YouTubeで流れる漫画広告の主人公の話

俺の名前はバナユキ。
どこにでもいる至って普通の会社員だ。
平日は仕事をして、休日は好きなことをして過ごす。
ささやかだけど、おおかた不自由なく毎日を過ごしている。
しかし、そんな俺にもひとつだけ悩みがあった…
その悩みとは…

ニキビや肌荒れが酷く、全くモテないこと

昔は綺麗な肌だったのだが、最近は仕事でのストレスが重なり、日に日に肌がボロボロになっていた。

そんな俺の顔を見て女の子はみんな、「肌が汚い人はちょっと…」と言い、遠ざけられてしまう。

どうしよう…このままじゃ俺は一生独り身のままだ。
困りに困った俺は、女の子にモテモテで何より肌が綺麗な友人のマサキに相談した。

「なあマサキ…俺、肌が汚すぎて全然モテないよ、どうしよう」
「なんだよバナユキ、まだ "アレ"使ってないのか?」
「えっ… "アレ"ってなんのことだよ?」
「なんのことって、"パーフェクトハンサム" に決まってるじゃないか」
パ、パーフェクトハンサム…!?なんだよそれ!?」
「そんなことも知らないのか、パーフェクトハンサムは、株式会社イケメンズから販売されている美容化粧水のことさ。騙されたと思って使ってみてくれ」

家に帰った俺は、すぐさまインターネットを開いた。
「マサキはなんて言ってたかな…パーフェクト…パーフェクト…ハッサム?」

Googleで 「パーフェクトハッサム」と調べると、1匹のポケモンが出てきた。

(出典: https://encrypted-tbn0.gstatic.com/images?q=tbn:ANd9GcQZNUnBFYsqjPShyi-40fRyLZq0e34wlAPlkHnSXNdmZIO-NZNoY-2DnlGg&s=10)

なんだこれ…かっこいい。ハッサムと呼ばれるポケモンらしい。
どうやら、このハッサムはとても強く、パーフェクトに使いこなすなら"テクニシャン"という特性を持ったハッサムで戦うといいらしい。

俺はポケモンについてよく分からないが、「特性」とは、各々のポケモンが持つ能力のようなもので、このテクニシャンという特性は、威力の低い技の火力が増す特性らしい。
カッコいい…このハッサムで戦ってみたい。
そう思った俺はすぐさまAmazonでポケモンの最新作を購入し、眠りについた。



次の日、案の定肌がボロボロだった俺は同じ職場の後輩のイケメン、ユウジに相談した。

「なあユウジ、肌を綺麗にする方法知らないか?」
「えー先輩、パーフェクトハンサム使ってないんすか?」
パーフェクトハンサム…そういえば俺の友達もオススメって言ってたな」
「めちゃくちゃ有名ですよ!なんといっても、6種類のセラミドが存分に配合されているのが魅力ですよね!」

セラミド…?
あまり聞き慣れない言葉だったが、後輩に「セラミドってなんですか…?」と聞けるほど俺のプライドは腐りきっていなかったため、ネットで調べることにした。

Googleで「セラミド 分かりやすく」と調べる。
するとどこかの製薬会社のホームページが出てきたのでクリック。

ずらっと並ぶ文字列に見慣れないワードがふんだんに使われていたため、頭が痛くなる。

「頭痛 治療薬 オススメ」と検索すると、おそらく頭痛のせいで頭を抱えている女性が写った広告写真が出てきた。
その女性がなんとも自分好みで、その広告写真を保存し、画像検索にかけ、名前を特定する。

どうやらその女性は南條めいこという駆け出しの女優らしい。
俺はWikipediaで「南條めいこ」を検索し、出演作品を調べる。
すると、R-15映画が出てきた。さらに調べると、その映画で南條めいこは乳首を晒しているらしい。
すぐさま俺はU-NEXTでその映画名を検索する。
レンタルではあったが、その作品はあった。

俺は迷うことなく課金し、南條めいこの乳首を拝んだのだった。


さらに次の日、肌がボロボロで落ち込んでいた俺を慰めるために、親友のタクミがご飯に連れて行ってくれた。

「まあ、バナユキ。肌が綺麗になる方法はいくらでもあるよ。俺はパーフェクトハンサムっていう化粧水を使ってるんだけどさ」
パーフェクトハンサム…友達も後輩も使ってるって話してた」
「本当に凄いんだぜ?なんでも、アメリカのハーバード大学の教授が製作に関わっているんだ。ハーバード大学なんて超有名大学だろ?その教授のお墨付きなんだから悪いものなわけないよな」

ハ、ハーバード大学…!?」

俺はすぐにGoogleで「ハーバード大学 出身 有名人」と調べる。

マット・デイモントミー・リー・ジョーンズ…え!?ナタリー・ポートマンも!?へえ、すげえ」

タクミとの外食を終え、帰路についていた俺は、昔付き合ってたアヤミとバッタリ遭遇した。

「アヤミ…!?久々じゃん!元気だった?」
「え…誰?ですか?」
「なんだよ、忘れちゃったのかよ。俺だよ、バナユキだよ」
「バナユキくん…!?うそ、久しぶり。ちょっと、肌が荒れすぎて誰だか分からなかったよ

ガーーーーン

正直に言う。俺はまだアヤミのことが好きだった。
しかし、そのアヤミにさえ「肌が汚い」と言われてしまった。

俺は変わる。変わるんだ。
肌が綺麗になって、モテてやる。

そして俺はアヤミとまた…

次の日、一向に綺麗になる気配がない肌に困り果てた俺は、唯一の女友達であるミサキに相談した。

「なあミサキ、どうやったら肌綺麗になるんだ?モテたいよ、俺」
パーフェクトハンサム使ってないんだ?」
「それみんなオススメしてたな…そんなすごいのか?」
「うちの周りの男友達はみんな使ってるよ。てか、使ってないとか時代遅れっしょ」
「そうだったのか…」

時代遅れという言葉と昨日のアヤミの件。

いよいよこれを使うしかないと決心した俺は、パーフェクトハンサムを検索し、購入ページに進む。
そして、購入のボタンを押そうとした時、

ピンポーン

チャイムが鳴った。宅配業社だった。

俺は「一体なにが届いたんだ…?」と不思議に思い、ダンボールを開ける。

中身は、先日俺が注文したポケモンの最新作「ポケットモンスター スカーレット」だった。

そうだ!俺はハッサムと冒険をしなきゃいけない!

居ても立っても居られない。

俺はパソコンをすぐさま閉じ、ポケモンを起動し、夜通し楽しんだのであった。


何かを後回しにしてでも、いかなきゃいけない冒険がそこにある───

ポケモン最新作

『ポケットモンスター スカーレット・バイオレット』

好評発売中!

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