15分の面会
【15分間の面会】
2019年7月3日のインスタグラムの投稿に、旧バンブーに何らかの方法で火を放ったと考えられる人物が、放火とはまた違う複数の罪で警察に拘留されている間に、僕、一人で面会にいってきた内容を少し綴っている。
さすがにその投稿では、ぼかして、ふわっとした内容だったんだけど、ここでは少し詳細に書こうと思う。自分自身が忘れてしまいそうな部分もあるから、備忘録としての為でもある。
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火災から二ヶ月後、お世話になった刑事さんから電話があり、僕が犯人だと信じている人物が別の複数の罪で捕まったけど、どうしても証拠が見つからず放火罪を認めさすことは出来なかったと連絡があった。
その人物の拘留期間がもうじき終わり、刑務所に送致されることになると。
このまま会わずに刑務所に送られると、罪の自覚が無くなることや、僕がそいつを犯人だと信じていることを知らずに生きていくこを懸念した。
周りには会いにいくのは辞めた方がいいんじゃないか?と声を揃えて言われたが、店の未来を見据えて会いに行くことを決めた。
15分の面会後には、立場・役職がありそうな担当刑事さんが、『ここまで竹内さんも色々と協力してくれたからこんな事を言いますが』と、小さな声で『恐らく僕たち(警察側)も放火犯だと思っています』と言ってくれた。
捕まってはいないけど、その言葉には今でも少し救われている。
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火災前後の容疑者のインスタグラムからは、彼の周りの情報提供通り、確かに鬱らしい、支離滅裂で猟奇的な投稿が多くて、それを見る度に吐き気と恐怖が襲ってきていた。
容疑者が火災の数日後に、【バンブーの復活の為】という名目で、火災現場に募金箱を設置した投稿を、見たときなんかは、本当に悔しくてどうにかなりそうだった。
驚くことに容疑者からは僕のところまでラインで連絡がきて、内容にガタガタと震えてしまった。
『竹内さん、火災にあったって本当ですか?僕に出きることがあれば何でもするのでいってください』
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僕の店を燃やしてでも、誰も構ってくれなくなった彼の周りの 4人の友人(彼は僕のお店で5人でグループを形成していた)に、構ってほしかったんだろうな。
【お前ら、竹内さんのお店を復活させるぞ!】とラインを送っていた。そこまでして仲間に存在を認めてほしかったんだと思う。
手段を選ばなくて、もはや人としての良心をなくし、猟奇的すぎて誰もラインのツイートに反応ていなかった。(会話内容を後日メンバーの一人に見させてもらいました)。
自分がヒーローになり、 4人に頼られ、さすが◯◯さん等と称賛されるビジョンやストーリーが頭の中で先行していたんだろうな。
だって、君はすでに、僕にバンブーの不満や意見をありったけ伝えて僕との口論の末に出ていってから1ヶ月は経っていたから、再建を張り切る立場・権利はないし、何より鬱状態だったから、そんな支離滅裂なことも辻褄が合ってくる。
その投稿を見たときは、僕は怒りで震え上がり、ガタガタしながらも、『犯人が現場にいるんで捕まえてください』って取り乱すように警察に電話をしていた。
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承認欲求の権化とも言える、人の醜すぎる部分に触れると、激しい怒りであんなにも震えて、あんなにも取り乱すんだな、と自分で痛感した。
その電話でなだめるように、一時間くらい親身になって電話相手をしてくれた当直の刑事さんには、今でも感謝している。
ちなみにその刑事さんも、序盤は落ち着いて話を聞いてくれてたんだが、刑事さん自身もヒートアップしてきて、
『そいつの事、早く捕まえたい』とか、いうもんだから、僕が
『感情移入してくれるのは嬉しいですけど、刑事さんが、そいつとか言って大丈夫なんですか?(笑)』と返すと、
『話を聞いてると、そいつのことを捕まえたくて捕まえたくて(笑)』と、少し笑いが起きるくらい和んだのも、今では良い思い出だ。
その刑事さんが、『犯人の言動に一喜一憂しないで、ボロを出すかもしれないので、泳がしておくために今は静観しましょう』と、アドバイスをいただいた。
仲間からのラインに反応がないと、容疑者は『なんだお前らそんなもんかよ』的な感じの投稿があり、数日後に募金箱を撤去していた。
善意の募金活動というよりも、バンブーの為という建前で仲間に振り向いてもらいたかったんだろうな、という心理がひしひしと伝わってくる。
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長すぎる前置きは終わり、拘留場に面会にいった理由はただひとつ。
【再建できることになったバンブーに関わってほしくないから】
このまま、放火の罪を認めさすことができなかったら、執行猶予で刑務所から出てきたときに、また何食わぬ顔でバンブーに来店する可能性がある。そして、バンブーじゃなくてもクライミングを続ける可能性があるから、それらを潰すために僕の想いを伝えに行こうと思った。
もちろん犯人だと思っている人物に、好き好んで会いにいくようなサイコパスのようなイカれたメンタルは僕だって持ち合わせていない。
新店舗に来てくれるだろう、お客様の安全や安心を考えると、僕が勇気を振り絞って、このときに彼に会いにいったほうが、未来に繋がると感じたのである。
刑務所から出てから彼に会ったとしても、放火では捕まっていないので言葉は響かないだろうし、拘留されている状態の方がメンタルも弱っているだろうし、僕自身の身の安全においても、後者のほうが安全だと判断した。
最初は面会に行くことを反対していた担当刑事さんも、そういう想いで面会に行くことを相談すると、
『確かに新店舗の為にはそうしたほうが良さそうですね。。』と言ってくれた。
面会は15分。
言いたいとは山程あるけど、伝えたいことはただ一つ。
新店舗には来るなよっていう想い。
『この際、火災の原因なんて、もはやどうでもいい』
『俺や、バンブーのお客さん、そして三重のクライマーも、みんなお前の事を犯人だと思っている』
『だから秋ごろには再建できることになったけど、新店舗には来るなよ』
それを最後の5分間で伝えると、
取り乱して、『本当に僕がやったんじゃないんです』と取り乱していた。
『ポリグラフ(嘘発見器)も反応しなかったんで、結果をプリントアウトするので信じてください』
『誰がそんなもんで信じるねん』
とバタバタしながら15分が終わってしまった。
しゃべってる間は落ち着いていたつもりだったが、終わったら、急にまたガタガタし始めた。
テレビでよく見る、薄暗い面会室は、幽霊でも出そうなくらい物騒な雰囲気だった。
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バンブーを立ち上げて5年がたって、6年目に突入した。
旧店舗を含めるとこれまで何千人ものお客さんに来店いただいている。お客さんと揉めるようなことは本当になくて、99%以上の方が感じの良い来店になる
しかし、この面会することで、初の出入り禁止者をだした。
彼が執行猶予で出てきてからの投稿もチェックさせてもらっているが、あんなに彼が固執していた【クライミング】にも見切りをつけて、普通の生活を送っているようだ。
僕も振り返らずにまた同じ道を歩んでいるので、火災の原因・犯人には執着はないが、彼が刑務所から出てきた直後は、バンブーじゃないところで【クライミング】を続けていたり、【5人のグループライン】にも連絡が来るのが、とても怖かった。
真の罪を認めないやつが野放しになって、変わらずクライミングをしていることが気持ち悪かったんだけど、今はクライミングから離れているから、胸がざわつかずに、平穏な日々を送れている。
こんな投稿をしないほうが、店のイメージがクリーンに保たれるのは重々承知だが、こういった表に出ることのない出入り禁止の経緯なども、他のジムオーナや、犯罪に巻き込まれた人に少しは響かせられることを知っているので、僕はそちらの選択を選ぶ。
クリーンだから着いてくるお客さんは何かあったときにすぐに離れていくものだと思うが、僕やバンブーのネガティブな部分も認めてくれた上でバンブーを選んでくれる人が、真の常連やお客様だと思う。
だから火災の事を知らないお客様にも知って欲しくて、覚悟を持って綴ったつもりである。
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