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#123 伝えたいことが 伝わらぬもどかしさ

 ↑最近の(筆者内)流行り。

 息子(小学生)がチラシをくわえて走ってきたので見たら「いいぢゃなーい」と思ったので東洋文庫ミュージアムに行ってきた。「東南アジア ~交易と交流の海~」展

 古い図版が好きなのでDover社のなんかは山ほど集めているわけですが、これらの良さを説明するのがとても六づかしい©漱石。パッと見てオッとなってグッとくるわけですが、お前も一応言葉を操る人間なんだからもっとそれらしいことを……とおっしゃいますがね。「東南アジアにある香料や香辛料を巡って欧米諸国がしのぎを削った大航海時代の風景がどうたらこうたら」違う。書けば書くほど離れていく。

 その、興奮が伝わるのです。儲かるからって上からの命令で船に乗せられて幾星霜、やっとたどり着いたアンコールワット? 河の向こうから迫り来る戎克ジャンク? なんだこれは! という興奮が精密なエッチングとなり、印刷され、製版され、現在に残る。これは、ひとり旅をして見知らぬ風景をスマホでポイと撮るのとも違う。何が違うかというと、感動を遺そうとしたときに発生する労力を、その労力を作品にまで昇華させる執念と、感動の深さ。この感動の深さが絵に良さとしてグッと来るのかもしれぬ。知らんけど。

『インドシナ探検行』(1873)アンコールワット
トビウオ。魚が飛んでいたら興奮するっ

 やはり書けば書くほど本質から外れてくる気がする。

 個人的にはとても楽しい展示だったが、しかし、少なくとも、小学生が観てなにか面白がるとか、感動するとか、心に火がつくとかそういうもんではないよなぁと思った。息子にこの展示の良さをうまく説明できる自信がない。しなくてもいいし阪神の日本シリーズ優勝のほうがよっぽど重要事なんである。
 ロマンにも知識が要るのだ。

みなさんのおかげでまいばすのちくわや食パンに30%OFFのシールが付いているかいないかを気にせずに生きていくことができるかもしれません。よろしくお願いいたします。