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マーケティングにおけるターゲットとペルソナの明確な違い

マーケティングにおいて、ターゲットとペルソナがしばしば混同されて語られるケースがある。事業においても、ターゲットの策定のみが行われて、ペルソナは作られないままであることも、実は珍しくない。

しかしこの2つは明確に違うものであり、マーケティングにおいてはペルソナの設計は必要不可欠なものである。


ターゲットとペルソナは役割や目的が違う

わかりやすいように、ターゲットとペルソナ、それぞれについて「概要」「目的」「成果物の例」の3点を比較しよう。


ペルソナを作りたがらない理由

ペルソナを作らず、ターゲットに向けてマーケティング施策を行うケースは少なくない。その理由は、

一個人に向けて行った施策が、ターゲット市場全体に影響を及ぼせるのか?

という懸念が解消されないからだ。そしてもうひとつ、

ターゲットに向けて行った施策であれば、(その中にペルソナも含んでいるのだから)ペルソナにも十分に有効なはずだ(だからターゲットさえあれば十分である)。

と考えるからであろう。

ペルソナを作るには、非常に労力が必要だ。ターゲットとして定めた市場について、より深く調査・分析を行わなければならない。ときにはインタビューを行ったり、プロトタイプテストを行ったりする。

そんな労力をかけるぐらいなら「ターゲット」というより包括的で広範囲な相手に対して施策を打ったほうが、広く、そして多くの成果が得られる。と、考えるのが一般的だ。

しかし結論から言って、これは間違いである。

施策を行うためには、それを届ける相手が誰なのかを知らなければならない。ユーザーを具体的に、そして鮮明にイメージできなければ、効果的なマーケティング施策は打てないのである。

ペルソナへ行った施策ががターゲットに波及する理由

ペルソナに基づいて施策を行う場合、たしかにその施策が特定の個人や非常に限定されたグループに向けられることになる。このアプローチによるターゲット全体への影響力について懸念される気持ちはわかる。

しかし、適切に実施されたペルソナベースのマーケティング戦略は、実際にはターゲット市場全体に対しても大きな影響を及ぼすことができる。その理由は以下の通りだ。

1. 共通のニーズと痛点

ペルソナは、ターゲット市場内の特定のセグメントを代表するもの。

ペルソナに対して行う施策は、そのペルソナが抱えるニーズや痛点を反映しているが、これらのニーズや痛点は同じターゲット市場内の他の個人にも共通していることが多い。

2. エンゲージメントの波及効果

特定のペルソナに深く響くコンテンツは、高いエンゲージメントを生み出す傾向がある。

SNSなどのプラットフォームでは、エンゲージメントの高いコンテンツはより広範囲に拡散され、ターゲット市場の他のセグメントにも届きやすくなる。

3. インサイトの積み重ね

ひとつのペルソナに向けた施策から得られる学びやインサイトは、他のペルソナやターゲット市場全体に対する施策にも活かすことができる。

特定のアプローチがうまくいった場合、その成功要因を分析し、他のセグメントにも適用することで、より広範な影響を生み出すことが可能。

4. マーケティングメッセージの最適化

ペルソナに基づいた施策から得られる具体的なフィードバックとデータを再利用すれば、ターゲット市場全体に対するアプローチの効果を高めることができる。

特定のペルソナに響いた言葉遣いや画像などの要素は、他のマーケティングキャンペーンやコミュニケーション戦略にも応用可能となる。

5. 広範囲へのアピール

はじめは限定的なグループに焦点を当てたコンテンツやキャンペーンも、時間をかけてターゲット市場全体に影響を与えることがある。

ペルソナに基づいて作成されたストーリーやメッセージが共感を呼び、その話題が広がることで、より多くの人々にリーチすることとなる。

また、特定のペルソナに特化した施策が口コミを通じて広がることで、ブランドの認知度と関心が全体的に向上する。

6. 持続可能な関係の構築

ペルソナに焦点を当てることで、顧客とより深く、持続可能な関係が構築できる。

ペルソナを通じて得られる洞察を活用し、顧客の変化するニーズに柔軟に対応することで、長期的な顧客ロイヤルティを築くことが可能。これは、ターゲット市場全体の満足度とエンゲージメントの向上にも繋がる。

ペルソナを作らず、ターゲットに向けて施策を行ってはいけない理由

最後に、ペルソナを作らず、ターゲットに向けて施策を行った場合、どのようなデメリットがあるかを示しておこう。

1. メッセージの一般性と非効率性

メッセージが一般的になりすぎて、誰にでも当てはまるような内容になりがち。その結果、誰にとっても魅力的ではあるけれども、誰にとっても特別ではないメッセージになるリスクがある。

広範囲にわたる一般的なメッセージは、特定のニーズや痛点に対して響かない。そのため、マーケティングリソースの浪費につながる可能性がある。特に、高い競争が存在する市場では、明確な差別化要因なしに顧客の注意を引くことが難しい。

2. エンゲージメントの欠如

ペルソナに基づくマーケティング施策は、個人のニーズ、関心事、好みに合わせてパーソナライズされています。これにより、顧客との高いエンゲージメントが期待できる。

一方で、ターゲット市場全体に対する一般的なアプローチでは、このようなパーソナライズが欠けているため、顧客の関心を引くことが難しくなる。

3. コンバージョン率の低下

一般的なターゲット市場に向けたアプローチでは、顧客の具体的なニーズに対応していないため、コンバージョン率が低下する懸念がある。

4. 顧客理解の浅さ

ペルソナの作成プロセスを通じて、企業は顧客について深く理解する機会を得る。この理解は、製品開発、顧客サービス、コンテンツ作成など、ビジネスのあらゆる側面において価値をもたらす。

ペルソナを作成しないと、このような深い顧客理解を逃すことになり、結果として顧客との関係構築において不利になってしまう。




誰にでも刺さるような耳障りの良い言葉は、結局のところ、誰の記憶にも残らないということだ。


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