雪道を歩く 2
白い衣を羽織った木々に囲まれた空間は、厳かで静寂に包まれていた。
いつもなら肌寒く感じる森の中は暖かさを感じ、外と天邪鬼な場所なのだと感じた。
もう少し時間があったので、更に進んでいく。
緩やかな登り坂は普段ならスイスイ歩けるのに、雪が足のまとわりつき、思うように進まない。
春の私はすでに遠く前にいるのに、今の私は彼に追いつけない。
振り返ると歩幅が狭い足跡が一人分、雪道に続いていた。
目指す頂上まで後1キロぐらいになり、感覚が薄れていく足が小さな看板の前で立ち止まる。
普段なら「森へ向かう」「駐車場へ向かう」しか示さないのに、3つ目の「山頂へ向かう」を示した黒い矢印が現れていた。
誰も足を踏み入れてない真っ白な道に表れた新たな道しるべ。
しんどくても、ここまで来たなら行くしかない。
足の後ろ側が痛みつつも、道に軌跡をつけていく。
15分ぐらいかかっただろうか?、山頂にたどり着くと、白と茶色で覆われた山々が眼前に現れた。
歩き始めた場所はもう見えない所まで来た。
ふと周りを見ると、なにも書かれていない案内板があった。
それはただ雪に隠れただけなのに、誰も行かないから案内のお休みをしているのだろう。
しばらく景色を眺め、そろそろ帰ろうとした時、雪雲が新たな風と雪を運んできたので、傘を差して身を守る。
これから戻ることを考えると、余計に足取りが重くなった。
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