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群発頭痛患者への帯状疱疹ワクチン摂取についての暫定的な報告――「効果があります!」


■はじめに

 私は2020年の夏、群発期間中に帯状疱疹ワクチンを摂取しました。
 もったいぶらず、まずはこのワクチンを知っている方に向けて、最初に申し上げてしまいましょう。
「1期間の群発期を抑制することができ、次の群発期は例年より軽度で済んでいる。完璧ではないが、悩んでいるならぜひ摂取をおすすめしたい」
 これが本稿のまとめであり、始まりとします。
 また私は、こちらへの投稿について「完結した記事としてあとで再読できる、書架としての役割」という方針があるので、基本的に暫定的な記事を書きません。しかし今回は群発頭痛に関する記事であるため、完全な結果を見ることが難しく、また完全な終息がいつになるのかもわからないので、ある程度の役に立つことを信じてここに暫定的な内容をまとめます。
 
 
■衝撃の発表

「帯状疱疹ワクチンの摂取が、群発頭痛に有用」
 2019年、東京女子医科大学脳神経外科客員教授の清水俊彦氏によって発表されたその報告は、群発頭痛患者にとって衝撃的なニュースでした。
 群発頭痛に悩まされ、いろいろと情報を探して検索しているさなか、そんなニュースを目にした私がまず感じたのは「疑念」。本当に効果があるのか?
 次に抱いたのは「不安」。前例が少なく、やってみるのが怖い。帯状疱疹でもないのに、それ専用のワクチンを体に入れることが怖い。
 そして最後に、調べ続けていくうちに「希望」が浮かびました。「もしかしたら、本当に効果があるのでは……?」と。

 この順番で、よかったと思います。もしも最初に「希望」が浮かんでいたら、私は詐欺に引っかかりやすい人間だったかもしれません。
 その疑りやすさのおかげで、突然かかってくる怪しげな電話はすべて回避できていましたが、自分を守る可能性のあるものにさえ懐疑的になっていました。そういった「帯状疱疹ワクチンについて気になっているが、気後れして摂取していない」方が、今でも非常に多いと思います。
 その情報を知った多くの方が体験していると思いますが、私も気後れして検討するだけで摂取しないうちに、群発期を迎えてしまっていました。しかもその時(2020年)は、4ヶ月もの最長期間。今までのサイクルでは春先に訪れる群発期は比較的短く寛解期に入ったのですが、その時は、平均3ヶ月を見ていた真夏の群発期よりも長い。梅雨が明け、夏になってようやく寛解しました。
 その時期に記したものが以前投稿した2本のノートなのですが、それを残したかったのは、もしかしたら群発期間中に「帯状疱疹ワクチンを摂取したから」かもしれません。
「もしも本当に効果が出て、群発頭痛が訪れなくなったら、この地獄の痛みについて書き残すことができなくなってしまう」
 そのため私は、気力を振り絞って先のノート2本を書き残していた……のかもしれません。先走る使命感のような思いがこみ上げて。

 そして翌2021年。たしかな効果がありました。
 春先は微妙な反応のみで、群発頭痛なし。8月から再び微妙な反応が続き、下旬にとうとう群発期に入ったものの、例年に比較するとかなり軽度。1ヶ月弱でおさまり、9月中旬に寛解期に入りました。こんなに短い群発期は(イレギュラーで起こったもの以外では)初めてです。
 まだ摂取から1年強しか経過していないものの、群発頭痛患者にとっては驚異的な効果を見せてくれるはずだと確信できました。
 
 
■群発頭痛に対しての帯状疱疹ワクチンの有効性

 まずご存知でない方は「群発頭痛 帯状疱疹ワクチン」で検索してみてください。いくつものページがヒットします。
 このニュースを詳しく取り上げている記事の多くは会員登録が必要ですが、簡素にまとめたページやお医者さんのページは全文を読むことができますし、さらにお医者さんが答えてくれる掲示板もあります。
 清水教授の発表についてまとめると、以下のような感じです。

 以前から反復性群発頭痛には「水痘・帯状疱疹ウイルス(Varicella Zoster Virus;VZV=いわゆる水ぼうそうウイルス)」の関与が示唆されていた。多くの症状を引き起こすウイルスだが、群発頭痛もそのひとつである可能性が高い。
 そこで清水教授が2007年、スウェーデンの国際頭痛学会で「アロディニア(激痛前にゾワゾワする、いわゆる予兆)を伴う片頭痛には帯状疱疹ウイルスが関係している」「反復性群発頭痛患者はVZV抗体価が高い」と発表。つまり、群発頭痛患者は水ぼうそうでも帯状疱疹でもないのに、一時的にそれらの病の出現を表す値が高くなっていて、偏頭痛や群発頭痛の予兆もそこから起こっているという内容。
 清水教授はその後もVZVワクチンの群発頭痛予防効果に関する研究を重ね、2019年の日本頭痛学会にて「VZVワクチン投与により 反復性群発頭痛患者のうち9割で発作の改善が得られた」と報告。群発頭痛の再発を予防するためには「IgG抗体(水ぼうそう・帯状疱疹の出現を判断する測定値)の定期的な測定」や「VZVワクチン(帯状疱疹ワクチン)の投与」が推奨されると述べた。
 その治験者となったのは反復性群発頭痛と診断された患者94例。全例にVZVワクチンを投与し、投与前後における反復性群発頭痛発作の状況を56ヶ月間追跡。
・VZVワクチン接種により「よくなった」と回答した患者は「よくなっていない(判断できない)」と回答した患者に比べて頭痛予防薬や頭痛薬の使用量に減少傾向が認めらた。
・特にスマトリプタンの自己注射使用率は、「よくなっていない」回答者の77.8%に対し、「よくなった」回答者は44.3%と、30%減少。
・投与36ヶ月後に行ったアンケートでは、71%が「改善した(発作が起きていない)」と回答。
・その際「変化なし」と答えた29%をさらに追跡すると、56ヶ月後にはそのうち63%が「改善した」、26%が「発作は起きたが短期間で改善した」と回答。
・偏頭痛についても116例を対象に調査し、帯状疱疹ウイルスが活性化した(IgG抗体値が高い)グループは、そうでないグループの4.3倍もアロディニアの出現率が高いと発表。それもVZVワクチンによって抑制できる。

……どうでしょう。期待できませんか?
 ここまで群発頭痛のために研究してくれている方がいると思うだけで、本当にありがたい気持になります。 
 しかしまだ充分なデータがないため、摂取については二の足を踏んでいる患者が多いことでしょう。私もそうで、そのまま群発期に突入してしまったのは前述の通り。
 群発頭痛は未だに認知度が高いとは言えません。近所での往診でトリプタン系の薬、イミグランなどにありつけるだけでも幸運で、頭痛外来にきちんと通える環境の方はまだまだ少ない。しかもよく聞く話で、帯状疱疹ワクチンをお願いすると「分野が違うから、やらない」と医師から拒否されることも多いそうです。
 私のかかりつけ医は神経内科ですが、神経痛などが専門で群発頭痛についてはそこまで精通していないと言っていました。しかしとても理解があり、勉強もしているので、私ほか群発頭痛のため通っている患者の診察で学習を重ね、帯状疱疹ワクチンはドクターのほうから提案してくれました。それでも群発頭痛での帯状疱疹ワクチン投与は、その病院で私が初めてだったそうです。
 そうして私は、群発期の最中でしたが、帯状疱疹ワクチンを摂取したのです。
「2回打てるので、効果を感じなかったり弱い場合はまた来てください」
 とまで言ってくれました。
 やはり病気に理解があるドクターとの出会いは、重要です。私は現在のかかりつけ医に出会えて、幸運でした。
 
 
■帯状疱疹ワクチンとは?

 帯状疱疹ワクチンは、厚労省の承認は50歳以上で保険適応です。しかし群発頭痛に対しては50歳未満でも適応外使用として接種可能です。
「水痘ワクチン」と「シングリックス」があり、通常は水痘ワクチンが投与されます。その場合保険なしの実費で、1万円でお釣りがくるぐらい。有効性は90%前後と予想され(まだ実例データが少ない)、再発することもあるので、抗体値を測定して再摂取も可能。効果が出にくい場合はシングリックスの接種を検討したほうがいいようですが、こちらは実費で4万円程度と高額です。
 基本的に、詳しくは主治医との相談になると思います。まずは頭痛外来や神経内科などの、専門知識のあるドクターを探すことから始めたほうがよさそうです。そうでないと町医者にはお願いしても拒否されたり、あるいは最初から高額なシングリックスをすすめられてしまうケースがあるかもしれません。
 帯状疱疹の免疫は終生免疫なので、水ぼうそうなどで摂取していた方は群発頭痛になっていないと考えられます。水ぼうそうで言えば、一度抗体を獲得すればその後は発症しないことが通常だそうです。ということは、群発頭痛にも強い効果が期待されます。
 ただし、免疫力は年齢とともに落ちるもの。そのため50歳前後が帯状疱疹ワクチンの摂取ラインになっているわけですが、群発頭痛患者は抗体がなかったり、低濃度で免疫不足ということが考えられるそうです。そのためにも抗体価測定(実費)でデータとして明らかにし、摂取を検討する流れが望ましいと聞きます。それなら必要ないと拒否する頑固な「お医者様」も、黙って摂取の運びにしてくれそうですね。
 
 
■群発期間中の摂取はおすすめできない

 私の場合、結果から言うと効果があったのですが……「群発期間中の投与」は、よくなかったようです。
 というのも、あとで調べて詳しくわかってきたのですが「群発頭痛の発作中あるいはステロイド服用中は、ワクチンによる抗体ができにくいため効果が弱い」ということでした。
 そのため投与後も同じように群発頭痛が訪れ、ほぼ変わらない。少し痛みの質や感じ方、傾向などが変わったようにも感じましたが、偶発的なものがほとんど。
 群発頭痛はプラセボ効果のない「リアルな激痛」です。そのため、ワクチンを打ったから大丈夫という気持は吹き飛び「このワクチンでも自分には効かないのか?」という絶望感を抱きました。
 しかしそれは、あくまで群発期間中に投与したからです。帯状疱疹ワクチンは抗体ができるまで時間がかかり、また群発頭痛は免疫などがガタガタになります。そのため本当は、群発頭痛がおさまり、寛解期に入ってから免疫系が正常化する期間、約3ヶ月離して投与するのがいいらしいです。またステロイドの場合は中止から10日前後が有効とされるそうです。
「抗体は少しずつできるらしいから、少しずつ痛みが弱くなるかもしれない」と思っていましたが、そんなことはありませんでした。
 ただし、免疫ができているであろう期間あたりから、群発頭痛よりも偏頭痛に近い痛みが増えました。頭皮マッサージで沈静化したり、冷やして明らかに痛みが引いたり、イミグランを使わなくても済む場面が増えたのです。それでも群発頭痛自体の回数が減るわけではなく、頭痛日記をつけているとイミグラン使用量が減っていないのは一目瞭然。そのため期間中の体感よりも、その後になって冷静に振り返ると「偶発的な変化がほとんど」という感慨に落ち着きました。
 もしも群発期間中であれば「発作中はアメナリーフなどの抗ウイルス薬が有効」という話も聞きます。いずれにせよ、主治医に相談してみましょう。取り合ってくれないなら、他の神経内科などを探しましょう。
 転院やセカンド・オピニオンは、すべて自分のためです。
 
 
■たしかな効果があった!……けど「疑似予兆」発生

 ここからは、私個人での体験になります。
 個人により効果や反応は異なると思いますので、あくまで参考程度にしていただき、決して「帯状疱疹ワクチンの確実な効力」とは解釈されないよう、お願いします。

 その後、前年に最長期間で悩まされた春先の群発期シーズンになりましたが、群発頭痛らしきものはまったく感じませんでした。お酒を飲んでも、痛みどころか予兆さえ感じません。
 たしかに、効果がありました。心理的にも大きく影響し、群発頭痛のことを「考えもしないで済む」のです。この「心の解放」は、長年「急に群発頭痛に襲われるかもしれない」というネガティヴな意識が必ずあったのを、そっくり消し去ってくれました。
 ただし、気になったことはあります。予兆とまでいかなくても「目がゴロゴロする」「涙ぐむ」ことが数日、あったのです。それもわかりやすく「飲酒時」や「入浴後」、「動き回ったあと」といった、以前なら群発頭痛の発作が起こっていたであろうタイミングで。
 しかし短時間ですぐに治まり、毎日起こるわけでもない。体感的に、3ヶ月のうちに10回もないぐらいでした。予兆に似ているものの、増幅する気配がまったくなく、感じてすぐに沈静化していく。
 これを個人的に「疑似予兆」と呼んでいます。予兆に似た症状であるものの、とても軽度で、すぐに治まる。また、アロディニアと呼ばれる本物の予兆のような「背筋がゾワゾワする」感じもない。
 これはもしかしたら、ワクチンが群発頭痛の出現を抑制していたのではないでしょうか。本来なら群発期にあたる時期、たとえばお酒は100%群発頭痛を引き起こすトリガーです。まだ体に残る帯状疱疹ウイルスがアルコールに反応し、群発頭痛を呼ぼうとして動き出したものの、ワクチンに動きを封じられている。数分程度しか感じない、痛みとも言えない鈍い感覚に、そんな光景を思い浮かべました。
 つまり、群発頭痛が訪れる予兆が疑似段階で終わっているのです。「疑似予兆」のまま、消えるように。この段階で消えてくれるのであれば、まったく生活に支障はきたしません。
 
 
■「軽度の激痛」が訪れる

 夏になると、上記の「疑似予兆」も起こらなくなりました。しかし急に「軽度の激痛」と表現できそうな奇妙な痛みに襲われました。
 以前は群発頭痛で目覚めることがあった早朝の2~3時頃、むくむくと沸き起こった左目の痛みで覚醒。まさしく今まで悩まされていた群発頭痛と同質の眼球周辺の痛みで、いわゆる「頭痛ではなく激痛」の部類。しかしとても軽度で、そのため「軽度の激痛」という矛盾した感覚を受けました。
 この群発頭痛と同質の激痛が訪れたのは、VZVワクチン接種後の、おそらく通常であれば群発期であろう期間では初めて。質こそ群発頭痛と同じですが、きわめて軽度で耐えられます。しかし痛みが気になって眠ることはできず、イミグランを点鼻しました。
 この痛みは氷嚢をあてると明らかに痛みが引き、消えるまでに到達することがあります。しかし氷嚢を離すと痛みが少しずつ強まり、発生時と同程度(耐えられるものの眠れない程度)まで増強します。
 痛みが弱い場合、体感で20分程度したところで痛みを感じなくなり、入眠できました。群発頭痛では神経が尖っているのに疲れ果てて眠ったものですが、この痛みでは神経が興奮して眠れないこともなく、自然と続けて眠ることができます。
 しかしそこまで、発作中(便宜上、そう呼びます)に、冷静に痛みのことを考えられるのは初めてです。そのぐらい「軽度の激痛」でした。
 その後も同様の痛みと違和感が発現するようになり、一般頭痛の「キリキリ」ではなく、目玉を押されるような「グリグリ」とした群発頭痛特有の痛みが強くなることがありました。しかし遠のいて消えることが多く、なぜか飲酒も基本的に痛みに無関係。群発頭痛とは似て異なる質になってきました。以前の記事に記しましたが、群発期終盤の「偏頭痛的な痛み」に酷似しています。
 
 
■例年より軽度の短い群発期へ

 このまま消えてくれるのか……と期待したものの、飲酒や疲労・ストレス起因による痛みおよび「時間制の痛み」を含む、例年と同じ群発期に入ってしまいました。
 痛みの質や体力消費面からも、例年の群発頭痛とほぼ同質。しかし決定的に違うのは、もし放置しても激痛は例年のピークまでは達しないように感じられたこと。ストレスや動き、気温などに起因する発作は、例年では気をつけても防ぐことが難しかったのに、環境を整えることでかなり抑えられました。
 群発頭痛患者を悩ませる、定時に訪れる「時間性の発作」もありましたが、あらかじめ(薬価の安い)イミグランの錠剤を服用しておけば防ぐこともできました。
 静かにして落ち着くこと、エアコンや氷嚢での冷却、メガネを外す、頭皮マッサージ……などで対処すると、そのまま消失する発作も多く、質は同じでも明らかに「弱い」反応でした。「耐え難い激痛」と呼べる痛みは数えるほどで、多くは「耐えられるが、消えないので早めにイミグラン点鼻薬を使用する」質の痛み。薬価の高いイミグラン点鼻薬の使用も、過去最少の個数で済みました。
 やがてイミグラン錠で対応できる程度の違和感と痛みに落ち着き、それもなくなり、消失して寛解期に入りました。その間、1ヶ月足らず。今までの最短スパンとなったことに、おそらくVZVワクチンが関与しているものと思われます。
 
 
■また訪れないとは限らない

 数えるほどとはいえ「疑似予兆」「軽度の激痛」が起こったことは「つまりこれは、群発頭痛が再発する可能性は少なからずあるんだな」と私に体感させました。疑似とは言え予兆に似た反応があるということは、完全に払拭できていないということです。軽度とはいえ同質の痛みということは、根治治療にはなっていないのです。
 その後、実際に群発期に入ってしまいましたが、決してがっかりしませんでした。むしろ「今は、これだけで済むんだ」という、ありがたみとして感じました。先に述べたように「群発頭痛のことを考えなくて済む」というのは、患者にとって本当に嬉しいこと。なってみて初めて体感できる、健康状態への感謝。そして「あたりまえ」が取り戻せることへのよろこびまで感じます。
 おそらくまた、来年には群発頭痛が再発する可能性があるでしょう。しかし抗体価が下がっていることに起因すると思われるので、数ヶ月後、再びワクチンを摂取すればいい。来年には本当に群発期が訪れなくなるか、もっと弱くなるかもしれない! その後も抗体価のチェックと摂取を検討すれば、積極的に「群発頭痛を減らせる」のがVZVワクチンだと体感しています。
 それに経済的には、大助かりです。イミグランで毎回、当然のように1万円札が何枚も飛んでいったのが、数年に1回の注射で済むのですから。
 そうしていくうちに、本当に「年齢的に出現しない」ようになるのではないか? と楽観視できるようになりました。悲観視しかできなかったはずの、群発頭痛というものに対して。
 
 
■最後に:積極的な個人の感想が必要

 さて。
 ここまで記してきましたが、これはあくまで「私の個人的な、2021年時点での話」です。
 前述したように、また群発頭痛に襲われる可能性は否定できません。もしかしたら帯状疱疹ワクチンでは群発頭痛は防げず、たまたま今年の群発期を軽度で回避できていただけかもしれません。別の項に記しましたが、発症してすぐの頃は、2年サイクルだったこともありましたから。あくまで「投与から1年間」のお話です。
 しかしこれを書き残すのは、群発頭痛についての記事を書き、多くの方に読んでいただき、少しでも群発頭痛というものの認知に貢献できた者として、必然的だと感じたからです。サカナクションの山口さんのおかげで群発頭痛が話題になった頃を過ぎた現在、その群発頭痛の認知の広がりは「瞬間的なものだったのかな」と感じています。
 それでも、ニュースでもたくさん「群発頭痛」というワードが流れたおかげで、多くの方の片隅に引っかかったはず。誰かがそういう症状を見せた時、あるいは群発頭痛という言葉を耳にしたり目にした時、「あっ、そういえば以前そんなニュースがあったな」と記憶の奥底から思い出してもらる人がいれば、充分だったとさえ思います。
 少しずつ、「自分も群発頭痛だ」と言える世の中になってきました。多くはSNSですが。

 しかし帯状疱疹ワクチンについては、処置した人の感想は非常に少なく、効果を書き残したブログなどはごくごくわずかしか見つかりません。
 群発頭痛についての掲示板では「1~2年は群発期がなかったが、以前と同じぐらいに感じるものがきた」「痛みは軽減したが偏頭痛のような痛みがするようになった」といったネガティヴなものも散見されます。
 しかしそれは、ひょっとしたらですが、効果があった人は「群発期というもの」を忘れて、表に出ていないのではないでしょうか?
 群発期は突然訪れるもので、普段は忘れています。だからこそ私は「それが再来することさえ忘れられる、しあわせ」を感じました。
 頭痛学会でも次の報告は長い期間を経て、しかも検証例をより増やして効果を見ていかなければなりません。大々的に発表できる時期がいつになるか、わかりません。研究中で何らかの発表前だったと噂される群発頭痛治療についても、新型コロナウイルスの影響により頓挫しているようです。
 摂取した患者も、年単位で長期間、自分で様子を見ないといけません。それこそ、きちんとした効果と再摂取などは、10年単位で見ないとわからないでしょう。

 だから皆さん、もし可能であれば、怖がらず帯状疱疹ワクチンを打ってみませんか?
 そして各個人で感想や、痛みや期間などのデータを大まかにでもネット上に書き残していけば、小さな点がやがて線となるはず。医師へのデータ提供にもなり、頭痛学会の応援にもなります。ということは、自分にも大きな情報として戻ってくる。選挙じゃありませんが、ひとりひとりの力が、大きくなって形になり、自分に返ってくるのです。
「情けは人のためならず」
 これは私の人生訓であろうと思っている言葉ですが、まさしく、個々が体験と情報を提供することで、たしかなデータとなって自分に戻ってくる。そう思えるのです。

 しかし新型コロナウイルスでも「反ワクチン」の人々が存在する。時には不思議な主張をもって。
 そうでなくとも「研究中で不確かな、群発頭痛専用ではないワクチンを、体に入れるのは怖い」という人も少なくないでしょう。
 ですからもちろん、無理強いなどしません。しかし「私の場合は、明らかな効果がありました」。
 その報告をもって、あなたが、理由なく苦しまされているあなたのボロボロにされた心が、救われる可能性があることだけを、提示して終わりとします。

 体はおろか、心がすり切れる前に――。

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