「最近の若者」が1X年でおっさんになるまで

 30代になって、特に最近は仕事が好きになったし、口を開けば仕事論みたいな、何時の日か見た典型的なおっさんに自分がなりつつあることに気が付いてしまったのだが、こんな私も1X年前は所謂「最近の若者」だった。

 新卒当時の私は飲み会という奴がとにかくが嫌いで嫌いで、それはもう耐えられないくらい嫌で、会社からは1秒でも早く離れたかったし、上司のおっさんの話は聞くのも苦痛だった。愛社精神は欠片も無くて、先輩の送別会をバックレたりして、どうやって会社を辞めるかだけをずっと考えていた。それがいつの間にかこうなってしまうのだから、輪廻と因果と恐ろしい。5000年前のエジプトから「最近の若いもんは…」と言われ続けてきたワケである。

  勿論、最近の若者がある日突然おっさんになったワケではなく、それまでには並一通りには過程があった。まずはうだつの上がらない日々がしばらく続き、その後ちょっとしかきっかけで仕事が少し出来る様になる。そして調子に乗り、飲み歩く様になって、その内に後輩が出来てイキり始める。そこで大きな挫折を味わう。辛酸を舐めて「俺は何を調子に乗ってたんだろう…」と茫然自失となり、でも気が付いたらその時の経験を活かして働いてて、「あ、仕事結構面白いじゃん」と思い始める…そんな綺麗に型にハマった、ステレオティピカルなサラリマンのロールを一周してきた所で今日に至った感じである。

 で、そんなある時、ふと気づいてしまった。
「あ、おっさん飲み会でが言ってたの、""""こういうこと""""か」
と。
当時、何も意味が分からなくて
「そうなんですか凄いですね」
で流していた事の意味が自分事として理解できてしまった。その瞬間は電流が流れる様で、そして自分がおっさんになったことを心から理解した。そして、おっさんが何を考えていて、どんな理不尽に耐えていて、それで後輩をどう見ていたか、言外の利、背景にあったものが、分かる様になった。

そして、もし今若者と接したら、多分自分は10年前に見た、あの飲み会で仕事の話ばかりのつまらねーおっさんになっている。そう思うとちょっと笑えてしまうのだが、きっとこれも順番なのだ。だから「俺の若い頃はな~」と昔聞いたような話をするんだと思う。きっとあの課長も同じ思いで、私につまんねー話をした。そして、多分20年前は、課長も当時の支店長世代に
「最近の若い奴はよ」
と言われて
「つまんねーおっさんだな。仕事以外の話題無いのかよ」
と思っていたんだろう。こうしておっさんの輪廻は続いていく。
そういうことで良いんだと思う。

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