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女が腹痛を訴えたら最悪死ぬと思え

高校の定期試験期間のある日、
テスト中に「お腹が痛い」と女子生徒が崩れ落ちた。

監督は(その頃携帯電話もスマホもない)、
直近の連絡インターホンがある図書室に、
駆け込んで来た。

「女子生徒が倒れました!」

ガタン、と立ち上がったのは
アニメオタク(私、国語科)と
ゲームオタク(男性教員、国語科)。
国語の試験中だったので、質問がないか巡回して、
二人とも図書室に親和性が高いので寄り道していたのだ。

男性教員「担架、運びます!司書の先生、職員室に応援要請頼みます!(監督の)先生は教室に戻ってください!わに先生、直接保健室に行って待機お願いします!」

保健室は開いている。
テスト中に具合の悪くなる生徒が多いからだ。
私「C棟三年○クラスで女子生徒、倒れました!
腹痛を訴えています!」

五分たたないうちに担架で女子生徒が運ばれてきた。
「痛い…痛い…」
腹部をおさえて背を丸めている。

保健室の先生は、独断で救急車を呼ぶ権限がない。
校長室に電話を入れている。
「保健室では無理です!…はい、意識あります。…タクシー?そんな状態では…」

テスト中に救急車が来て生徒がテストに集中できなかったという苦情を校長は恐れていた。
馬鹿言ってんじゃねぇ、と、チャッカマンの私がインターホンをもぎ取る。

「この生徒が死んだら校長先生責任取りますね!?」

私自身が、腹痛で救急車に乗った経験がある。
入院して、まず産婦人科、続いて内科に行った。順番があるそうだ。

女が腹痛を訴えたら子宮を疑え。
まずは妊娠の可能性、子宮外妊娠・子宮破裂、一刻を争う症状をチェック、
本人の自己申告は無視。
原因が産婦人科の病気でないとわかったら、内科に回す。それが原則。

女が腹痛を訴えたら最悪死ぬ。

その経験が頭にこびりついていた。
テストと人命とどっちが大事なんだよ。

校舎付近に来たら救急車はサイレンを止めてください、と、校長が言うので、救急車は静かに到着した。
重篤な病ではなかった。
腹痛の女子生徒は親に言ったそうだ。

「知らない理科の先生たちが助けてくれた…」

私(アニメオタク国語科)も男性教員(ゲームオタク国語科)も
白衣愛用者だった。
だって、チョークで汚れるもん。
その女子生徒のクラス担当じゃなかったし。

白衣イコール理科の先生なんだね、と、笑った。
笑いごとで済んで良かった。

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