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群発頭痛・応用編(患者さんに向けて)


 以前「群発頭痛とはどんなものなのか」について、とても長い文章をしたためました。
 群発頭痛をご存知ない方にも、悩まれている患者さんにも向けたものだったのですが、今回はより「群発頭痛患者」に即した内容を記述します。
 どうしても自己の体験を基本とし、あくまで個人的な体感で、医学的根拠のあることなどは言えません。そのため書ける範囲が限られてしまいますが、逆に手広く言及もできます。それだけに「勉強した医者が言うのではなく、実際に体験し続けている患者の、ある程度確かな情報」として活用していただけると幸いです。
 個人的な経験談のため、主に使用している対処薬は「イミグラン点鼻薬」です。サブとしてイミグランの錠剤を使うこともあります。同じものを使用されている方にも、そうでない方にも、少しでもお役立ちできれば幸いです。
 今回もまた、長くなってしまいますが……。


【発作時の対処法】

 群発頭痛の発作が起きた際、皆さんはどう対処しているのでしょう?
 もちろん方法は限られており、選択肢は「錠剤服用」「点鼻」「注射」「酸素」ぐらいしかないと思います。
 即効性の高い注射と酸素は激痛に耐えられるものとして、錠剤と点鼻の方は、激痛が発生している間をどうしていますか?
 ネット検索で拾える数少ない体験談を見ると、いくつか方法が出てきます。
「コーヒーを飲む」「カフェインの錠剤を服用する」「ツボを押す」「トイレで排便する」……などなど。効果は個人差が大きく、どうしても民間療法めいた体験談に終わってしまいます。
 それでも多く散見されるのは「冷やす」こと。群発頭痛は血管の拡張により発生するため、血管を引き締めて拡張を防ぐイメージでおこないます。
 はっきり言ってしまえば効果はないに等しいのですが「やらないよりマシ」。群発頭痛は身体的にも何もできなくなってしまうので、せめてものアクションとしておこなえば「血を散らすために動き回る」要素のひとつとして「冷やす動作をする」ことは意味があるかと思います。プラセボ効果もない痛みですが、せめてもの心理的な意味でも。

 冷やす際には、凍らないジェル状のマットやパッドを使うといいでしょう。やわらかく変形するので、患部やデコボコにも当てやすいです。ドラッグストアや100均にも売っています。
 直に当てると低温やけどしてしまうため、ハンカチやバンダナ、スカーフなどで数回くるんで使用します。冷気が弱くなったらくるんでいる回数を減らす。ハンドタオルも使えますが、厚手のものはすぐに冷気が伝わらなくなります。
 デザートを買ってついてくる保冷剤や、お弁当用の保冷剤も流用できます。ただし硬いので、緊急用向けです。
 それらがない場合や激痛の連続で使い切ってしまった場合は、厚手のビニール袋に氷と水を入れて即席の氷嚢を作ります。
 個人的に冷やしているのは、以下の箇所です( [数字].内は優先順位)。

 [1].患部 (眼窩周辺) :熱を持った眼球と周辺を冷やすイメージ
 [2].こめかみ:患部から連鎖していくのを止めるイメージ
 [3].首まわり:前後左右、血管が太い部分を鎮めるイメージ
 [4].胸もと:血液が上昇するのを食い止めるイメージ
 [5].脇の下:血管が多い部分を鎮めるイメージ
 [6].頭頂部:頭部や脳全体を冷やすイメージ
 [7].後頭部:同じく全体ですが、周囲を冷やし疲れたら水枕のように敷く

 直接的な効果はなく、あくまで「やらないよりマシ」程度ですが、発作の際にはたしかに患部や周辺は熱を持つので、完全に効果ゼロではないと思います。
 何より、痛みが引くまで数10分から1~2時間を要するので「対処している」という心理的な効果が重要ですね。群発頭痛なんかに負けないためにも。


【点鼻は「逆の鼻」】

 群発頭痛は左右どちらかの眼窩周辺が、異常なほどの激痛に襲われます。
 たとえば左目周辺が痛む場合、イミグラン点鼻液はどちらの鼻の穴に点鼻しますか?
 答えは「患部と逆」の「右」だそうです。おそらくすべてが対になっている人間の身体的構造によるものだと思いますが、長いこと知りませんでした。
 僕は左目が痛むので、それを知ってから鼻の右の穴に点鼻しています。しかし効きめが早いかと聞かれると、答えは「どちらとも言えない」。早いようにも変わらないようにも感じるのは、「正しく処方しているから大丈夫だ」「おかしいな、正しく処方したはずなのに」という心理的な体感でしょう。
 群発頭痛は「どうして自分だけこんなに苦しまなくてはいけないんだ」と精神的に追い詰められてしまう戦いです。プラセボ効果がないと知っていても、心理的に負けないようにするのが肝要。
 そのためにも、僕は「反対側に処方」しています。


【発作時や、予兆の段階で頭がむくんでいる】

「頭がむくむ」
 どちらかというと、美容関係で使われている言葉だと思います。小顔にしたいだとか。
 しかし実は、群発頭痛でも頭がむくみます。発作の最中や、発作に発展する予兆が見られた時。または群発期にいる最中、ずっと。血流などの関係で、脳あるいは頭皮が膨張した状態になるようです。
 てのひらの一番下が耳の頂上に位置するようにして、てのひら全体を耳の上に当てて、頭を包むように指を曲げてみてください。頭がむくんでいない通常時は、一番長い中指が第一関節同士で重なります。しかし頭がむくんでいると指が重ならず、すきまができてしまう。
 この状態になると、たとえば群発期でなくとも血流が滞っているサイン。アルコールを摂取した時と似たような状態だと、整体師に教わりました。
 頭部のむくみはツボ押しである程度は改善されますし、市販薬の「アルピタン」や、漢方薬の「五苓散」でも改善される。それが頭痛に発展する可能性もある……というのが、整体師の話です。
 そして実際、頭部のマッサージをすると前述のポーズで、中指が重なります。明らかに頭部のむくみが取れるのです。
 さらには、イミグランを使用するまでもないものの、片頭痛に似た痛みを感じている際、頭部のマッサージで痛みが改善されることが多くあります。
 ということは、群発頭痛にも効果が「ないわけではない」と言えそうです。


【ツボの種類】

 頭部のマッサージとも関連しますが、「一般の」頭痛に効くツボというものが、いくつかあります。
 群発頭痛の激痛の最中に押してもほぼ無効果ですが、「激痛に発展させないようにする」「激痛に苦しむ気を紛らわせる」「もしかしたら痛みが引くのも少し早まるかもしれない」ためにも、知っておくのも悪くないと思います。
 だいたい押している部分を調べて名前を書いておくので(名前違いはご容赦ください)、以下の名前を検索してみれば、具体的にわかると思います。

 ・耳の上:角孫(かくそん)←耳の上はてのひらの腹で押す
 ・耳の裏:翳風(いんふう)、完骨(かんこつ)
 ・耳の前:飢点(きてん)
 ・頭頂部:百会(ひゃくえ)
 ・こめかみ:太陽(たいよう)、頷厭(がんえん)
 ・眉間:印堂(いんどう)
 ・後頭部:玉枕(ぎょくちん)
 ・うなじ:天柱(てんちゅう)、風池(ふうち)

 群発頭痛と併発して、片頭痛や通常の頭痛になることも多くありますので、そういう時に押すのも効果的です。


【整体は効果がある】

 以前から、群発頭痛に効果があると噂に聞き、整体を利用することがあります。
 ネットでも「肩から首が凝ると、群発頭痛を引き起こしやすい体になる」という記述があります。整体師に聞いてみると「群発頭痛は、整体やマッサージでは痛みをやわらげるぐらいしかできない」と完全肯定はしませんでしたが、否定もしませんでした。
 自分の体験では、たまたまかもしれませんが整体をしていた年は群発期が来なかったり、痛みがひどい頃に整体してもらうと急に痛みが軽減されたりします。
 今までの経験では「整体直後、激痛が何度か訪れるものの、頻度が落ちて激痛まで発展しない痛みで済むことが多くなる」と感じています。
 少なくとも血流が関与しているのは確かなようで、たとえば滞っていた血が一気に流れると、血管は拡張する。しかし全体がスムーズに流れていると、血管が拡張する必要がなくなる。そのために整体をして体を整えるイメージです。
 ただし、整体師がよく言うように「体にとって、1回やっただけでは意味がない」。定期的にやってもらうか、自分で姿勢から整えることが大切。日頃の姿勢を見直すだけで、群発頭痛が軽減されるようにも感じます。それでも群発頭痛患者としては「1回でいいから、その時でいいから、整体に頼る」のは手段として有用だと思います。
 ただし、大きな注意がひとつ。柔道整復師がいる、いわゆる「バキバキ鳴らす整体」をおすすめします。鳴らさずに整えるだけの整体は「強いマッサージ」と同じで、それこそ「その時はいいけど、すぐダメになる」。群発頭痛的に効果があるか、わかりません。
 柔道整復師でしたら群発頭痛による来院というのを話せば理解してもらえますし、痛みや血流のメカニズムの話や、アドバイスもしてくれます。


【「前兆」は様々】

 群発頭痛の発作には「前兆」があります。
 ぼんやりとした「何か」を感じ、そのうち気がつくと痛みになり、すぐに激痛に発展する。
 それを感じた時点でイミグランを点鼻なりしておけば激痛にまで発展せず、苦しまなくて済みます。
 しかし正確には「前兆」は自覚できる程度のものではなく、違和感がある時点で痛みが始まっているも同然のようです。それでも、軽度のうちに反応できれば、苦しむ確率がぐっと下がります。 
 その「軽度の痛み始まり」を便宜上「前兆」と呼んでいますが、時と場合、人によってさまざまで、個人的には以下のようなものを感じます。

・遠くから何かがやってくるように、片目の眼窩のあたりに重さを感じる
・片目が熱くなるように感じる
・ピリピリ痺れるような軽い痛みを感じる
・目がゴロゴロする
・眼鏡をしていると目や眉間が痛い
・眉間がツーンとする
・気持悪くなる、吐きそうになる
・呼吸が浅くなる
・脳に酸素が不足しているように感じる
・頭部が膨張しているように感じる
・生あくびが出る
・頭部を締め付けられるような痛みを感じる

 しかしこれらは自覚を強めないと感じないことも多く、気づいた時には痛みが始まっていることも多いと思います。
 群発頭痛の対処は「常に大至急」。たとえ前兆ではなく錯覚で、イミグランを損してしまったとしても苦しむよりマシと考えて、遠慮なく使用したほうがいいと体感します。
 それでも点鼻薬は薬価が高いので、どうしても逡巡してしまうのですが……使ったことがありませんが、もっと高い自己注射なんて激痛になるまで我慢してしまいそう。


【発作を防ぐには?】

 悔しいことですが、群発頭痛は「ある程度、慣れます」。
 そのため経験を積んでくると、場合によっては前もって発作の対処が可能です。

「とにかく『発作に発展する可能性』を減らす」
 時間による発作はほとんど防ぎようがありませんが、急な血管拡張による発作は、血管を拡張させないことで未然に防げます。
 ・室内気温を低くする(自分の場合は夏が軸なので、エアコンと扇風機で体温を下げます)
 ・入浴を控える(素早くシャワーのみにする。詳しくは次の項を参照)
 ・運動を控える(凝りはマッサージ程度で済ませる)
 ・熱いものを控える(スープやラーメンなど)
 ・辛いものを控える(激辛好きも一時的に封印しましょう)
 ・禁酒する(100%発作に発展するので、絶対です。それでも飲酒したい方は、アルコール依存症の治療をしましょう)

「入浴方法を徹底」
 全身をあたため、血管を拡張させる入浴は、高確率で発作に発展します。
 そのため群発期は湯船につかることは厳禁です。シャワーで済ませることになりますが、その方法も血管拡張のリスクを減らせるように対処できるといいでしょう。
 ・換気扇を回して浴室に入る
 ・シャワーの温度を低く設定する
 ・洗い流したあと、頭部や全身を冷水で引き締める
 ・ドライヤーは冷風または扇風機で済ませる
 ・湯あがりにアイシングしてエアコンや扇風機に当たり、冷水を飲む
……それでも、発作が来る時は来ます。脱衣所や湯あがりにイミグランを用意しておきましょう。

「時間に合わせて錠剤を服用する」
 一定の時間に起こることが多い群発頭痛。それにイミグラン錠剤の消化ペースを考え、40分~1時間前に服用すると痛みをやり過ごすことが可能です。
 しかし多少のズレで無効果に終わることも多く、錠剤での予防は完全にはできません。かといって点鼻では消化時間がないため予防に用いるのが難しく、およそムダ撃ちになります。

「軽度の場合は錠剤+頭部マッサージ」
 群発期に入りたてでは激痛のくりかえしのためイミグラン点鼻薬に頼るほかありませんが、痛みや頻度がゆるくなってくると、片頭痛に似た反応になることが多くあります。
 ちょっとつらいが、イミグランを使用するまででもない。そんな時は薬価の安い錠剤を服用し、頭部マッサージをおこなうと痛みや違和感が消失することがあります。
 これで消える場合、おそらく群発期は収束に向かっているという証拠です。がんばれ!


【「時間に備えて錠剤摂取」は諸刃の剣】

 対処法で紹介しましたが、実はこの方法、失敗するとけっこう痛手を負います。
 使用している薬や個人差もありますが、どうにも僕は「イミグランの錠剤」があまり合わない。というのも、副作用が強いのです。
 呼吸が浅く細くなり、吐き気に似た気持悪さを覚え、全身がだるくなる。さらに眠くなることもある。予兆がそのまま倍加したようなつらさを覚えます。あくまで個人差ですが、ジェネリックだともっとひどい。
 発作を封じることに成功したならまだいいのですが、失敗した場合はさらにイミグラン点鼻も処置しなくては耐えられなくなります。基本的に連用は禁止されているので、発作がおさまっても、もちろん体への負担も大きくなります。
 前兆を感じるたびに「これは錠剤で対処できる」「これは最初から点鼻だ」と的確に判断できるといいのですが、点鼻薬の薬価が高いこともあり、どうしても逡巡してしまいがち。
 後悔するぐらいなら、最初から点鼻薬を使ってしまいましょう。


【レベルごと痛みの目安】

 これこそ体感ですが、群発頭痛の痛みには「レベル」があります。
 点鼻のタイミングをつかめないうちは最大値まで達してしまい、苦しむことが多いと思いますが、慣れてくると早めに処方し、対処できてきます。
 頭痛学会では「3段階」、媒体によっては「10段階」で痛みを可視化しますが、僕は個人的に「5段階」に分けています。本当は10のところを5に簡略化したような感じなので、個人によって使い分ければ感じやすくなると思います。
 個人的な体感なので、あくまで話程度に参考にしていただけると幸いです。

 Lv1で点鼻→ Lv1のまま消えるか、Lv2で止まる(0分~10分)
 Lv2で点鼻→ Lv2のまま消えるか、Lv3で止まるか、Lv4で止まる(20分~40分)
 Lv3で点鼻→ Lv4で止まるか、Lv5まで到達する(30分~60分以上)
 Lv4で点鼻→ Lv5まで到達する(60分以上)
 Lv5で点鼻→ 消失まで1時間~2時間かかる

 [Lv1(前兆)5分間程度]
 ・少し眉間がツーンとする
 ・メガネをしていると少し目が痛く感じる
 ・少し目がゴロゴロする
 ・少し息苦しくなる
 ・ぼんやりと気持悪くなる
 ・生あくびが出る
 ※軽度なので気づかないことも多くタイミングをつかみづらいが、ここで点鼻できれば最善

 [Lv2(軽度)5分間程度]
 ・ぼんやりとした痛み
 ・前兆の現象が強く、はっきりしてくる
 ・意識がもやもやする
 ・眉間が強くツーンとする
 ・目が痛く感じてメガネを外したくなる
 ・目がゴロゴロする
 ・息苦しくなる
 ・はっきり気持悪くなる
 ・やたらと生あくびが出る
 ・ふらつき始めて座りたくなる
 ※できればここまでに点鼻すれば、Lv3程度で済むことが多い(Lv4まで進むことも少なくない)

 [Lv3(中度)10分程度でLv4へ、ここで止まると30分程度]
 ・はっきりとした痛み
 ・脈打つような、締めつけられるような痛み
 ・ジンジン→ ドクンドクン→ ズキンズキンと、断続的に感じる痛みが強くなる
 ・ふらつきが強くなり、平衡感覚が崩れ、座っていられなくなる
 ・もうあくびは出ない
 ※点鼻が間に合う最後のタイミングで、Lv4で済むこともあればLv5に入って少しで止まることもある

 [Lv4(重度)10分程度でLv5へ、ここで止まると30分~1時間程度]
 ・鋭く、断続的な痛み(波がある)
 ・横になるしかなくなる
 ・頭部をギュウウウウ、と圧迫されているような痛みに、鋭い痛みが重なる
 ・眼球が強く圧迫されるような、握られているような痛み
 ・頭蓋骨に小さいヒビが入っていくような痛み
 ・こめかみから頭頂部まで強くズキンと痛みが響くことも多い
 ・うめいて、もがき始める(まだギリギリ声をあげずにいられる)
 ※ここで点鼻してもLv5に進んでしまう

 [Lv5(激痛)1時間~3時間]
 ・鋭く、恒久的な痛み(波ではなく、常にピーク)
 ・眼球がスイカ大に膨張して、骨に大きなヒビが入って壊されていくような極度の痛み
 ・眼球が高濃度の塩酸に浸され、眼窩もろとも燃えているようなイメージ
 ・声をあげ、手足をバタバタせずにはいられなくなる
 ※ここまで到達すると点鼻してから1時間~2時間程度続く


【カルシウム拮抗薬について】

 群発頭痛患者は、激痛の際に使用するイミグランだけでなく、食後に服用する「ワソラン」などのカルシウム拮抗薬(ベラパミル)を使用している方も多いと思います。
 このカルシウム拮抗薬は、群発頭痛が起こる間隔をあけるものとして認知されています。そのため予防療法として併用される事が多く、軽度の痛みをこれらで回避しているという記事も目にします(が、そんなことが可能とは思えません)。
 僕はワソランを使用していますが、この薬が、効いているのか効いていないのかわからない。本当に発作の間隔が伸びているのか? いつも体感でしかないので、はっきりとしたことは言えないのです。そのため病院でもらって服用したり、もらうのをやめたり、のくりかえしでした。
 そこで「頭痛ダイアリー」を印刷し、毎日の痛みを「可視化」してみました。すると、目に見えて発作が減っています!
 群発頭痛は激痛なので、1回でも甚大な被害を受けたように感じます。そのため、回数や頻度、痛みの程度などに向ける意識が薄くなっていたのだと実感しました。これも「やらないよしマシ」だったのです。

 しかし、最初にワソランを処方された際、ドクターに気になることを言われました。
「発作を減らす、というより発作の間隔をあけてくれるが、どういうわけか群発期そのものが伸びてしまう」
 これは本当なのでしょうか?
 あくまで体感ですが、本当かもしれません。ワソランの効果が実感できなかった頃は、激しい痛みの回数が多かったものの、群発期は1~2ヶ月で収束し、寛解期に戻りました。
 頭痛ダイアリーでワソランの効果を実感してから常に服用していると、たしかに「激痛」は目に見えて減っています。発作の回数も減っています。しかし今回は群発期そのものが、3ヶ月以上になってしまいました。
 体感ですし、統計的な確証はありませんが……カルシウム拮抗薬を利用するかどうかは「激痛が多く、短い群発期」と「激痛が少なく、長い群発期」のどちらを選ぶか? という選択にもなりそうです。
 痛いのも長いのも、どちらもつらいんですけどね……。


【「頭痛日記」をつけよう】

 そんなふうに、可視化することで初めて、自分の群発頭痛について知ることが多くありました。
 群発期は「どうして自分だけ……」と投げやりになってしまいがちですが、くじけず、日記をつけてみることで対処法や、解決の糸口になることも多くあります。
 さまざまな会社や媒体が提供していますが、ここでは日本頭痛学会の「頭痛ダイアリー」(PDF)へのリンクを掲載しておきます。
   ↓
https://www.jhsnet.net/dr_medical_diary.html


【思い出し頭痛】

 群発期の終わりかけ。発作がなくなり、もう大丈夫かな? と思っていたところ……また急に激痛!
 そのせいで、しまおうとしていたイミグランを引っ張り出す。意外とよくあることのようです。
 これを個人的に「思い出し頭痛」と呼んでいます。終わったようでいて、反応がなくなっただけ。つまり正確には群発期の最中で、ほとんど発作がなくなったのに、思い出したように痛みがぶり返す。
 激痛が何度か起こることもありますし、微妙な痛みや前兆を長めの期間でくりかえすこともあります。入浴やアルコールでも反応しなくなったのに、と慌ててそれらを再び中断。
 終わったと思わせて、またか……と残念になってしまいますが、でも終わりかけているのは確かなこと。
 あくまで体感になってしまいますが、群発期は「気づいたら、終わっている」もの。過度な期待をしないで、ふと「あれ、最近痛くないぞ?」と思った頃、寛解期に入っているということが多いように思います。
 期待をすると、逆に群発頭痛がとどまっていることを感じてしまい、長く感じてしまう部分もあるかもしれませんね。
 軽くなってきたら、カルシウム拮抗薬をやめるのもいいかもしれません。飲まないことで、群発期であることを意識からなくすのも、手段のひとつかもしれませんから。


【気候変動の影響もある】

 2020年、個人的に最も長い群発期を体験しています。
 今までは短くて1ヶ月程度、長くても2ヶ月程度でしたが、今回は3ヶ月を越えました。一度、発作がまったくなくなり、アルコールも摂取できたので寛解期に入ったように感じていたのですが、直後に「思い出し頭痛」のような激痛。そのままずるずると、長く続いています。
 なぜ、こんなに長く続くのか?
 確実なことは言えませんが、2020年は春から夏にかけての気候変動が激しい年。4月に春の陽気から夏日へ、5月には夏日と猛暑、6月になると猛暑と梅雨、そして7月は梅雨と寒い日と夏日が入れ替わり……その間、僕はずっと群発期にいました。
 収束に向かっているのを感じているものの、まだ完全には群発期から脱していないので言い切れませんが、おそらく気候が安定して「完全に夏」になったら、寛解期に入るのではないかと感じています。
 不思議なことですが、これにより、気候が安定しない時期は群発頭痛にも注意ということが体感できました。


【閃輝暗点(さんきあんてん)は群発サインではない】

 群発頭痛を題材にしたり、キャラクターが群発頭痛を罹患している物語は、小説でも漫画でもほとんどないようです。
 しかし変わったことを書きたいWeb小説にはいくつかあり、その扱われ方が「いざという時に限って襲ってきて、邪魔をするものの、精神力で打ち勝つ、自分の中にいる弱い自分と戦う」みたいな扱いで苦笑しました。
 また別のものには、歯車のようなプリズムの「閃輝暗点」が現出し、もうすぐ群発頭痛が来る! という表現もありました。これも苦い表現です。
 もちろん、どちらも誤りです。群発頭痛患者からすれば「真剣に悩んでいる患者を馬鹿にする気か!」と思ってしまいそうです。

 閃輝暗点は、主に激しい偏頭痛の前兆として知られています。先の小説の作者は、群発頭痛と混同しているのでしょう。
 群発頭痛患者の僕も一時期、閃輝暗点がやたら起こりました。まず視界が屈折する眼鏡をしていられなくなり、画素が集まっているパソコンの画面は何が表示されているのかわからない。何かの実像を見ると、かぶさるようにプリズムが見えて邪魔され、よく見えない。
 数分から10分もすれば消えるので、休めばそこまでの支障はありませんでした。しかし少ないネット情報をつなぎ合わせて認識していたので「激痛が来る!」とビクビクしたものです。それでもプリズムが見えた直後に激痛に襲われたことは、おそらく一度もありませんでした。
 閃輝暗点は毎日のように起こることがあり、それでも発作には発展しない。偏頭痛にもならない。他の心配になってしまいそうですが……結果として「見えただけ」でした。
 そうして現在、閃輝暗点はまったく現出しません。どんな要因でどんな時に出るのか、結局わかりませんでした。
 あくまで体感ですが「閃輝暗点は群発頭痛の発作とは無関係」と言えるのかもしれません。
 なぜわからないかというと、群発頭痛は患者のブログや手記などが少なく、「お医者さんが勉強したもの」「整骨院のPR」ばかりが表示されるので、自分の体感以外、調べられないのです……。


【世の群発患者にお願い】

 そこで、お願いです。
 群発頭痛の患者さん、積極的にブログやSNS、手記などを書きませんか?
 現在、インターネットでは前述のように「医者のページ」「宣伝」ばかりがヒットして、悩んでいる患者が調べたいことがわかりません。ネットの検索は、そもそも記事があって、そこを閲覧することでヒットしやすくなります。もとより検索に引っかからない媒体もありますが、一般的なブログなどはヒットします。
 体験者の具体的な話があれば、さまざまな対処ができる。
 だからこそ僕は、その末節になれればと思い、群発頭痛について記しています。
 体験でもいいから、情報の共有こそが、患者を導くものではないか……という希望を込めて。


 今期、とうとう帯状疱疹ワクチンを摂取しました。
 その効果は大きな声で宣言できるものでもなく、また次回の群発期を迎えてみないとわからないこともあるので、今回の記述からは除外しています。しかし、やがて執筆する可能性も高いと思います。
 そうした情報も、共有できれば。
 苦しんでいるだけではなく、皆さん、声を上げませんか?
 すべての群発患者に、少しでも平穏が訪れるように……!

 そうしたお願いでもって、今回は筆を止めます。
 皆さん、負けずに進みましょう。少しずつでも!

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