坂東太郎

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『兵器市場:国際疑獄の構造 上』アンソニ・サンプソン著、TBSブリタニカ1977

日本語版に寄せて私は兵器の国際取引きについて調べ始めたころ、日本がこの問題について、きわめて重要な光を当てられることに気づいた。それは二つの大きな理由による。 きわめて明白なことだが、第1に日本は軍事、民間計画を含め、ロッキード事件が最も目立ち、広範囲にわたった国だということである。東京における贈賄行為の暴露によって、多国籍企業の工作がユニークにも観察された。それに続く日本の捜査と裁判によって、ロッキード社の活動について詳しい知識が得られた。この知識は、他のどの国で出てき

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    • 『アメリカの巨大軍需産業』広瀬隆著、集英社、2001

      べルリンの壁が崩壊し、東西対立の構図が消滅するとともに、アメリカの軍需産業は大統合に向かった。本書は、三〇兆円もの膨大な国防予算を背景に、各企業がますますその経営を合理化していった謎を解き明かす。 九九年のNATO軍によるユーゴ空爆などの地域紛争は、従来、民族対立によるものと理解されてきたが、そこに常に介在していたアメリカ製兵器の持つ意味について言及されることはなかった。 膨大な資料を分析することによって、政治家、軍との結びつきから、CIA、NASAとの連携まで、アメリ

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      • 『現代戦略論:大国間競争時代の安全保障』高橋杉雄著、並木書房、2023

        はじめに2022年は歴史に残る年となった。2月24日にロシアがウクライナに侵攻し、ロシア・ウクライナ戦争が始まったのである。これは、戦域の広さ、参加兵力の大きさ、国際社会の関わりなど、多くの点で、21世紀や冷戦終結後どころか、第二次世界大戦後最大級の戦争となっている。 特に現代の問題を扱う安全保障の専門家にとって、同時代史は必須の知識であり、「20XX年には何があったか?」と問われれば何かしら答えられるものである。しかし、専門家でなくても広く記憶されている出来事もある。ベ

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        • 『現代の航空戦:湾岸戦争』リチャード・P・ハリオン著、2000

          感想1段落が長すぎる。 序本書は、ペルシャ湾岸戦争の遠因、経緯、及ぼした影響等を総括した権威ある歴史書ではない。この戦争が一段落して日も浅く、どの国も一次史料を大々的には公開してはいないので、まだこの戦いの「歴史」を書き得る時期ではないのである。したがって、サダム・フセインがクウェートに侵攻し撤退を拒んだ理由を解明しようとしたものとはなっていない。湾岸危機を外交の面から追ったものでもないし、クルド人の運命、アラブと欧米の関係、イスラエルがからむパレスティナ問題、中東諸国の

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          『極超音速ミサイル入門』能勢伸之著、イカロス出版、2021

          はじめに~忍び寄る影、新たな脅威、極超音速ミサイルとは~本書のテーマは、中国、ロシアが開発・配備を先行し、米国その他の国々がその後を追う、新たなる兵器「極超音速ミサイル」である。 極超音速ミサイルの「極超音速」とはマッハ5以上つまり、音速の5倍以上の速さのことだが、一般にロケット・ブースターで打ち上げ、標的目指して落下する弾道ミサイルでも、極超音速に到達する。そして極超音速ミサイルは、弾道ミサイルと同じ、または同様のロケット・ブースターで打ち上げられる。 では極超音速ミサ

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          『極超音速ミサイル入門』能勢伸之著、イカロス出版、2021

          『最貧困シングルマザー』鈴木大介著、朝日新聞出版、2015

          プロローグ2009年ほどメディア上でシングルマザーの経済的窮状が報じられたことはなかったように思う。4月に自公政権下で廃止された生活保護の「母子加算」。これを復活させるかの論議に加え、緊急経済支援であった「子育て応援特別手当」の執行停止も論議を呼んだ(母子加算は09年12月に復活)。だがそんなニュースを、僕は寒々とした思いで聞いていた。 僕の前著は、親元や児童養護施設などを長期間にわたって飛び出し、生き抜くために売春を続ける家出少女たちを追った『家のない少女たち』(宝島社

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          『最貧困シングルマザー』鈴木大介著、朝日新聞出版、2015

          『ミサイルの科学:現代戦に不可欠な誘導弾の秘密に迫る』かのよしのり著、サイエンス・アイ新書、2016

          はじめに 「ミサイル戦争の時代」ということが言われます。実際はミサイル撃ち合いだけで戦争の勝敗が決まるようことありませが、しかし近代戦に不可欠の要素ではあります。 さて、軍事政治重要な一部であり軍事知識なしに国際政治、国家の生存戦略も語れるものではありません。ところが日本には、この不可欠の知識が欠落ています。1980年代、冷戦時代のことですが、ヨーロの首脳日本首相が会談たとき「SS-20」と言わて、SS-20が何のことわからなかっ、ということがありた。SS-20はソ連中距離

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          『隠された帝国:ヒューズの挑戦』大森実著、講談社、1986

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          『隠された帝国:ヒューズの挑戦』大森実著、講談社、1986

          『ハワード・ヒューズ:ヒコーキ物語』藤田勝啓著、イカロス出版、2005

          はじめにハワード・ロバード・ヒューズ・ジュニア(一九〇五~一九七六)という男がいた。彼は資産が一〇億ドルを超える、アメリカで有数の大富豪だった。父の遺産を受け継ぎ、若くして百万長者の仲間入りをしたヒューズは、様々な事業に手を出したが、情熱を注いだのは映画と航空機だった。 映画の製作に乗り出したヒューズは、三作目がアカデミー賞(監督が喜劇部門の最優秀監督賞を獲得)に輝き、超のそのあと大作「地獄の天使」では自ら監督も務め、映画界の注目を集める。のちには映画会社RKOを手中にし

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          『戦車マニアの基礎知識』三野正洋著、イカロス出版、1997

          まえがき現代の陸上戦力の中核をなしているのは、 機械化步兵 砲兵 戦車 である。なかでも圧倒的な機動力を有する戦車は、打撃力の大部分を構成している。 この事実は、ベトナム戦争(1961~1975年)に次ぐ大規模紛争であった湾岸戦争(1991年)のさい、如実に示されたのであった。 優秀な戦車群、よく訓練された乗員からなる機甲部隊の進撃を食い止めることは、たとえ大量の対戦車兵器を持ってしても困難であった。 さて第一次世界大戦(1914~1918年)に初めて実戦に投

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          『戦車マニアの基礎知識』三野正洋著、イカロス出版、1997

          『学研の大図鑑 世界の戦車・装甲車』竹内昭監修、Gakken、2003

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          『戦車』白石光著、学研パブリッシング、2013

          はじめに・・・・・・早朝の最前線は、この日もまた、ビカルディ地方に夏から秋への移ろいを告げる朝露に包まれていた。 と、ピッケルハウベを目深に被ってモーゼルGewehr98を握りしめ、塹壕に籠もり前方を窺うドイツ軍兵士たちの耳に、聞き慣れぬ音が響いてきた。太い鎖を何本も地面に引きずる音を自動車のエンジン音に重ねたようなそれは、明らかにこちらへと近づいてくる。 ほどなくして、「音の主」が霊のなかから姿を現した。「なんだ?あれは?」 ドイツ兵の誰もが、思わずこう叫んだ。 それ

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          『戦車』白石光著、学研パブリッシング、2013

          『図解 戦車』大波篤司著、新紀元社、2008

          はじめにみなさんは「戦車」と聞いてどんな言葉を思い浮かべるでしょうか? 陸戦の王者、ハイテク技術の塊、無敵の殺戮マシーン。あるいは、鉄の棺桶、冷戦時代の遺物・・・・・・。世代や立場によって様々な印象をお持ちでしょう。戦車は第一次世界大戦の末期に誕生し、第二次世界大戦特にヨーロッパの地上戦では戦場の主役となりました。朝鮮戦争や中東戦争、湾岸戦争やイラク戦争においても活躍し、投入された戦車の「量と質の差」が戦いを左右したといっても過言ではない重要な役割を果たしています。航空機や

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          『図解 戦車』大波篤司著、新紀元社、2008

          『通史 アメリカ軍用機メーカー』青木謙知著、コーエーテクモゲームス、1998

          前書き1996年12月3日、新旅客機ボーイング777の取材でシアトルにいたときのこと。広担当者が昼前にビッグ・ニュースの記者会見がある、と知らせてくれた。もちろん会見には出席できないのだが、ボーイング社では電話回線を使って会見の模様を誰でも聞くことができるシステムを採っており、さっそく広報の事務所でその電話を聞かせてもらうことにした。 その時の会見の内容は、ボーイングとマクドネル・ダグラス社が、将来の大型旅客機の研究開発について、戦略的な同盟を結ぶことで合意した、というも

          『通史 アメリカ軍用機メーカー』青木謙知著、コーエーテクモゲームス、1998

          『福祉資本主義の三つの世界』イエスタ・エスピン=アンデルセン著、1990. 引用参考文献

          引用参考文献*()つき数字は邦訳あり。 また、本書公刊時に近刊が予告されており、その後出版年度、タイトルに変更があったものは、改めてある。 255、256頁参照 Aaron, H. and Burtless, G. (eds) 1984: Retirement and Economic Behavior, Washington, DC: The Brookings Institute. Alber, J. 1982: Von Armenhaus zum Wohlfahrs

          『福祉資本主義の三つの世界』イエスタ・エスピン=アンデルセン著、1990. 引用参考文献

          『福祉資本主義の三つの世界』イエスタ・エスピン=アンデルセン著、1990

          日本語版への序文日本型福祉国家の特殊性 本書を英語で出版して以降、多くの批判を受けてきた。最も手厳しかったのは、(本書があまりにもジェンダーについて無知であるとする)フェミニストからのものと(特定の福祉国家を分類する方法について異議を表明する)各国研究の専門家からのものであった。これらは正当な批判であり、私は、分析基準を再考したり、分析枠組みに必ずしもうまく当てはまらない国についてはより慎重に吟味せざるを得なくなった。2年前、本書はスペイン語に翻訳されたが、スペインは、分

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          『福祉資本主義の三つの世界』イエスタ・エスピン=アンデ…