストニアのタルトゥを出発した。

2月11日午後1時から開催される祭りに向かい、Ingridaさんが丁寧に説明してくれながらVillage Museumの敷地を歩いた。
この日ばかりは入場無料なのかノーチェックで人々は施設内に入っていた。出店も出ていた。スイーツが並ぶブースに立ち止まると、パンケーキをいただいた。パンケーキはノルウェーのパンケーキを焼く形が使われていた。その上に、りんごのジャムとイチゴのジャムをかけてくれた。ほんのり生地が甘くてクセになる味だ。パンケーキはさまざまなスタイルがあり、特に形にはこだわっていなかった。無料で配るコーナーもあり、みんながつまんでいた。

スイーツ
ケーキ
豚を丸々一頭

このほかにはしょっぱい系も充実していて、麦と野菜、豚を一頭入れて煮込んだお粥や豆の入ったスープも振る舞われた。どれもだしがたっぷり感じられる滋味深いおいしさで、みんなが食べる理由がわかった。またどこか懐かしい調理器具で作っているので、この祭りの雰囲気に合っていた。

麦と豚肉のお粥

物々しいお面を木彫りしている人がいるのだが、このお面を顔につけている人が多い。怖い形相のお面は「冬」を表している。「冬がいなくなれ!!」ということで冬と戦って、春が必ず勝つという図式なのだ。

お面をつけた参加者

私はこの話を聞きながら日本の節分の豆まきを思い出した。

地元のお面作りの有名人

「気持ちの悪いお面をつけながら踊り、人々を脅かしたりイタズラをする。」これが「冬」の正体なのだなとリトアニアの人々は擬態化させて理解したのではないだろうか。
そして、最後はモレという藁で作られた大きなモレという女性を燃やす。これもまた冬の擬人化なのだ。セクシーで美しいモレに人々は騙されてはいけないので、彼女を燃やして冬に勝つそして春がすぐに来ることを祈る。そうして燃えさかるモレを見て祭りは終わる。

仮装した人々
燃えるモレ

結果のわかる寸劇を見ているようだが、この祭りをすることによって、待ち遠しい春に向けて寒い冬に楽しむ方法を編み出したのだ。旧ソ連の時代にはこのような文化を規制されていたため行うことができなかったが、独立後はだんだんと昔ながらの行事も行われている。

おもしろいと思ったのは、エストニアはヴァストラクッケルを食べて、脂肪を貯蓄しつつ、厳しい寒さにただ耐えているとするのだが、リトアニアは冬と戦うということだ。
やはりバルト三国の中でもアツいリトアニアの国民性にも象徴されているようで個人的に納得した。「厳しい冬に、俺たちは絶対に勝つ」と強い意志を持つリトアニア人の精神を見習いたいと思う。

モレの前で記念撮影中の参加者

夏のテルシェイについては、拙著『バルト三国のキッチンから』にございます。ぜひ、夏もおすすめの場所です。


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