『現代の航空戦:湾岸戦争』リチャード・P・ハリオン著、2000


感想

1段落が長すぎる。



本書は、ペルシャ湾岸戦争の遠因、経緯、及ぼした影響等を総括した権威ある歴史書ではない。この戦争が一段落して日も浅く、どの国も一次史料を大々的には公開してはいないので、まだこの戦いの「歴史」を書き得る時期ではないのである。したがって、サダム・フセインがクウェートに侵攻し撤退を拒んだ理由を解明しようとしたものとはなっていない。湾岸危機を外交の面から追ったものでもないし、クルド人の運命、アラブと欧米の関係、イスラエルがからむパレスティナ問題、中東諸国の相互関係等を検証しようとしたものでもない。ましてや各国の指導者たちの日々の意志決定状況を追求したものでもない。これらは当事者たちの行うべきことであり、すでに研究対象にもなっていて、将来その成果が世に問われるであろう。したがって、故S・L・A・マーシャルの書いたような臨場感あふれる戦争物語にはなっておらず、逸話のたぐいも、本書の論述に必要なごく小数しか収録していない。以上のことをまず御理解いただきたい。

本書の狙いは、湾岸戦争の軍事的行動について理解していただくとともに、いくつかの局面を浮き彫りにし、とくに多国籍軍航空部隊の活動が軍事に及ぼした影響と、将来の戦いに与える軍事的示唆を明らかにすることにある。

「航空力」という言葉を使用するが、これは各種航空機および航空部隊を現地で運用し、もしくは遠方からそれによる圧力を加えるという、広い意味で使用することを、おことわりしておく。

湾岸戦争を論ずるにあたり、まずヴェトナム戦争以後のアメリカ軍、とくに航空部隊の再建状況にふれる。この航空部隊の進化、発展の状況を理解することにより、はじめて一九九〇年八月以降の湾岸地域における航空部隊の役割が正しく理解できると考えるからである。

執筆にあたり非常に多くの人びと、機関などから、さまざまなご支援、ご協力を得た。深く感謝する。

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