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南アフリカから新年アマピアノ🕺-Let's make a plan

2024年になりました。
そんなに深いことは書きませんが、今年はヨハネスブルグで年を越しました。

いろんな事件も多いので、ライトなカルチャーエントリーを書こうと思います。


南アフリカでは、新年よりもクリスマスの方が大事で、1月1日は休みであるものの、2日から働き始めるという人も珍しくありません。

それでも、12月(December)が動詞になる国(要は、パーティを楽しむ、12月を堪能するということ)なので、12月最後の年越しは、みんなウキウキモードでした。

日本で過ごした時間も長いので、私の中ではクリスマスは平日、大晦日と三が日こそ休みでしょ!という感覚と、12月は冬でしょう(南アフリカは南半球にあるので夏真っ盛り)という感覚がどうしても抜けないのですが、今年は南アフリカにいることなので、こちらの郷に従いました。

(南アフリカで過ごすにあたって、家族としてどんなふうにクリスマスと正月を過ごしたいかは話さないといけないなーと思っています。文化背景が違う結婚はそんなもの。)

今年最後のアマピアノ

アマピアノというのは、南アフリカで生まれたハウス系の音楽です。最近は他のアフリカ諸国はもちろん、ヨーロッパなんかでも流行っていて、日本でもアマピアノのファンコミュニティがあるとか。

ジャンルについての説明は、ちょくちょく日本語でも記事があるので貼っておきます。

(ちなみに、この記事にも関わっているmitokonさん、この前南アフリカにいらっしゃった時にお会いできました〜!日本のアマピアノ第一人者!)

私の2023年のプレイリストの上位は、このアマピアノが溢れています。
ヨハネスブルグであれば、あちこちでアマピアノの音楽が聞こえてくるので、自然な流れですね。

カウントダウンの時に流れていた、まさに今年を象徴するアマピアノがこちら。

曲の音自体も、歌詞がわからなくてもめちゃいいのですが、この内容がまさに(アフリカ系)南アフリカ人のリアリティとマインドセットが反映されてます。

南アフリカのMake a plan

この曲の歌詞は、すごく短いフレーズが繰り返し歌われているのですが、意訳するとこんな感じ。(元の言語はZulu(ズールー)語ですが、南アフリカ人のパートナーに訳してもらいました)

iPlanというのは、Plan(計画する)ということ。amaやiは、ズールー語やXhosa(コサ)語で使われる冠詞です。

Wherever you are, I love you.
あなたがどこにいようと、私はあなたを愛している。
But there is no work. I’m short of money.
でも仕事はなくて、お金は足りない。
But when you love someone, you will make a plan.
でも愛する人がいる時は、なんとかする(計画する)のさ。

iPlanの歌詞を意訳

このフレーズがひたすら繰り返されています。

MVでは、初めに女性が電話をして、学費が高騰して払えないからなんとかしてほしい、とお願いするところから始まります。

失業率50%とも言われる南アフリカの若者のリアリティを表していて、多くの人は、何もなければなんとかできる暮らしをしているものの、急な出費(事故や病気)や価格高騰には対応できない状態。

この"Make a plan"というフレーズは、南アフリカでは結構聞くのですが、前々から計画を立てるという意味ではなく、この曲のように、「(何かが起こったときに)ある選択肢の中でどうにかする(ための計画を立てる)」というニュアンスが強い表現です。

不確実要素が多い社会だからこそ、臨機応変に、力強く生きる南アフリカ人のマインドセットが現れています。

この曲のMVの最後は、(おそらく)音楽プロデューサーの掃除係になった主人公が、休憩時間に曲を作って、プロデューサーの目に留まってデビューして大成功するというサクセスストーリー(笑)なのですが、世界一のジニ係数に表れているように、ものすごい格差社会の中でも、アイデンティティを持って生きる南アフリカの姿が表されています。

それでも、前を向いて生きるのだと。

この点、日本のカルチャーと南アフリカのカルチャーのギャップが大きくて、だからこそ学べることが多いと思っています。

この南アフリカにあるレジリエンス(しなやかさ)やフレキシビリティ(柔軟性)をうまく体得していくと、生きやすくなる場面ってたくさんあるんじゃないかなーと思うんです。

逆にいうと無計画(社会的に計画を立てにくいこともありますが)であることで、イライラすることも、私自身はあるのですが、バランス感覚を持っていきたいし、このいわば南アフリカ流の「為せば為る」のような精神に救われることもあります。

アマピアノは、南アフリカカルチャーの1番の教科書かも

アマピアノのような南アフリカの黒人音楽は、アパルトヘイトの時代から、レジスタンス(抵抗)やストラグル(苦難)を表現しながら、その中から希望を見出すものが多いです。

(近年のアマピアノだと、中にはパーティに行こうぜ!みたいなのもあるけど)

南アフリカには11の公用語があり、そのうち9語がアフリカ系の人々の母語(Nguni語と呼ばれる種類の言語)なのですが、ヨハネスブルグやプレトリアなどの大都市で生まれたアマピアノには、さまざまな言語がミックスして使われている曲もたくさんあります。

話者の割合が多いズールーとコサ語が多いことは多いのですが(ちなみにこの2言語は方言とも言えるくらい似ているので、曲の中のシンプルなフレーズだとどっちか母語の人にもわからないくらいだと言います※出典はコサ語が母語の親戚)、中には5言語以上が一つの曲に入っていることもあり、南アフリカ各地から人が集まる都市のタウンシップカルチャーを表しています。

歌詞で多くを語らない曲が多いので、解釈は様々なのですが、両親が子どもに語りかけるような曲もあります(例えばNana Tsulaは「泣かないで」というニュアンスの曲なのですが、両親が子どもに、自分達の貧困について嘆かないで。あなたはまだ若い、泣かないで。Make a plan(ここでも出てきます)、と語りかけるように解釈できる曲です)。

多くの南アフリカ人が、この曲のような境遇に共感を覚えるのも事実。

南アフリカ社会のコンテクストを理解(かつ複数言語を理解する必要がありますが、)すると、さらに深みが増すことに、遅ればせながら気づき、もうちょっと勉強してみたいな、と思った新年です。


アメリカ大使館前では

と、珍しく文化的なことをつらつらを書きましたが、新年、南アフリカにあるアメリカ大使館の前では、ガザの停戦を求めるカウントダウンがありました。

こういう呼びかけも、カウントダウンの8時間前くらいにアナウンスされる国だけど、多くの人が集まっていて、私もオンラインではありますが、スマホで見届けました。

南アフリカ政府は、2023年の10月以前、民主化した当初から、確固としたスタンスで占領やアパルトヘイトに反対しています。

こんな感じで、これからもゆるゆると書いていきますので、今年もよろしくお願いします。

震災や紛争、迫害など、さまざまな境遇の人に祈りを送ります🙏

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