紗貴めぐみ 日本屈指のピンク≒パンク映画女優
皆さんお元気ですか。
東京の名画座で長らく働いたけど、コロナ下で失業して失意のどん底で一ミクロも愛情のない生まれ故郷の長野県で愛猫のナナちゃんだけを心の頼りにして生きている、物淋しい田舎者チンピラシネフィルのtanosiikagakuです。
突然ですが今回から毎月、私のリスペクトするピンク映画女優やその作品を紹介していきたいと思います。FANZAで観られる名作を紹介する題して「FANZAピンク映画ch案内所」!
ピンク映画の魅力
60年代半ばに誕生し、80年代のアダルトビデオの興隆と共に産業としては徐々に衰退しつつも、現在まで生き延びてきた日本固有の映像メディア、ピンク映画の魅力とは何か。
詩人で映画評論家の福間健二はピンク映画について「映画がぎりぎりの条件で生命をもっている場所、映画とは何かということの、まさしく裸の姿を確かめる場所」なのだと書いています。
そこでは意欲的な表現者が「あたえられた条件の中でどう工夫をつみかさねて映画を成立させるかということが、表現の一部としてはっきり画面に見えて」おり、
「作り手のいる場所と作品で描かれる世界が近」く、「必然的に、今の高級そうな文化の傾向とは逆を行くような(現実の生活空間をそのまま延長していると感じられるような)
汚れと気楽さが出ている。(中略)わたしはその汚れと気楽さの中に解き放たれている自分を意識する」といいます(「銀星倶楽部19 桃色映画天国 1980-1994」より)。
私もまたピンク映画の「汚れと気楽さ」の中に、私のうんざりした鬱屈と悲しみに寄り添ってくれる親密な「何か」との遭遇を幾度も経験し、それに勇気づけられ生かされてきたという実感があります。
この連載を通して日本が誇る永遠のオルタナティヴ文化・ピンク映画の世界の一端が伝えられたらと思います。
パンクの魅力を体現する紗貴めぐみ
さて、先に引用した福間健二の言葉にあるピンク映画の魅力(表現の根源の問い直し、作り手と作品の距離感の近さ、汚れと気楽さ等)。
それはDIYな表現の魅力であり、「パンク」の魅力と通じていると言うことも出来ると思います(福間健二の著作に倣えば、「ピンク」は「ヌーヴェルバーグ」とも親和性が高いワードでもありますが)。
そんなパンクの手触りを体現した女優として真っ先に挙げたいのが紗貴めぐみです。70年代終わりから80年代前半の数年しか活動しませんでしたが、
曽根中生監督『赤い暴行』、根岸吉太郎監督『暴行儀式』、高橋伴明監督『狼 RUNNING IS SEX』といったパンチの効きまくった主演作三本に、
主演を務めた島田紳助の彼女役を演じた井筒和幸監督『ガキ帝国』、脇役出演した若松孝二監督『水のないプール』、
ビートたけし主演のテレビドラマ『昭和四十六年 大久保清の犯罪』などの一般作も加わるのですから、そのフィルモグラフィのトンガリ具合は他の追随を許しません。
映画デビュー作『赤い暴行』では、売れないバンド(実在したハードロックバンド「デビル」)の追っかけをする少女役。
メンバーに連れ込まれてのハードな暴行場面と、その後に待っているもの哀しい顛末を印象的に演じました。
『暴行儀式』ではかつての暴走族のリーダーたちやその女たちを暴行して回る気弱な高校生男子たちを叱咤しながら引っ張っていく眩しい存在として、
陰惨な物語にリアリティと奇妙に同居するファンタジーのような詩情を添えていました。
当時の日本映画では珍しいほどあか抜けたガーリーなファッションセンスを持ちながら、しかしその眼差しはどこか内にこもったようないらだちと諦念を湛え、
例え暴行され痛めつけられる場面があったとしても、その肉体にはふてぶてしいまでの生命感が漲っています。
女優の輝きやチャーミングさをもちながらも、型にはまらないどこかぶっきらぼうな生々しい風情があり、
当時新宿の夜の街をたむろしていた普通のネエチャンが偶然映画で主役を張ってしまったような感じを醸し出していて、それがまた不思議と痛快なのです。
その独特の存在感は、熟れた凄みのある女優が多かったそれまでのピンクやロマンポルノの女優たちとも、泉じゅんや美保純、原悦子といったアイドル性の高いポルノ女優たちとも一線を画するものでした。
『狼 RUNNING IS SEX』という驚異的なブロークンイングリッシュタイトルを持つ彼女の最後の劇場用主演作は、少女のようでもあり獰猛な獣のようでもあった、それまでの彼女の演技の総決算ともいえます。
夜な夜なディスコで踊り、ヤクを飲んでラりりながら退屈な時間を紛らわせていた紗貴めぐみ演じる少女は、
汚い四畳半のアパートで床に一人這いつくばり、その日暮らしの肉体労働で食い扶持を稼ぎ、朝な夕なにランニングをして道で見つけた若い女を片っ端から強姦して回るという
ワイルド過ぎる生き方を実践している青年(演じるのはルポライター・小説家としても著名な戸井十月)とある日運命的な出会いを果たします。
ごみダメのような男の部屋で明けても暮れても獣のようにセックスする二人。
腹が減ったら近所の八百屋や肉屋に行って、服に詰め込めるだけ詰め込んでダッシュして万引き。
皿も箸もナイフもフォークもつかわず素手でがつがつ貪り喰う二人は、洞穴の中に住む古代の人類にまで退化してしまったかのようです。
四畳半の部屋に宗教の勧誘が訪れようとも、コンドームの訪問販売が訪れようと意に介さず、暗闇の中で二人の即物的な交わりが続きます。
そのデカダンな世界観は、『ラスト・タンゴ・イン・パリ』や『愛のコリーダ』のような文芸エロスもかくやという感じですが、
ヤリまくっているのは情緒豊かなパリのアパルトマンでも吉原の宿でもなく、ごみダメのような木造の四畳半アパートですから、
もっと卑近でみすぼらしい(まさに「汚れと気安さ」の溢れる)光景が繰り広げられます。二人の間ではほとんど言葉は交わされず、ただただ肉欲によって互いを貪り合っているばかりなのですが、
しかし、そんな二人の間に確かに流れた(ように見える)「愛のごとき」感情の流れも捉えられているところにこの映画の奇妙な情感があります。
徹底的に社会の流れに逆走した二人の原始人に待っている運命が、超現実的でアナーキーな笑いと共に描き出される怒涛のクライマックスも圧巻。
全編を彩る泉谷しげるや宇崎竜童の曲が映像とヒリヒリするくらいハマっているのもカッコいい。
これは日本屈指のパンクな女優のために捧げられた、文字通り「映画の裸の姿」を追求した純粋なピンク映画なのです。
現在『赤い暴行』『暴行儀式』はFANZAで配信視聴可能。『狼 RUNNING IS SEX』は、「ピンク、朱に染まれ!」という三本立てピンク映画の一編としてDMMでDVDをレンタルすることが可能です。また、(たぶん)83年に出演したOV『タウン・レース』がK-PLUSにてVHSレンタルすることが可能です(すっごーくつまらないですが!)。ビデオバブル時代のどさくさに紛れて一度VHS化されたものの、現在では実質的に幻となっている彼女の主演作『色情女狩り』(井筒和幸監督)がいつの日か観られる日が来てほしい!
作品情報
『赤い暴行』
監督:曽根中生
公開年:1980年
FANZA視聴ページ:下記リンクより視聴可能
『暴行儀式』
監督:根岸吉太郎
公開年:1980年
FANZA視聴ページ:下記リンクより視聴可能
『ピンク、朱に染まれ!』
1982年、長谷川和彦、池田敏春、石井聰亙、井筒和幸、黒沢清、相米慎二、大森一樹、高橋伴明、根岸吉太郎、大森一樹といった錚々たる映画監督達が「日本映画の殻を打ち破る!」と集結し旗揚げされたのが「ディレクターズ・カンパニー」である。本3作は、映画梁山泊とも言うべきこのディレクターズ・カンパニー第一弾作品として、「ピンク、朱に染まれ!」の刺激的なキャッチフレーズでピンク映画3本立てとして公開された。(FANZA紹介ページより)
『狼 RUNNING is SEX』
監督:高橋伴明
公開年:1982年
『さらば相棒 ROCK is SEX』
監督:宇崎竜童
公開年:1982年
『ハーレムバレンタインデイ BLOOD is SEX』
監督:泉谷しげる
公開年:1982年
FANZA紹介ページ:以下のリンクよりレンタル可能
FANZAピンク映画チャンネルはこちらから。
月額3,000円でピンク映画が見放題!
今月のPick Up!
評価の基準ですが、以下のようなものです。
🌟🌟🌟🌟🌟…最高!いますぐ抱いて!
🌟🌟🌟🌟…スキ!つきあって!
🌟🌟🌟…いいお友だちでいましょう。
🌟🌟…まあお願いされたら考えなくもないけど。
🌟…はあ、一度鏡見てからもの言いな。
『東大受験専門寮 ああつばめ荘』
🌟🌟🌟🌟
コテコテの昭和風ギャグとお色気場面、ご都合主義的展開が独特の脱力感を誘う中野貴雄監督の趣味全開のOV。しかし35㎜フィルムで撮られていた時代の重い画質のピンク映画を観馴れている身には、デジタルなピカピカの画作りは少々軽すぎるかなあ…と油断していたところに突如始まる、主人公と美人姉妹の濃厚3Pシーンのエロさにはマジで固唾を呑んだ。趣味性と商業性の兼ね合いを分かっている、真の意味で昭和の匠の仕事に感服することしきり。観終わってもしばらく琴早妃の美乳が頭から離れない。いやあ映画っていいもんだなあ。
FANZA視聴ページ:
『花のおんな相撲』
🌟🌟🌟
女闘美アクションの第一人者(第二人者を知らないが)中野貴雄の面目躍如の一作。息つく暇もなく繰り出される下品なギャグ&アクション。女性が裸で出ずっぱり故に逆にエロス度が低くなるという欠点はあるものの、そんなの見ている間はどうでもよくなってくる。水谷ケイと工藤翔子の因縁の対決がとにかくカッコいいが、荒勢やけーすけなど男優たちのテンションの高い芝居も笑いをかっさらう。敵側の女相撲取り役でしれっと伝説の女優林由美香が出演。90年代のVシネの充実度が感じ取れる。
FANZA視聴ページ:
『ネオアマゾネス 密林のロ●ータ』
🌟
「オールオーストラリアロケを敢行!」という謳い文句は華々しいが、「オーストラリア金髪美女軍団」のクオリティの著しい低さに作り手の誠意は感じられない。海外でも人気の高いピンク映画史上の珍作『レズビアンハーレム』のAV版のようなものを目指したのだろうが、何とも中途半端な出来に終わっており、名ライター東良美季(大島渚映画の常連俳優・戸浦六宏の息子)による脚本も稚拙。東良さんの書くリリカルな文章のファンだったからがっかり。女たちを統治する女王様に扮した億山朝央は、96年発表当時元オウム信者のAV女優として話題になっていたらしい。
FANZA視聴ページ:
『モザイク崩し』
🌟
何から何までけしからん。AVオタクの部屋の隣に越してきたのがレジェンドAV女優小林ひとみ。引っ越しを手伝ったお礼にヤラしてもらえる。それはそれとしてマンションの前で交通事故に遭った女性を助けたら、それが憧れのAV女優。お礼にヤラせてもらえる。それはそれとしてバイト先の上司の女も実はAV女優でなんかヤラしてもらえる。そうこうしているうちに予備校の憧れの美少女もAVに!もちろん…ってバカヤロウ!「SEXっていうのは相手への理解を深めるための行為で数を誇ることは虚しい」と意外にモラリスティックな感想を抱いている自分に気づける一本
FANZA視聴ページ:
『淫撮グラフティ』
🌟🌟🌟
みんな大好き?『週刊宝石』の「オッパイ見せて」コーナーの悩める写真家を主人公にしたなかなか斬新な一本。おそらくインスパイア元になっているのは「夢カメラ」などの藤子・F・不二雄のSF短編。徹頭徹尾下世話な世界にも関わらず、妙に一本筋が通ったSF青春映画に仕立てたのは、2000年頃「ピンク七福神」の一人と言われ現在も活躍する鎌田義孝。同じく「ピンク七福神」の女池充のデビュー作『白衣いんらん日記 濡れたまま二度、三度』の好演で映画史に記憶される吉岡まり子の姿が拝める数少ない作品としても貴重。でもあんなにいい役ではない。
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