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(230709)ゆるいカーブで あなたへたおれてみたら 何もきかずに 横顔で笑って

2023年7月8日(土)
久しぶりに予定のない土日だったので実家に帰ることにした。
恩田陸の『薔薇のなかの蛇』をまだ読んでないことを思い出し、準備をしながら電子版を買った。
地元に帰る電車の中で夢中で読む。
恩田陸の本を読むといつも、高校生くらいの頃にはじめて『麦の海に沈む果実』を読んだ時のことを思い出す。
面白いのは当たり前だけれど、文体があまりにも読ませる文体なのでスッと1冊を読み切ってしまい3時間ほどタイムスリップしたような気持ちになった。
それからも沢山の本を読んでいるけど、あんな風に時間感覚を狂わせる本を書くのは恩田陸だけだと思う。
今回も、半分は行きでもう半分は帰りに…と思っていたが行きの電車で最後まで読み切ってしまった。

父親が入院しているとのことで、家がだいぶ静かだった。
実家に一匹だけ居る猫が普段は父親に懐いているのだが、その父親が居ないので暇そうでかまってくれた。
普段は帰ったとて見向きもしてくれないのに。
ゆっくりドラマでも見ようと思ってタブレットを持ち帰ってきたのに、猫と遊ぶのに忙しくてタブレットは使わなかった。

2023年7月9日(日)
起きたら腰の肉がだいぶ絞れていた。
ダイエットをしていると、まぁたぶん脂肪も徐々に落ちているのだろうけど、浮腫みとかそういう関係なのか突然ある朝起きると腰が物凄く細くなっているのを自覚する時がある。
この、なんというか、皮と骨がほんの少し近づく感覚と喜びは最初から痩せている人間には味わえないものだろう。

高校生の頃に夏休みと冬休みの間だけバイトしていた洋食屋に母親とふたりで行くことになった。
当時は行列ができるお店で、忙しすぎて僕は何枚も皿を割った。
並ぶから開店時間より早く行こうと母親に提案すると、心配性すぎると言われたがなんだかんだで早く行く。
今の若い人は映えるものが好きだから洋食なんか興味ないよ、という母親に道中、Z世代の生態を切々と説いた。彼らは案外グルメだし、インスタ映えはもう古い。
お店に着くと開店20分前だがすでに若い人々の列ができており、母親に少しドヤ顔をした。
むかし食べていたのと同じ、オムライスを食べる。
店を出ると更に長い行列が出来ていて驚いた。

恩田陸を読み切ってしまったので帰りの電車では近藤聡乃の『ニューヨークで考え中』の新刊を買って読もうと思ったが、駅付近の本屋数件には置いていなかった。
仕方ないので邱永漢『わが青春の台湾 わが青春の香港』を読み返す。
僕は朝ドラが好きだし、朝ドラ然とした物語も大好きなのだが、邱永漢の本(わが青春の~だけでなく『香港・濁水渓』も!)はミン・ジン・リー『パチンコ』に匹敵する朝ドラ度である。
とにかく時代に負けず生きていく姿に胸を打たれる。
邱永漢は産みの母と育ての母がいる(別の時間軸ではなく、それぞれの母は同じ家で同居していた。片方の母が家のことをやり、もう片方の母と父が商売をやっていた)のだが、前半に織り込まれるそれぞれの母とのエピソードが何度読んでも泣ける。

東京に戻って、寄ったスーパーでグミを買った。
食べたかったグミがなくて、適当にメロンソーダ味のグミを選ぶ。
メロンソーダなんていう、アーティフィシャルで原型のよくわからない飲み物をグミだなんてわけのわからない食べ物にしてしまうとは、人間はすごいと思う。

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