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やきどこ

 ある地域だけの文化って、あります。雄武(おうむ)・興部(おこっぺ)・江差(えさし)町近隣のみに通じるであろう言葉、そして文化に「やきどこ」があります。「焼床」と書くのだと思います。

 先生方は「子どもたちが頑張っているのに、大人はよそ見ばかりしていている。とんでもないことなので禁止してください。」と怒っていた行動が、「やきどこ」です。

 筆者が勤務していた全校児童数40名弱のT丘小学校運動会は、「地域合同運動会」ということで、保護者を含め100名を超える大人たちが集まり、運動会会式が終わる頃には、水産会社の名前が大きく書かれた業務テントが立ち上がり、その中心に置かれた、半分に切られた足つきドラム缶の中には、競技進行につれ真っ赤な炭が炎を上げているのでした。

 もちろん網の上には、海産物や野菜やサガリ等の肉が置かれ、煙と臭いが立ち上り、片手にはビールをお持ちなのです。この日は、水産加工会社も休みになり、中国人実習生の方々も多数競技に参加される地域のビックイベントなのです。

ドラム缶を半分に切り、足をつけ大きな焼き台

「運動会では、応援しながら焼床だよな。」
これが定番でした。 う〜ん ワイルド。
 
 運動会には、寄付金等で様々な物品が用意され、地域住民参加種目の競技では、米や海産物が賞品となっていました。う〜ん リッチ。
 「焼床」とは、元々は「焼くための火床」設備を指していたものが、食べるという行動・食事料理を表すようになったものです。つまり、雄武町地域周辺で行われる焼肉などのバーベキューのことなのです。

雄武町(おうむちょう)

 雄武町は人口およそ4000人の酪農、畜産、林業そして漁業の町です。サケ、ホタテ、カニ漁等が営われていて、元々は漁師が漁の終わりに海鮮を焼いて食べていたのが「焼床」の始まりで、今では野菜や肉も焼くようになっています。地域の祭りや町の観光祭りでも必ず「焼床」の煙がモクモクと立ち上ります。もちろん各家庭でも「焼床」は日常です。


            2017(平成29)年に記述したものを再構成

           writer Hiraide Hisashi

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